iPad Pro 10.5とSurface Proを比較 人気プロ絵師によるお絵描きレビュー(3/5 ページ)

» 2017年07月07日 13時20分 公開
[refeiaITmedia]

視差と遅延を比較する

 次に視差です。両機種ともLCD面からガラス表面までが薄く、基本的に視差は小さいはずですが、一応見ておきましょう。

 Surface Proは、新ペンでは視差は非常に小さく、旧ペンも基本的に小さいですが、ペンの傾きに応じて、描画位置がペン先からズレてしまうようです。なので、自然に持った状態も違和感がありますし、強く傾けるような描き方をすると大きくずれてしまいます。iPad Proは、この安心感……。もうApple Pencilは性能がちゃんとしすぎていていろいろどうでもよくなってきます(褒めています)。

視差のテスト。新ペンとApple Pencilは優秀、旧ペンではペン先よりやや右にカーソルが来ているのが確認できる

 遅延も比べてみましょう。Surface Proは遅延の低下が新ペンのウリの1つですし、iPad Proはもともと低遅延でしたが、従来の2倍の120Hzで画面を書き換える新機能「Pro Motion」で、より改善しているはずです。

 測り方は、基準になる横線を1本引いた部分に縦線を何本か引いて、横線をペン先が通り過ぎてから縦線が通り過ぎるまでどれだけかかるかというのを、120fpsの高速度撮影をした動画のコマ数を数えて測っています。

遅延テストの様子。これは縦線が横線を通り過ぎる瞬間のフレームを切り出した画像

 iPad Proでは純正のメモアプリ、Surface ProではWindowsペイントを使用しました。その結果がこれです。

遅延テスト iPad Pro 10.5 iPad Pro 12.9(先代) Surface Pro 新ペン Surface Pro 旧ペン MobileStudio Pro(参考)
120fps におけるフレーム数 3 7 6.5 9 8

 実際には線によって時間にばらつきがありますし、何本か引いた値からざっくりと平均っぽい数字を見つけているので精度は低いです。それに同じソフトで比べられないので、1か2ぐらいの差で勝った負けたと感じてほしくはないのですが、おおまかに見ても以下のことが分かると思います。

  • iPad Pro 10.5は死ぬほど速い
  • 新Surfaceペンは確かに速くなった

 ただ、一番遅かった旧ペンでもワコムのプロ用機材と比べて遜色なく、そもそも気にするような遅さではなかったような気がします。この遅延はどちらかというとソフトや描画条件依存な面が多分にあって、トップメーカーが提供する制作ソフトであっても、一番軽そうなブラシでも上記の2倍遅延したり、条件によってはそれ以上に気になるレベルの遅延が起こります。大きく重いブラシを使えばそのまた10倍にもなるでしょう。

 確かに線がペン先にぴったりくっついてくるのは気持ちがよいですが、描き味に影響するような大きめの遅延の領域では、ペン回りのハードウェア性能よりはむしろ処理能力とソフトの出来が、気にするべきポイントだと思います。

装置を自作して筆圧を比べる

 さて、次に筆圧です。以前のSurface Proを触ったことがありますが、ON荷重がやや高めで、ごく軽い筆圧では線が表れない感触があったのと、筆圧を上げていったときの頭打ち感がApple Pencilやワコム製品より強いように感じられました。なので、新ペンで改善しているかを確かめてみました。測ったのはこれらの装置です。方法の詳細は省きますが、見ての通り精度はお察しなので参考程度に。

左がごく軽い筆圧を1g単位で加減できる装置。実際には台座部分を浮かせて固定した状態で測りました。右がバネの伸びから現在かかっている強い筆圧を計算できる装置。500円貯金しとくもんですね

筆圧テスト iPad Pro 10.5 Surface Pro 新ペン Surface Pro 旧ペン MobileStudio Pro(参考)
ON荷重 1g未満 約9g 約16g 約4g

 MobileStudio Proの4gは、ドライバの設定で一番軽い筆圧から反応するよう設定した状態で、デフォルト設定でのON荷重は約8gでした。 軽い筆圧に対しての反応の直線性は測れませんが、 Surface Proの新ペンでは、少なくともON荷重はプロ機の推奨設定と比べて大差ないレベルになったと言えます。

 そして、iPad Proは触れたら描ける状態で、ペン先が画面に触れたあとは微小に浮いている状態ですら線が表れるほどでした。描いていて違和感があるようにも感じませんでしたが、これがよいのかどうかは謎ですね。

 検知可能最大筆圧については、装置のお察しレベルが高すぎるので数値は省略します。恐らくiPad ProとMobileStudio Proが同じぐらい、Surfaceペンは新旧共にその6割ぐらいだったはずです。確かに意図して筆圧を高めていったときには頭打ち感はありますが、自分の実際の作画ではほぼ使わない筆圧なので、問題を感じませんでした。筆圧が特に強い人は試用するときに注意してみてください。

 総合的な印象としてはiPad ProとApple Pencilにはほぼ隙が見られず、さすがとしか言いようがないです。また、以前は真面目に絵を描くのがややつらい印象もあったSurfaceペンは、今回の新型で大きく飛躍して、ベストとは言わずとも、性能面ではほとんど問題ないと言えるレベルになっています。

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