オーダーメイド機能の「もの書き」モードではいくつもの小説執筆用機能が有効になる。実際に使ってみると、一太郎2017のこだわりは単に「便利」というだけではなく、執筆に没頭できる環境を提供する、という点に向けられていることが実感できるはずだ。
まず、執筆時に役立つのが小説用ファンクションキーセットだ。特にF6のふりがな、F7〜F9の小説用傍点、小説用ダッシュ、小説用3点リーダは重宝する人も多いだろう。
ビジネス用途ではほとんど利用されることのないふりがなだが、小説、特にライトノベルの場合だとふりがなは単なる「難読漢字の読み方」を示す以上の意味を持つことが多い。一方通行と書いてアクセラレータ、禁呪詠唱と書いてワールドブレイクといった、本来とは異なる読み方を示すもの、「だらだらとシナリオで口説いて」という文全体に「一巻分まるごと使って」と振って楽屋落ち的なメタな内容を入れたり、本心を描いた本文に建前のふりがなを振って心の声と口に出した言葉を表すなど、1つの表現技法としてふりがなを活用している作品も多い。
小説用ファンクションキーセットだとふりがなを振りたい単語の先頭にカーソルを合わせてF6を押すだけでふりがな設定ダイアログが表示される。促音・拗音を含んだふりがなを表示・印刷上だけ大文字で表示することも可能だ。
また、F7による小説用傍点の入力は地味ながらも特筆すべき手軽さだ。地の文に埋もれやすいひらがな名詞などを目立たせるためなどに使われることが多かった傍点だが、ライトノベルなどでは重要な会話のポイントや、回収を含めた伏線の強調表現として使われることが増えてきている。括弧で閉じられた会話文全体に傍点がつくことも珍しくない。
それほど重要性が増している傍点だが、通常は範囲を指定し、フォント・飾りを選択して設定しなくてはならない。このときには執筆ではなく編集になってしまうため、意識が作品世界から引き戻されてしまう。しかし、小説用ファンクションキーセットだとカーソルを合わせてF7を押しっぱなしにするだけでよく、執筆の一環として設定を行うことができる。
そのほか、小説用ダッシュ、小説用3点リーダは一回のキー押下で二個分が密着した状態で入力される。ダッシュや3点リーダが途切れずにワンタッチで入力できるので、最終的な仕上げが済んだ状態で入力を進めていくことができる。
校正に関しても小説執筆を意識した機能が盛り込まれている。小説の場合は一般的な書式に加えて、以下のようなルールがある。
小説用の校正ルールではこれらの表記ルールをサポートしているほか、会話文の中のくだけた表現を対象から外す、というような細かい配慮もある。
そもそも一太郎2017の文書校正機能はプロ仕様の文章校正支援ツール「Just Right!!6 Pro」の校正エンジンを使用している。「宅急便」や「ホッチキス」、「セロテープ」のように一般名称と間違えやすい商標、「大蔵省」や「浦和市」のように古くなってしまった名称などの単語レベルの指摘のほか、「座ってました」「食べれる」のような、い抜き・ら抜き表現、同一文書内での表記揺れなどの指摘が強化されている。特にプロの校正が入らない投稿や同人出版では、入稿前に確認することで品質向上に大きく役立つはずだ。
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