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Windows 10 Mobileスマホがおサイフになる日は近い?(追記あり)鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

» 2016年06月22日 06時00分 公開
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Microsoft Walletの対応機種は限られる?

 前回のレポートでも説明したが、MicrosoftはWindows 10 Mobileで3つのカード情報保存方式(UICC/SIM、eSE、HCE)を全てサポートする計画だという。実際、国や携帯キャリアによっては特定の方式を指定してサービスの実装を要求するケースがあるため、これに準じるためだと思われる。

 ただ、今回のMicrosoft WalletはMicrosoft自身が提供するサービスであり、その実装にあたっては予想通りHCE(Host Card Emulation)方式を採用する可能性が高そうだ。

 HCEはカード情報をソフトウェア的に保存する方式で、スマホに専用ハードウェアやSIMカードへのひも付けを要求しない。Androidではバージョン4.4(KitKat)以降にサポートされ、Android PayもこのHCE方式を採用している。

 ただし、ソフトウェア的にカード情報を保管するという性質上、専用のハードウェアを用いるUICC/SIMやeSEに比べてセキュリティ上の問題が存在すると指摘されており(Apple PayはeSE方式を採用)、その実装と運用に工夫が凝らされている。

 具体的には、カード情報の本体はクラウド側にあり、1回から数回程度の決済のみが可能な「トークン」と呼ばれる仮のカード情報がHCEを通じてスマホ本体に保管され、適時アップデートが行われる。このカード情報は限られた回数のみ利用可能なので、安全性が高いというわけだ。この仕組みを「トークナイゼーション(Tokenization)」と呼んでいる。

 このHCEとトークナイゼーションを組み合わせた仕組みは、前述のAndroid Payのように実装が少しずつ進んでおり、タップ&ペイの世界で比較的メジャーな存在になる見込みだ。また、決済以外でも自動車やホテルの部屋の鍵、身分証などの保管でも利用が検討されているなど、今後数年での盛り上がりが楽しみな仕組みでもある。

 最初の実装はBlackBerryからスタートしたが、Androidを経て、現在ではWindows 10 Mobileの標準機能となっており、端末がNFCにさえ対応していれば、この仕組みが可能になると考えられる。

 ただ、Windows Centralによれば、現時点でこのMicrosoft Walletが利用可能な機種は限られる可能性があるという。MasterCardが公開している「MasterCard Contactless(PayPass)」に対応したNFC Mobile Devicesのリストには、Lumia 950/950XL/650/640XLなど、一部機種のみが対応デバイスとして紹介されているにとどまっている。

HCE対応のLumia HCEサポートが表明されているLumiaシリーズのスマホ(2015年11月現在)。ハードウェアの実装に依存する部分もあるようだ

 実際、Windows 10 Mobile Insider Previewの「Build 14361」と「Lumia 1520」の組み合わせでは、NFCによるタップ&ペイは動作せず、ロイヤリティーカードの利用のみにとどまっているという。その理由として同誌が考察するのは、NFCチップ用ファームウェアのバージョンに動作が依存しているためで、リストに掲載されながら対象外とされたLumia 1520のようなデバイスはファームウェアのバージョンが古いと指摘している。

日本でも使えるようになる?

 一連の話題で興味深いポイントは幾つかある。まずLumiaの対応機種以外のサードパーティー製デバイスのサポートはどうなるのかという点、そして実際にローンチ対象になる地域やタイミングという点だ。

 サードパーティー製デバイスの認証がどうなるのかは、今後調べていきたい。実際のMicrosoft Walletサービスの開始について、Microsoft自身は何もコメントしておらず、具体的な時期も不明だ。Anniversary Updateが提供される「今夏」という線も考えられるが、サービスの発表は分離してくる可能性がある。

 ローンチ対象となる国は米国が有力だが、それほど遅くないタイミングで英国やカナダ、オーストラリア、欧州やアジア諸国でサービスインするとみられる。

 肝心の日本に関しては、そもそもNFC決済可能なインフラがほとんど整備されていないという問題があるが、今秋を目標にAppleがApple Payの国内ローンチを目指しているというウワサもある。クレジットカードを発行するイシュア(カード会社)や銀行の準備が整えば、同じインフラを利用するMicrosoft Walletの国内提供もそれほど難しくない。

マクドナルド横浜西口店IKEA Tokyo-Bay 日本国内でもNFC決済に対応した店が少なからず存在する。左はマクドナルド横浜西口店、右はIKEA Tokyo-Bay(旧IKEA船橋)店の決済端末。どちらもApple Payが使える

 というわけで、「モバイルSuica」が使えるかどうかはともかく、Windows 10 Mobileスマホで「おサイフケータイ」的な決済機能が利用できる日は、そう遠くないのかもしれない。

NFC決済対応のInsider Preview「Build 14371」公開(追記)

 本記事を掲載した6月22日(米国時間で21日)、米MicrosoftはWindows 10 MobileのInsider Preview最新版「Build 14371」をFast Ring設定ユーザーに公開した。こちらに本記事で紹介したMicrosoft WalletのNFCによるタッチ&ペイの決済機能が追加されている。Walletアプリやサービスは、記事中で触れた内容に沿ったものだ。

 一般ユーザーへの提供時期は「later this summer(今夏後半)」となっており、Anniversary UpdateがPCユーザー向けに提供されたタイミングより後になる見込みだ。具体的には8月中旬から9月頃と考えられる。これはWindows 10 Mobile搭載デバイスへのOTA配信のタイミングが、機種や携帯キャリアによってまちまちということに由来する。

※2016年6月22日18時追記


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