一見すると奇抜なOMEN Xの形状は、メンテナンス性を高めるためゆえに考えられたものでもある。
先述の通り、本体を開けてメンテナンスするための必要な工具はボディーに格納されている。ただし、格納場所は「いちげんさん」には見つけられないかもしれない。実は、本体正面のOMENロゴのパネルの内側にしまってあるのだ。このパネルはマグネットでくっついているだけなのですぐに取り外せるが、ロゴ点灯用のLEDへの給電ケーブルが取り付けられているので、力任せにならないように気を付けよう。
ボディー内部にアクセスする場合は、ツールボックスにあるL字状のプラスドライバーを使う。本体背面にある「SLIDE PANEL ACCESS」と書かれた部分のねじをドライバーで取り外し、その上にある「EJECT」ボタンを押すと、左側面のサイドパネルの上半分が外れてマザーボードやグラフィックボードにアクセスできる。文章にするとやや長くなるが、慣れれば簡単に内部構造にアクセスできる、ということだ。
カバーを外すと、MicroATX規格マザーがピッタリと収まっている。マザーボードのサイズに合わせてケースが設計されていることがよく分かる光景だ。この状態で実際にマザーボード回りの作業をしてみると、メンテナンスのしやすさも強く実感できる。
一般的なタワーケースでは、サイドパネルを開けてからそのままの状態か寝かせて作業を行う。しかし、そのままの状態(立てた状態)ではケースの内側が暗くて見づらく、寝かせた状態ではのぞき込むようにして作業する必要があるため、どちらにしてもパーツの脱着にやりづらさを伴う。
それに対して、OMEN Xではマザーボードが斜め45度に配置されているため、中に光が入りやすく、マザーボードをのぞき込む必要がないため、マザーボード回りの作業を非常にやりやすいのだ。
しかし、メーカーの資料によると、このボディー形状を取った最大の理由は“冷却性”の向上にあるという。ボディーをよく見てみると、拡張ポートのある面以外のカバーは全てメッシュ状になっており、エアフローを強く意識しているのだ。
その上で、CPUの冷却機構は水冷式としている。水冷ユニットのラジエーター冷却ファンは、マザーボード区画全体のファンも兼ねており、ケースの頂点に近い場所に設置されている。ファンの口径は一般的な12cm角タイプだが、厚みが4cmほどある。その厚みによって、羽根の面積をより大きくして風量を増やすことで冷却性能を向上している。このファンとは別に、本体の前側にも12cm角の吸気ファンが用意されている。こちらの厚みは一般的な2.5cmサイズで、ビデオボードに直接外気を当てるようなエアフローとなっている。
このケースは、マザーボード部分だけでなく電源ユニットやストレージの収納部を物理的に分割しており、エアフロー的にも3つの部分が完全に分離されている。OMEN Xの電源ユニットは1300Wと大容量であるために大きな熱源となりうる。熱源ごとにフローを区切ることで、発熱が他の領域の動作に影響しないように配慮しているのだ。
一昔前よりも省電力が進んだとはいえ、ゲーミングPCはハイエンドパーツを中心に構成される傾向にあるため、発熱量も多くなりがちだ。しかも、高負荷状態が長時間維持続くことも多い。こうした冷却面での大きな配慮は、動作音の軽減はもとよりパーツ寿命の延長などにもつながるのだ。
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