コラム
» 2017年12月31日 18時00分 公開

2017年のAppleと、これからのApple――林信行が2017年を総括 (2/3)

[林信行,ITmedia]

次の10年に向け地固めするIT大手企業

 せっかくの機会なので、Apple以外のIT企業の動向――IT業界全体に影響を与える基盤を作っているプラットフォーマー企業の動きを筆者なりの視点でまとめてみたい。

 まずはGoogle。Appleが選択と集中の会社だとすれば、Googleはとりあえず何でもやってうまくいきそうなものから事業化する会社だ。

 2年前に親会社、Alphabetができたおかげで、不老不死の研究(Calico)や自動運転事業(Waymo)、光ファイバー事業(Google Fiber)など、こうした一見奇抜に見える事業を生み出した研究母体であるGoogle XもGoogle本体とは切り離された。それでも人材のオーバーラップは多く、2017年もLevi'sのデニムのジャケットにタッチセンサーを折り込み自転車を運転しながらAndroidスマートフォンを操作できる'Levi's Commuter'ジャケットの開発(正確にはGoogle ATAP事業部)からファッションの歴史を辿るGoogle 「ファッションプロジェクト」や、日本の工芸作品を世界に紹介する「Made in Japan: 日本の匠」、安否連絡先アプリ「あんしん連絡先」のリリース、Google Playで漫画を読みやすくする「ふきだしズーム」機能の搭載、そして国内での楽天EdyベースでのAndroid Payの展開など、とにかく新発表の領域が幅広い。

2017年5月、囲碁世界レーティング1位の柯潔(カ・ケツ)九段を打ち負かしたAlpha Go

 また、2017年前半は、Googleの直接の事業ではないが人間のチャンピンを負かせたAlpha Goの囲碁対戦も注目を集めた。

 そんなGoogleであえて1つだけ大きなトレンドを上げるとすれば、同社がハードウェア販売事業を大々的に手がけ始めたことがあげられるだろう。日本でもテレビで電車でと、そこかしこでGoogle HomeおよびGoogle Home miniのCMを見かけるので同様に実感してくれる人は多いはずだ。Google Homeの日本語版は5月にGoogleの音声エージェント「Google アシスタント」が日本語に対応したからこそ実現した製品で、テレビではAndroidでの「Google アシスタント」の利用を促すCMも積極的に展開している。

Google Home

 日本でGoogle製のハードウェア製品というと、目立つのはこればかりだが、米国ではそれに加えてGoogle独自開発のスマートフォン、「Pixel 2」と「Pixel 2 XL」、ヘッドフォンの「Google Pixel Bud」、他にもGoogleブランドのハードウェアの販売を始めている。MicrosoftのSurfaceが大ヒットし、OSのWindowsそのものを大幅に進化させるきっかけになったのと同じ足跡を、GoogleはスマートフォンのハードとOSで繰り返すのかもしれない。

 「どのハードでも動きます」というOSだけを作るよりも、ハードとOSの両面から理想の製品を徹底的に追求した方が良い製品に仕上がることは、常にそれを心がけて来たAppleの成功が物語っている。

 Androidを開発するGoogleも、同じことをして、今の時代の理想の製品像を突き詰めた後に、OSの互換性にも配慮するというプライオリティ順の開発をした方がAndroid生態系全体にとって良さそうなことはMicrosoftの成功が示唆している。

 では、そのMicrosoftにとって2017年はどんな年だったかというと、もちろん、HoloLensをはじめとするMixed Reallityの動きも無視できないが、それ以上に圧倒的にAI関係の発表が目立った(Microsoft流にいうと「Cognitive」)。

「HoloLens」の次世代モデルにはAI処理に特化したチップ「HPU(Holographic Processing Unit) 2.0」が搭載される

 また、幅広い分野で活発に協業も進めている。FX取引でSBIリクイディティ・マーケットと、顧客おもてなしでヘッドウォーターズと、ファッションでウィゴーやフナコシステムと、ターゲティング広告配信で博報堂グループと、新しい視聴体験でフジテレビと、ディープラーニングソリューションでPreferred Networksと、人事コンサルティングでマーサージャパンと、働き方改革で三井住友フィナンシャルグループや富士通と、より満足度の高いライヴ イベントの実現でエイベックス・グループと、個々の学習者に最適化された学習方法の提供で東北大学と東京書籍、ACCESSの3社と、交通広告や屋外広告で電通と、多彩な企業やグループと協業を行なっており、なんと渋谷区とも「渋谷みらい」というAIキャラクターを開発し、それが特別住民票登録されるというニュースがあった。

 そんなMicrosoftはAzureのサービスとしてBot Serviceを提供するなど、一般企業でニーズがあり、導入しやすいAI系サービス(あくまでも広い意味でのAI)を充実させている。来年にはAppleもBusiness Chatというサービスを始める予定で、いよいよチャットボットの利用が一般にも広がるという前夜にMicrosoftは準備万端の体勢を整えている。

 さて、AIと言えばもう1つ無視できないのがAdobe Systems(以下、Adobe)の動向だ。同社がこれまでに開発し蓄積して来た魔法のような画像処理、映像処理、音声処理を広義な意味でのAI技術ということで、「Adobe Sensei」という名前でブランディングしたのは2016年だったが、2017年はそのAdobe Senseiが、クリエイティブな制作現場をどう変えようとしているか、ラスベガスで開催されたAdobe MAXというイベントで披露され多くの人が衝撃を受けた。

 Adobeは今後、Adobe Senseiが実現しうる制作技術を他にも多数披露していたが、そのどれもが衝撃的だった。

 これらの取り組みは、いずれも2017年の状態が完成形というわけではなく、むしろ、これから2020年くらいまでに向けて発展する「種」の状態の取り組みと言える。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう