3万円台で6コア/12スレッドCPUが買える時代 Ryzen 5の実力は?(2/4 ページ)

» 2017年05月25日 17時30分 公開
[石川ひさよしITmedia]

最適化が進んでRyzenがCoreに肉薄

 それではベンチマークに進もう。今回は前回のRyzen 7の検証に、Ryzen 5の1600Xと1500Xを追加する形で行いたい。つまり8C/16Tに6C/12Tと4C/8Tが追加される形だ。動作クロックなどには多少の違いがあるが、そこさえ考慮すればおよそコア数の違いでパフォーマンスと製品選びの目安が付くだろう。

 ただし、Ryzen環境は現在も日々最適化が進んでおり、AMDからドライバや電力設定、マザーボードメーカーからもBIOSといった具合でアップデートがある。またこれらとは関係なくMicrosoftのWindows 10もCreators Updateの提供が始まった。パフォーマンスは目まぐるしく変わる(と同時に安定性が向上するものもあれば、問題が出たものもある)状況であるので、前回の計測時とは必ずしも同等に比較できないところもあるので多少考慮しつつ見ていただきたい。

 検証環境は上記の表のとおりで、細かな製品は異なるものの、大枠ではRyzen 7時のものと合わせている。マザーボードに関しては、今回、評価キットに含まれるASRockの「Fatal1ty AB350 Gaming K4」を使用した。今回の評価キットは、そもそもCore i5に対してトータルコストでバランスを取りつつどれだけのパフォーマンスなのかを比較できるというものらしい。マザーボードコストをB350チップセット搭載モデルで抑えるという思惑のようだ。とはいえ性能にはそれほど影響が大きくないところであるのでよしとしよう。

 また、メモリはGeILのGEX416GB3200C16DC(PC4-25600 DDR4-3200 8GB×2)が付属した。当初はこれをDDR4-2933で動作させて検証するといった指定だったが、ここでは前回の検証環境に合わせてDDR4-2666設定で動かしている。まあ、RyzenではDDR4-3200まで可能になったようなので、OCメモリを狙ってみるのもアリだ。

 グラフィックスカードは、GPUで見ればRadeon RX 480で合わせたが、前回はリファレンス仕様、今回はSapphireの「NITRO+ Radeon RX 480 8 GB」(11260-07)をベースに、クロックを定格まで落としたものを用いた。SSDや電源などは同じだ。それでは結果を見ていこう。

 なお、いくつかベンチマークで計測できなかったところがあるので、そこはスコアなしとしている。Rise Of The Tomb Raiderの3840×2160ピクセルがRyzen 5 1600Xのみエラーになったり、PCMark 8がRyzen 5 1500Xのみエラーとなったり、これがハードウェアによるものか、アップデートに際して問題が生じているのか切り分けが難しく、解決できなかった。ただ、3DMarkが(もともとエラーが生じやすいのだが……)不安定だったり、別件で検証したCore i7-7700K環境とCreators Update環境も同様に不安定になっていたりと、どちらかと言えばハードウェアではなく環境側の問題のように思える。これについては、アップデートを待つほかないだろう。

CINEBENCH R15

CINEBENCH R15

 さて、まずはCINEBENCH R15。マルチスレッド側のCPUテストでのRyzen 5 1600Xは、同じTDP 65WのRyzen 7 1700に対しても一段低い値となるが、一方で動作クロックは高めであるため、コア2つぶんから想像するほどではない。もちろん、高クロックで8コアのRyzen 7 1800Xと比べれば大きく下がるが、意外にもパフォーマンスはイケそうだ。当然、4C/8TのCore i7-7700Kと比べても高い。

 一方で4C/8TのRyzen 5 1500Xについては、さらに一段スコアを下げるため、多少見劣りする。ただし、Ryzen 7 1800Xの半分と考えれば妥当だろうか。あるいは少し低い印象がある。Core i7-7700Kよりも低いスコアであり、やはりターゲットとなるのはCore i5となるだろう。

 CPU(Single Core)側は、およそクロック相応だろう。Ryzen 5 1500Xが1600Xを上回っているが、これくらいは誤差の範囲。Intel Coreマイクロアーキテクチャに対して(クロック分を考えても)若干低いあたりといったところだ。

PCMark 8

PCMark 8

 PCMark 8では、やはりコア/スレッド数よりもクロック、あるいはIPCなのだろうか。まずRyzen 5 1600Xのスコアを見ると、Ryzen 7 1800Xのものに迫るものが見られる。そして、低クロックのRyzen 7 1700よりも高いスコアを示している。前回指摘したとおり、現状のアプリケーションでは、特定用途でなければ4C/8Tを超えるスレッドを使うことがない。今後の変化を待つしかないだろう。Ryzen 5 1500Xについては、HomeテストがAmazoniaで止まる症状が出て計測できなかった。ただしほかのテスト中のAmazoniaはパスするあたり、原因が分からない。

X265 HD Benchmark

X265 HD Benchmark

 CPUのスレッド数をフル活用できるアプリケーションであるトランスコードテスト「X265 HD Benchmark」を見てみよう。これもスレッド数から予想できるところで、Ryzen 5 1600XはCore i7-7700Kを超える高いパフォーマンスを見せている。ライバルがCore i5の上位モデルとなるため、こうした用途においてはかなり心強いだろう。ただし、CINEBENCH R15でも若干気になったところだが、Ryzen 5 1500Xはスレッド数とクロックから考えても、8C/16T、6C/12TのRyzenよりも若干低いスコアとなった印象がある。もしかしたら、Disable化されたスペックの部分で、アンバランスなところが生じてしまっているのかもしれない。

3DMark

3DMark

 3DMarkに関しては、Ryzen 5が特にGraphicsテストにおいてRyzen 7 1800Xの値を上回っている。これは前回計測して以降、最適化が進んだ結果だろうか。それは別として、CPUが影響するPhysics/CPUテストについては、Ryzen 5 1600Xがなかなかよいスコアである一方、Ryzen 5 1500Xはやはり伸び悩んでいる。ここまで見てきた流れと同じと言えば同じだ。

 ただし、3DMarkスコアで見れば今回比較した5つの環境とも同じくらいで、互角と言える。ゲーミングPCを考えるとき、おおよそCore i5程度のパフォーマンスがあれば後はグラフィックスカードの性能に左右されると言われてきたが、今回はすべてCore i5よりもコア/スレッド数が多いわけで、およそグラフィックスカードの性能が引き出せていると言えるのではないだろうか。そうした視点で見ると、Ryzen 5をベースとしたコストバランスのよいゲーミングPCというプランが構想できる。

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