Microsoftとデータセンターの関係を語るうえでもう1つ見逃せないのが「ARMサーバ」の動きだ。
直近で「Windows on ARM」の話題と言えば、2017年末までにQualcommのSnapdragon 835プロセッサ搭載でフル機能のWindows 10が動作するノートPC(タブレット)が市場投入されるということ、そしてARM市場の拡大に警戒感を抱いているIntelの動向に注目が集まっているが、一方でデータセンターに関しては少し違う次元で話が進んでいる。
以前のレポートでも説明したように、MicrosoftはQualcommとの共同開発で進めているARMプロセッサ向けのWindows Server開発プロジェクトを、あくまで社内向けとして用途限定で進めていくとしている。
理由は幾つか考えられるが、長年のパートナーであるIntelへの配慮だけでなく、現状多くのアプリケーションがx86(x64)アーキテクチャ向けに提供されてきたこと、そしてARMの性能や顧客ニーズが未知数といったことが挙げられるだろう。
一方で、ここまで説明してきたように、一部のコンピュータリソースを集中的に利用するタスクについてはCPUを介在せずにFPGAのような部分の処理だけでほとんど完結してしまうケースも増えてきており、コンピュータの利用スタイルが変化している。恐らく、Windows Server on ARMにおける最初のユースケースはこういったものが中心で、その成果は2018年以降、徐々に公表されるはずだ。
MicrosoftではProject Olympusで利用されるARMサーバのコア部分にQualcommの「Centriq 2400」を用いることを公表しているが、このCentriq 2400の概要がProject BrainWaveと同じHot Chips 17で公開されている。
Qualcommによれば、Centriq 2400は10nm製造プロセスを使った初のサーバ向けSoCであり、そのコアには同社独自開発の第5世代カスタムコアにあたる「Falkor」を採用しているという。
Falkorの語源は不明だが、スペリング的には「ネバーエンディングストーリー」に登場した「幸運のドラゴン」こと「ファルコン(Falkor、ドイツ語版の原作ではFuchur)」と同じため、これをモチーフにしていると考えられる。
ARMv8命令互換でAArch64のアドレス空間に対応し、EL3(TrustZone)やEL2(ハイパーバイザー)をサポートする。その最大の特徴は、「Falkor Duplex」という2つのFalkorコアが2次キャッシュを挟んで1セットでまとめられた構造で、24個のDeplexをリングバスに配置することにより、プロセッサあたり最大48コアを備えることになる。DDR4のメモリインタフェースに加え、PCIe Gen3を32レーン搭載し、パッケージサイズは55mm四方だ。
なお、Centriq 2400の開発自体はQualcomm Datacenter Technologiesという別組織が主導しているため、Qualcomm本体のSnapdragon開発部隊の動きとは直接リンクしていないとみられる。そのため、Snapdragonの最新SoCで提供されているプロセッサコアとは大きく異なるものと考えていいだろう。
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