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2017年末、PC業界に起こりつつある変化とは?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

» 2017年12月31日 06時00分 公開
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2017年の米ホリデーシーズン商戦でもPCは売れている?

 先ほど米国ではノートPCの落ち込みが顕著というデータを紹介したが、その後の状況は変わりつつあるようだ。2017年の米ホリデーシーズン商戦において、ノートPCが人気というデータも出て来ている。

 市場調査会社の米NPD Groupが出した11月第4木曜日の感謝祭(Thanksgiving)の週を集計した報告では、米国のホリデーシーズン商戦での人気カテゴリートップ5の1つに「PC」が含まれており、それが主にノートPC製品の販売によるものだったという。

 ホリデーシーズン商戦の特徴として、最初の時期で電気製品など比較的高額な商品が出払い、残りの期間で比較的安価なグッズやセール品の売れ残りがさばけるという傾向があるが、少なくとも2017年のホリデーシーズン商戦における目玉商品の1つにPCが含まれているということだ。

 これを裏付けるかのように、ホリデーシーズン商戦における業績好調をPCメーカーが報告している。台湾Digitimesによれば、台湾Acerはホリデーシーズン商戦期の前半戦にあたる11月後半、米国においてノートPCの販売が前年同期比で78%増加した。

 特に「ゲーム向けノートPC」と「Chromebook」が好調で、ぞれぞれ前年同期比で300%と250%の伸びを見せたという。興味深いのは、比較的高価なゲーム向けノートPCと教育用で手ごろに入手しやすいノートPCとして人気のChromebookという対照的な2つの製品が販売好調のドライバーになっている点だ。

 PCの購入傾向が「汎用(はんよう)的な何でもできるマシン」から「目的指向」がより強くなっているという印象も受ける。

伝統的なPC時代の終わりとその次

 Gartnerの調査報告にもあるように、2018年のPC業界は微増、2019年は停滞というサイクルを経て、2020年に市場は再び停滞あるいは縮小に向かうと筆者は考えている。理由は先項でも触れたが、PCは既に万人向けのデバイスではなくなりつつあり、安価に広くばらまく時代は終わりを迎えたからだ。

 筆者は「スマートフォンがポストPC時代の覇者ではない」と考えており、さらに言えば近い将来にはPCやスマートフォン的なデバイスを人々が必ずしも持ち歩くことにはならないとも考えている。いずれも、それを必要とする人が所持し、デバイスの性格はより目的指向に向かっていくのではないかと予想している。

 こうしたトレンドを象徴するかのように、Intelが「Intel Inside」プログラムのマーケティングリベート予算を40〜60%の範囲で大幅に縮小することを米CRNが報じている。

 1991年からスタートした「Intel Inside」は、PCに貼ってあるシールやテレビCMでおなじみのロゴで、1990年代から2000年代にかけてPC市場の爆発的な成長を支えてきたことは間違いない。近年では特にPCの価格引き下げの原動力として機能しており、ライバル製品らの攻勢に対抗してきた。

 もしCRNの報道が事実ならば、直近の影響としてはPCの価格が全体に上昇し、長期的には製品カテゴリーの見直しを含む業界再編につながる可能性が高い。

 いずれにせよ、2020年ごろを境にPCを含むデバイス業界が大きく変化していくタイミングに差し掛かりつつあるのではないだろうか。

 現在のPCは万人に対して比較的平等なデバイスであり、利用者の意向によってどのようにも使えるのが大きな特徴だ。だが将来のPC業界は、汎用性を維持するよりは、目的ごとに明確に分化していく可能性が高い。

 2017年初の記事でも触れたが、従来型のPCはよりクリエイティブ志向となり、ユーザーの多くはPCではない何らかのデバイスや「入口」を通じてクラウドとやりとりをすることで、膨大なコンピュータリソースを活用するようになる。

 AppleがiOSとmacOSでアプリの共通化を進めているというニュースが話題になっているが、将来的に現在クリエイター以外でMacを利用する層の多くを「iPad」などに誘導するのが狙いだと筆者はみている。現在は教育用途が中心だが、Chromebookの人気もまたこのトレンドを追いかけるものかもしれない。

iPad PCとの境界が曖昧になっていく「iPad」(写真はiPad Pro)

 一方で従来型のPCは今後より高級志向となり、プロフェッショナルな作業や仕事にはなくてはならないデバイスとしての役割をより強く担うようになる。

 変化の1つは「Always Connected PC」の登場だ。エンタープライズ分野への普及は2019年以降が見込まれ、スロースタートではあるものの、PCの利用スタイルを大きく変化させるゲームチェンジャー的なものになる可能性が高い。

 Always Connected PCを推進するSnapdragon 835を搭載したWindows 10デバイスは、「常時接続」と「長時間バッテリー駆動」の2つを武器に、ビジネスツールとしての性格を強めていく新しいカテゴリーのPCだ。

Windows on Snapdragon HPのSnapdragon 835搭載マシン「HP Envy x2」は2018年の春以降に発売。LTE内蔵による常時接続、動画再生で10時間のバッテリー駆動が特徴だ

 従来までの「普及」を前提としたPCの販売スタイルとは異なり、より目的志向なユーザーに向けてそのメリットを訴求していくことになるだろう。市場の変化が今後2〜3年で実際に起きるのかどうか注視していきたい。

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