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「世界に通用するTOUGH(タフ)なヤツ」――パナソニックの神戸工場で“頑丈PC”の生産現場を見た大人の工場見学(1/3 ページ)

» 2016年06月29日 11時00分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 高性能なデバイスの普及やサービスの発展により、IT企業に限らずビジネスの現場や公共インフラなどでICTの利活用が進んでいる。特に過酷な環境における業務ではデバイスの信頼性が重視されることもあり、薄さやデザインを重視したような一般消費者向けの製品をそのまま転用することは難しい。環境に適したハードウェア性能を持つ堅牢なビジネスPCが必要だ。

パナソニックの「TOUGHPAD/TOUGHBOOK」シリーズと「Let'snote」シリーズ

 そのような背景を受けて、PCメーカー各社はいわゆる“頑丈PC”という堅牢性に重きを置いたモデルを用意しているが、全世界でも60%以上のシェアを誇るのがパナソニックの「TOUGHPAD/TOUGHBOOK」(タフパッド/タフブック)シリーズだ。堅牢技術や移動体通信技術など、同社が強みを持つコア技術を組み合わせることで、頑丈ノートPCでは14年連続、頑丈タブレットでは3年連続で全世界シェアナンバー1の座を獲得し続けている。

 筆者も米国に赴いた際に、駐車されていたパトカーの中に車載されているTOUGHBOOKを見つけ、まじまじと観察していたら怒られた経験がある――それはさておき、同製品は民間企業だけでなく官庁においても採用実績が多い。そんな世界が認める頑丈PCはどんな環境で生み出されるのか。TOUGH(タフ)を極めるパナソニックの神戸工場を探検してみよう。

1台からのカスタマイズに対応できるライン作り

清水 実氏 パナソニック株式会社AVCネットワーク社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター所長の清水 実氏

 兵庫県神戸市にあるパナソニックの神戸工場は、1990年6月にワープロ工場として生まれた。翌年の1991年8月にはPCの生産も開始して今に至る。同社のビジネスモバイル事業を支えるものづくりの考え方は、「柔軟・迅速」「高品質」「カスタマイズ・サービス」「体験型実証ショールーム」の4つであると、パナソニック株式会社AVCネットワーク社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター所長の清水 実氏は語る。

 生産を行う工場のすぐ横には、1週間から2週間で必要となる材料を保管しておく工場直結型倉庫が備わっている。顧客の要望変化に対して柔軟に対応するため生産計画は毎日変動し、必要な部品も変わる。スピーディーな生産には輸送によるラグを少しでも減らす必要があるのだ。生産現場でも、ラインを増やしたり減らしたりしやすい「セル生産方式」を採用し、1台からのカスタマイズに対応できる「多品種変量生産」に耐えられる仕組みが整っている。

FZ-G1 「FZ-G1」には、顧客の要望にあわせてオプション品をカスタマイズできるキットがある
製造段階からオプション品を組み込んでもいいのだが、少数ロットの場合は、完成した製品を一度分解して手作業で組み込む。そのほうが効率はいいのだという
各国の言語に対応するキーボードカスタマイズ

 生産効率を追い求めるだけではない。“ジャパンクオリティ”を自負する同工場では、生産の履歴を部品一つ一つから追跡できる流通システム「KISSシステム」(Kobe Intranet Solution of Super-production)を採用する。どの顧客にどの製品が渡っているかを部品単位でサーバに記録。部品一つに不良などが見つかれば、先行して顧客に問題が発生していないかアプローチできるという。

 さらに、世界中にある修理拠点から神戸に集められた修理データから、これまで25年間培ってきた独自のアルゴリズムを使ったデータ分析ツールによって、製造段階における品質問題を予兆検出、不良率が上がる前に原因を探れるという。「何より重要なのは、顧客の生産性を落とさない品質を実現すること」(清水氏)

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