日本で個人向けに出荷している電子海図(正しくは航海用電子参考図)対応航法アプリケーションで数少ない製品の1つが「new pec」だ。
導入に要する費用は他の海外製同類アプリケーションと比べて安いにもかかわらず、設定に関するカスタマイズは多岐にわたり、ユーザーによるデータ登録が可能であったり、航海計画も設定できたりなど、その機能はある意味充実、ある意味分かりにくいほど。
多彩な表示機能とカスタマイズ機能の多さが影響してか、メニュー体系が複雑で操作画面のデザインが細かく、動作速度、特にスクロールやズームなどの描画切り替えにも難があるという意見が多かった。
new pecの開発は航海用参考図のデータ整備だけでなく航法支援アプリケーションの部分まで、その前身となる「pec」(Personal Electronic Chart)の時代から、日本水路協会の「内製」で進められていたが、2016年12月からnew pecの航海用参考図データをライセンスとして供与することで、外部の企業が航法支援アプリケーションを開発できるようになった。
現在、6社がnew pecを利用するアプリケーションを開発しており、その中のマップル・オンが、iOS、Android導入デバイスで動作する「new pec smart」を出荷している。
new pec smartは、無料でも広域図(縮尺5万分の1)表示、航海計画の立案、保存、管理、ユーザー独自のポイント登録と管理、そのバックアップ保存ができる。月額3800円の契約を結べば詳細マップ(縮尺5000分の1)に海底地形、漁具定置網や暗岩などへの接近警報、潮汐潮流、海象予報の表示機能が利用できる。
なお、契約を解除すれば月額課金はなくなるが(アンインストールでは契約解除とならないことに注意)、再び契約すれば以前保存していた航海計画や航海記録、登録したポイントのデータも利用可能になる。
new pec smartではnew pecで問題となっていた動作速度が大幅に改善されている。航海用電子参考図のスクロールも表示領域の拡大縮小もタッチパネルによるフリック、ピンチ操作に追従して書き換えができていた。
new pecで分かりにくかったメニュー体系もnew pec smartでは整理されて、ポイントの追加や明度、海底地形表示の切り替えはタップ2回で呼び出せる。マップル・オン 取締役の高澤宏光氏は、機能拡張については今後も積極的に取り組む意向を示しており、ボートショー2018でも来場者から意見を募って反映していきたいと話していた。
PC USER的になじみの深いメーカーでボートショーに参加しているところというと、以前はTOUGHBOOKのパナソニックだったが、ボートショー2018では富士通が出展していた。
展示していたのは、「海洋クラウド」と名付けられたアプリとクラウドサービスを組み合わせたプラットフォームだ。富士通が進めている「FUJITSU IoT Solution Smart Communication」に関連したプロジェクトで、IPトランシーバーとして使うスマートフォンとSNSサービスを組み合わせたコミュニケーションサービスの仕組みを利用して、小型船舶の操船者に安全な航海情報を提供することを目的としている。
海洋クラウドは、小型船舶操船者が利用するスマートフォンで使うナビゲーションアプリと陸上で所属船舶を掌握したい管理者が使う管理アプリケーション、そして、利用者やネットワークを経由して航海関連情報を集約し、かつ、利用者に合わせて適切に加工した情報を提供する“SNS”に相当するクラウドプラットフォームで構成される。
海洋クラウドでは国土交通省が2017年に策定した「船舶におけるスマートフォンアプリ活用のためのガイドライン」で求める必要な機能に対応し、他船接近警告、(浅瀬、岩礁など)危険海域警告、(海象現況、海上安全情報など)航行支援情報提供、(推奨航路の選定など)航海前情報提供、緊急連絡に関する機能と必要な条件(位置情報の精度、情報提供の頻度、警告表示方法など)を満たしていることも特徴として訴求している。
具体的な機能としては、自船位置と他船位置、周辺観光情報を表示するナビゲーションや警告表示、緊急発報などで、管理アプリケーションでは所属船舶の現在位置や航跡の把握、警報の通知なども可能だ。
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