Polarisでは、AMD独自のVR技術「Liquid VR」もアップデートされた。まず、VRヘッドマウントディスプレイの接眼レンズの歪みを逆補正するために、描画エリアをいくつかのビューポートに分割する、NVIDIAのLens Matched Shading と同様の機能をAMDもAPIレベルで実装した。
ただし、AMDの実装方法は、NVIDIAがジオメトリエンジンにSimultaneous Multi Projection機能をハードウェア実装したのとは異なり、ソフトウェア実装となる。これは、GCNアーキテクチャが非同期コンピューティング処理に強く、ソフトウェアレベルでも十分パフォーマンスを稼げると判断したためと思われる。また、AMDは次世代VR環境では、アイトラッキングによる視線の行方に応じて、メインの高解像度レンダリングの領域を動的にシフトする機能にも対応するという。
サウンド機能についても、ゲーム空間の壁や天井、障害物といったオブジェクトの特性にあわせ、音の反響や吸収を物理演算して、よりリアルなサウンド表現を可能にするTrueAudio Nextをサポートする。
AMDはかつて、Hawaii世代(Radeon R9 290など)で、オーディオ用のDSPをGPUに統合し、TrueAudio機能を実装したが、Polaris世代では、これらのオーディオ処理も、CUを利用して実現するように変更している。このため、VRやオーディオ処理のように、汎用コンピューティング処理に一定のGPUパワーを必要とするアプリケーションやゲームでは、一定量のCUを汎用コンピューティング処理にあらかじめ割り当てるCompute Unit Reservation機能もサポートする。
その一方で、GPUのリソースを、より効率的に使うべく、グラフィックス処理と汎用コンピューティング処理のバランスを動的に切り替え、Oculus Riftにおける非同期タイムワープ(Asynchronous Time Warp)のような、優先度が高い処理を最優先で処理できるようにCUを割り当てるQuick ResponseQueueもサポートするなど、APIレベルでは大幅な強化が施されている。
AMDが公開したパフォーマンスデータでは、DirectX 12ゲームでは、1440pの解像度であればGeForce GTX 970を上回るパフォーマンスを見せることになっている。しかし、AMD、NVIDIAとも新アーキテクチャGPUを投入したことにより、従来製品の値崩れが始まっている状況では、Radeon RX 480の成功は、日本市場独特の初値や、他の地域より高めの販売価格が、どれだけ早く落ち着くかにかかっていると言えるかもしれない。
また、AMDは、Radeon RX 480と同時に、その下位モデルとなるRadeon RX 470や同RX 460を発表しながら、その市場投入時期や価格、スペックの詳細は明らかにしていないことも気になるところだ。
AMD関係者からの情報を追加したRadeon RX 400シリーズの基本仕様 | |||
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型番 | Radeon RX 480 | Radeon RX 470 | Radeon RX 460 |
開発コードネーム | Polaris 10 | Polaris 11 | |
GPUアーキテクチャ | 第4世代GCN | ||
製造プロセス | GLOBAL FOUNDRIES 14nm FinFET | ||
ダイサイズ | 234平方mm | 124平方mm | |
Compute Unite(CU)数 | 36 | 32 | 14 |
ストリーミングプロセッサ数 | 2304 | 2048 | 896 |
浮動小数点演算性能 | 5TFLOPS以上 | 4TFLOPS以上 | 2TFLOPS以上 |
メモリサイズ | 8GB/4GB | 4GB | 2GB |
メモリインターフェース | 256bit GDDR5 | 128bit GDDR5 | |
最大消費電力 | 150W | 110W | 75W |
補助電源コネクタ | 6ピン×1 | ー | |
HDMI | 2.0b | ||
Display Port | 1.3 HBR3 / 1.4 HDR対応 | ||
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