Apple Watchはユーザーの活動を常にモニターし、生活習慣をチェックしてくれるとともに、時折適切なアドバイスをしてくれる。さらにはスマートフォンに集まる情報をフィルタリングし、必要だと選んだ情報を知らせてくれるため、スマートフォンを常にチェックしなくとも情報の取捨選択が可能だ。
最新のスマートウォッチなら、どれも備えている機能だが、そうしたスマートウォッチの良さを生かすには、毎日、いつでも手首に装着していなければならない。これは簡単なことのようだが、なかなか難しい。
装着感が低ければ論外であるし、デザイン性について納得できなければ、利用シーンに応じて普通のファッションウォッチや高級腕時計を選びたいと考えるだろう。
実際、筆者自身、屋外ランニングやフィットネスセンター、あるいは仕事上、コミュニケーションを密にする必要があるときを除けば、Apple Watch Series 3ではなく普通のファッションウォッチを選ぶことも多かった。
しかしそんな筆者でも、Apple Watch Series 4を使い始めたところ、毎日、これだけで生活してもいいと思うようになってきた。果たしてわが家にある腕時計たちをどうしてくれよう、と思うほどにだ。
装着感に関しては、もともと優れていたApple Watchだが、ほんの少し、0.7mm薄い10.7mmのケースになったことで、さらに洗練度を増した印象だ。バンドの互換性を保つためバンドのジョイント部こそ造形(Rの付け方)を変えていないが、それ以外の部分は実に巧妙なカーブで構成されており、全てがセラミックとなった背面の当たりの柔らかさとともに装着感が向上している。
薄型化は全体のボリューム感も抑える役割を果たしている。Apple Watch Series 3までのApple Watchは38mmと42mmのケースが採用されていたが、Apple Watch Series 4はそれぞれ2mmずつ増加し、40mmと44mmになった。しかし、大きくラウンドした四隅と薄型化の影響で、ほとんど雰囲気は変わらない
ケースの薄型化ととも装着感に寄与しているのが、「Digital Crown」(竜頭の形をしたコントローラー)の薄型化だ。
これまでグローブやプロテクターを装着したままウェイトトレーニングをしようとすると、手首を大きく曲げたときに、誤ってDigital Crownが押されてしまうことが多かったが、Apple Watch Series 4では装着位置を適切にしておけば誤動作しなくなった。まして日常的な場面であれば、Digital Crownに手が当たる感触は皆無といっていい。
こうしたハードウェア面の改良とともに、盤面の表示というソフトウェア面でのデザインも、より納得感のある、そして毎日装着したいと思わせるファッション性を兼ね備えるようになった。
大きくラウンドして四隅に合わせたLTPO OLED Retinaディスプレイは、表示面積が32〜35%も増加しているが、単に面積が増えただけではない。盤面の表示を美しく、機能的にするための再デザインが施された。
「インフォグラフ(Infograph)」と名付けられたデザインは、クロノグラフのような複合的な情報表示を行う伝統的なアナログ腕時計のデザインテイストを持ち込みながら、四角いApple Watchディスプレイになじむものになっている。
中央のアナログ指針の盤面に、3つの追加情報を表示する小さな円形エリアと1つの大きめの情報表示領域、そして大きくラウンドした四隅のエリアにも4つ、同様の情報表示領域が置かれた。
合計8つとなるこの表示エリアはコンプリケーションという機能を配置するためにあり、以前からサードパーティー製アプリの情報を含めて提供されてきた。タップすると、それぞれの情報を表示しているアプリ画面へのショートカットにもなっている。ただ、従来と同じと書いたが、表示方法が工夫され、四隅は円形の盤面を取り囲むようにメータースケールや文字が配置される。そして中央の円形エリアはクロノグラフのようだ。
実はこうした円形を中心としたデザインを美しく見せるため、AppleはApple Watchに採用してきた「San Francisco」というタイプフェイスを改良。円形の文字盤に沿わせて表示した際の視認性や美しさを意識し、やや丸みを帯びたデザインに修正しているという。
しかも伝える情報量も増加した。例えば四隅に配置する気温の表示は、従来ならば現在の気温だけしか分からなかった。しかし、新しい気候コンプリケーションは、その日の予想最低・最高気温をスケール表示した上で、現在の気温を表示するといった具合だ。同様の工夫は隅々にまで及んでいる。
現時点では、まだサードパーティー製のアプリがApple Watch Series 4の新しい盤面レイアウトに対応していない。しかし、近い将来、Appleが提供するコンプリケーション以外も、8つの領域を自在に操るようになるだろう。
一方、シンプルな、しかしファッショナブルな盤面として追加された「Vapor」「Fire and Water」「Liquid Metal」といったデザインは、(カスタマイズで表示は可能だが)コンプリケーションを廃し、盤面全体にこれまでの腕時計にはなかった独特の感覚をもたらす。
Vaporは多様な色の煙が、Fire and Waterは炎と水面、Liquid Metalは溶けた金属が盤面の中でうごめく特徴的なウォッチフェイスだが、デフォルトでは広くなったディスプレイ全面を使う(Apple Watch Series 3以前では円形のフェイス+コンプリケーションのみ)。それぞれ実際の煙や炎、水面や溶けた金属をビデオに収録し、まるでApple Watchの中にそれらが存在しているかのような雰囲気を醸すよう設計した。
このウォッチフェイスを試す際は、Digital Crownを回してディスプレイをオンにしてみると楽しい。少しだけ回すと、微かに見えるだけ。しかし回すほどに明るくなり、Vaporならば煙が濃くなっていくといった、実に細かな演出がされていた。
Apple Watchに関しては、盤面のデザインをユーザーやサードパーティーに開放しろとの声もあったが、ここまで高い完成度で綿密に設計されると、そうした文句もいいにくくなる。適切なレイアウトと表示方法を決めた上で、コンプリケーションを開放する彼らのやり方が浸透すれば、盤面デザインの完全開放という声も小さくなるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.