世界初で始まり世界初で終わった「Libretto」シリーズゆくPCくるPC

» 2019年03月07日 07時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

 “平成”という元号が終わる2019年、「PC USER」は9月に創刊25周年を迎えます。そんな年だからこそできる、平成30年間のガジェットを振り返る連載「30年に渡る“平成のツワモノ”に光を当てる」。第1回のソニー「バイオノート505(PCG-505)」、第2回の松下電器産業(当時)「Let's note AL-N2」、第3回のカシオ計算機「CASSIOPEIA」に続き、東芝の「Libretto 100」に迫ってみます。

ミニノートPCというジャンルを作り出した「Libretto」シリーズ

 東芝(現Dynabook)のPCといえば、やはり1989年(平成元年)に登場したDynaBookシリーズが、鈴木亜久里さん出演のTV CMと合わせて印象深いという方が多いかと思います。このDynaBookシリーズは自らを「ブックコンピュータ」と名乗り、当時一般的に使われていた「ラップトップコンピュータ」との違いを打ち出していました。何より20万円を切る価格と、2.7kgという軽量ボディーで大いに注目を集めていたのも忘れてはいけません。

 それから7年後の1996年、Windows 95が本格的に動くモバイルPCとして同社は「ミニノート」の代名詞となる「Libretto 20」を投入、予想外ともいえる大ヒットを飛ばします。ここで取り上げる「Libretto 100」は、同20〜70へとバージョンアップを続けたLibrettoシリーズ初となるフルモデルチェンジを果たしたモデルです。

Libretto 20 Windows 95が動作する世界最小かつ最軽量(約840g)のノートPC「Libretto 20」。CPUはAMD製でした

 ずばり選出の理由は、筆者が初めて欲しくなったLibrettoシリーズだったからです。今では通じにくい“VHSビデオテープ”サイズというコンパクトボディーのLibretto 20も衝撃的でしたが、PCとして利用するにはあまりにも小さく、普段使いをするには妥協を強いられる部分が多かったのです。“PC”として使うにはもうちょっと何とかならんものかと思っていたところに現れたのが、このLibretto 100でした。

 1998年3月に発表されたLibretto 100は、開発コード名Tillamook(オレゴン州の保養地)と呼ばれた最新の0.25μm版MMX Pentium 166MHzを搭載していました(従来の0.35μmから微細化することにより、消費電力が定格で2.9Wにまで低減)。システムバスが、これまでの60MHzから66MHzに引き上げられたのもポイントです。メモリも32MBのEDO DRAM、HDDも2.1GBと着実に強化されています。

 さらに液晶ディスプレイが7.1型と一回り大きくなり、画面解像度も800×480ピクセルと従来の640×480ピクセルから拡大し、パームレストも幅広になりました。Libretto 70から導入された14.5mmピッチのキーボードも継続となり、液晶パネルの脇に並んだリブポイント(左右のクリックボタンは液晶天面に配置)と合わせて、ようやく通常のPCとして利用できるような環境になったのです。

Libretto 100 ボディーの大型化および重量増と引き換えに7.1型の大画面を手に入れた「Libretto 100」

 その分、ボディーサイズは210(幅)×132(奥行き)×35(厚さ)mmと「B6ファイルサイズ」まで大型化(Libretto 70+大容量バッテリーとほぼ同じ)したのに加え、重量も約950g(大容量バッテリー搭載時は約1060g)とサブノートPCに近づいてしまいました。さらにバッテリー駆動時間は標準バッテリーで約1.5〜2時間、大容量バッテリーでも約3〜4時間(いずれも公称値)とLibretto 70よりも短くなってしまったのです。

 PCカードスロットがTYPE II×2(TYPE III×1)に増加してZVポートやCardBus対応となり、レジューム機能のサポートや標準添付のI/OアダプタにPS/2ポートが追加と、細かな改良も目に付きますが、“あちらを立てればこちらが立たず”という、当時のミニ・サブノートPCが抱えていたジレンマ状態から抜けきれなかったモデルでもありました。

 その後のLibrettoシリーズですが、さらなるスリム化や着脱式のカメラ「SCOOPY」とリモコン(i.Shuttle)を備えたエンターテインメント化、原点回帰化といった変遷を経て、2010年に同社のノートPC事業25周年記念モデルの一環として登場した「libretto W100」で復活を遂げました。このlibretto W100は、ハードウェアのキーボードを省いてマルチタッチ対応の7型ワイド液晶ディスプレイを2枚装備した意欲作で、さまざまな世界初を獲得してきた同社らしい製品でもありました。

 2018年にシャープ傘下となり、新生Dynabookとして生まれ変わった今後に果たしてLibrettoシリーズが再登板となるでしょうか。新dynabookシリーズの行方とともに、見守っていきたいと思います。

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