生産性ツール「Office 365」の最新版では「MyAnalytics」というツールが用意されており(Office 365 Enterprise E5には標準添付)、従業員の活動状況を把握できることに加えて、問題点や改善点の提案といったインテリジェントな機能まで備えている。
例えば、「定期的な会議中にPCで他の作業をしていることが多いので、会議の目的を再確認する機会かもしれない」「特定のメンバーとの会議が週に何回も入っているので、整理した方がいいかもしれない」「特定のメンバーはメールの閲覧率が低く、返答時間も遅いので、別の連絡手段などを検討する必要があるかもしれない」といった課題と解決への提案が、MyAnalyticsではダッシュボードとともに表示されるのだ。
「余計なお世話だ」という意見もあるかもしれないが、これまで感覚的にしか把握していなかったことが、あらためて統計データとして表示されると、改善のきっかけになりやすい。これは上司が部下を監視するのが目的ではなく、個人に自分の働き方への気付きを与えて、改善を促すことが狙いだ。
同社は4カ月間(2016年12月〜2017年4月)、人事、ファイナンス、マーケティング、営業の4部門に所属する41人に対して、MyAnalyticsを導入してその効果を検証したところ、無駄な会議時間が27%減り、会議やメールなどの雑務がなく集中して作業できる時間が50%増え、コミュニケーション手段の使い分けで意思疎通の円滑化が実現できたという。
このことから、4部門合計で1年間に3579時間の無駄な時間が削減でき、さらに従業員2000人相当に換算すると年間7億円ものコスト削減が見込めるほど、MyAnalyticsの効果は高いと同社はアピールしている。
今後、同社はさらなる働き方改革の推進に向けて「AI」の活用を進めようとしている。AIと言うと遠い存在に思えるかもしれないが、前述のMyAnalyticsによるアドバイスもOfficeツールにAIをプラスした一例だ。
同社はWindows 10標準のアシスタント機能「Cortana」を業務向けに拡張したような「デジタル秘書」を導入している。これの活用として最初に行ったのが「会議調整の効率アップ」だ。
会議室の予約については、従来のグループウェアにも「招集するメンバーの空き時間を自動的に調べて最適な日時を導き出す」という仕組みが備えられていた。メンバーのスケジュールで空き時間を横断検索して候補を絞り出すというアルゴリズムを使ったもので、スケジュールの集中管理さえできていれば、それほど難しい仕組みではない。
今回のデジタル秘書は、チャットベースで会議室の場所も含めて最適な提案をしてくる点が新しい。「EDI(Enterprise Deep Intelligence)」という名称でチャットBOTとして存在しており、暫定的な運用なので英語のインタフェースだが、Skypeの対話インタフェースを通じてメンバーの招集と会議室の予約が可能だ。
EDIとは異なるが、Office 365のチャットベースツールである「Teams」のインタフェースにも会議招集が可能な「秘書BOT」を組み込んでいる。
対話インタフェースによって、メンバーの招集や時間調整、調整後のスケジュール登録、メンバーへの告知までがまとめて行えるもので、従来は約10分必要だった会議調整が約2分で済むようになった。
現状は従来のインタフェースをチャットBOT用に置き換えただけだが、今後はインテリジェントに会議の提案や招集メンバーの選定を行うなど、より「秘書」としての機能に磨きを掛けていくことが予想される。
これからの働き方改革にはAI活用が重要だというのを、同社は数年先に自社の結果として示してくれるかもしれない。
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