端子が足りない? 「MacBook Air(2020)」のUSB戦略を考える短期連載「Airと私(2020)」第4回

» 2020年04月30日 12時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 Appleの新型モバイルPC「MacBook Air(2020)」。店頭販売された2モデルのうち、上位構成(Core i5モデル)を数回に分けてレビューしている。

 今回は、(恐らく)多くの人が気にしているであろう、新しいMacBook Airの「USB端子」について見ていきたいと思う。

MacBook Air(2020) レビューしているMacBook Air(2020)はスペースグレイ

先々代、先代と同じポート構成

 過去3回の連載でも触れているが、新しいMacBook Airの外観は過去2世代とほとんど変わらない。よく見るとキーボードの方向キー回りが変わったことに気付く程度だろう。

 この点はポート類も例外ではない。左側面にThunderbolt 3端子×2、右側面にイヤフォンジャックという構成は、先々代や先代と同様だ。

左側面 左側面
右側面 右側面

 2基のThunderbolt 3端子に機能差はなく、共に以下の機能を備えている。

  • USB 3.1 Type-C
  • USB Power Delivery(USB PD)電源入力
  • DisplayPort(映像)出力

 厳密には、DisplayPort出力で「1台の外部6Kディスプレイで6016×3384ピクセル解像度、60Hz、数百万色以上対応」という機能強化がなされてはいるのだが、Thunderbolt 3経由での外付けGPUボックスのサポートなど、基本的な機能も先々代や先代と変わらない。

 左右どちらのポートも同じ機能を備えているので、「こっちのポートに電源をつながないと……」「あ、こっちのポートは映像出せないんだった……」といった迷いとは無縁で、便利に使える。

Thunderbolt 3端子 左側面のThunderbolt 3端子は、2基共に機能面の差はない。どちらに挿しても同じ機能を使えるのは、利用する際に迷わず済むので便利だ

2つしかないUSB Type-C端子を生かす「戦略」

 MacBook Airに限らず、最近のMacBookファミリーの外部接続端子はUSB Type-C(Thunderbolt 3)端子とイヤフォンジャックだけである。見た目がスッキリする反面、視点を変えると不便さを覚えることも少なくない。デバイスを接続するのに“変換”しなければならない場面が多いからだ。

 まず、USBデバイスを考えると、確かに電源アダプター類はUSB PD対応品が増えているが、USBメモリは何だかんだでUSB Type-Aコネクターを備えるものが今でも主流だ。ケーブルを介して接続する場合でも、PCやMac側はType-Aコネクターになっている。

 USBデバイスを接続するために、現時点では「Type-A to Type-C変換アダプター」を用意しておいた方が良い。「私はType-Cコネクターを持っている機器でそろえられる!!」と胸を張っていても、電源回りを除くと、それを実現するのはなかなか難しい。変換アダプターは税込みでも1000円しない程度で買えるので、少なくとも1つは持っていても損はない。

 ただし、ケーブル部分のない直結型の変換アダプターを購入する場合は、隣接するUSB Type-C端子との「空間」を考慮に入れないと、別のコネクターと干渉することがあるので気を付けよう。

USBメモリ USBメモリは、今でもUSB Type-A接続のものが主流。Type-C端子しか備えないMacBook Airでは接続が難しい
変換アダプターUSBメモリを接続した図 世の中はまだ、USB Type-Aコネクターを備える機器が主流。USB Type-A端子をType-C端子に変換するアダプターを1つは用意しておくと安心だ
クリアランスに注意 直結タイプの変換アダプターは、隣接する端子を干渉しないかどうかチェックしたい

 最近でこそ、USB Type-Cケーブルで直結できるディスプレイは増えてきている。しかし、現時点ではDisplayPortまたはHDMIに変換しないと接続できないディスプレイがほとんどだ。よく接続する映像機器に合わせて、何らかの映像変換ケーブルまたは変換アダプターを用意しておくことをお勧めする。購入する際は、DisplayPort Alternate Modeに対応するものを選ぼう。

HDMIアダプター 映像出力する際も、原則として変換アダプター(写真)や変換ケーブルが必要となる

 USBも映像も変換……となると、USB Type-C端子が2基しかないことがネックになりうる。それぞれを別々に接続していると、電源を接続できなくなる恐れがあるからだ。1つの端子に多くの機能を持たせると、「何かをつなげない」ということはよく起こることではある。

 いろいろな機器を接続する機会が多い場合は、各種変換機能を1台でまかなえる「マルチハブ」「ドッキングステーション」と呼ばれる機器を1つ用意しておくと便利だ。MacBook Airなら、そのボディーに最適化された製品を選べば見た目もスッキリする。

 ただし、専用の製品は汎用(はんよう)性がほぼゼロとなる。複数台のPC、Mac、スマホやタブレットと共用する前提なら、ケーブル接続タイプの製品を用意すると良いだろう。

 特にドッキングハブを利用する場合は、USB PD電源を本体にパススルーする機能を備えるものをお勧めしたい。少し値は張るが、ドッキングハブにUSB PD電源をつなげておけば、電源を含むさまざまな接続をハブのケーブル1本でまかなえるようになる。

マルチハブ USB Type-C端子をさまざまな端子に変換できるマルチハブ。j5create製の「JCD384」(写真)はケーブル接続タイプで、MacBook Air以外のPCやMacなどでも利用できる
接続してみた JCD384に幾つかの機器を接続してみた図。このモデルはUSB PD電源のパススルー機能(最大60W)を備えているので、電源供給を含めてまとめることができる

 自宅のデスクなどに設置するタイプのドッキングステーションには、Thunderbolt 3に対応するものもある。USB Type-C対応のものと比べると値はさらに張るが、複数のUSBデバイス、高解像度(あるいは複数枚)のディスプレイに有線LANといったような、複数種のポートに同時アクセスするような使い方をする場合は、USB Type-C対応品よりもパフォーマンス面で有利だ。

Thunderbolt 3 Dock Pro(正面)Thunderbolt 3 Dock Pro(背面) ベルキン(Belkin)の「Thunderbolt 3 Dock Pro」。正面にはUSB 3.1 Type-A端子、USB 3.1 Type-C端子、SDXCメモリーカードスロットとオーディオジャック、背面にはUSB 3.0 Type-A端子×4、Gigabit Ethernet端子、DisplayPort出力端子、Thunderbolt 3端子×2(1基はUSB PD電源供給対応)と電源入力端子を備えている
接続した図 Thunderbolt 3接続のドッキングステーションは実売価格が高め(写真のThunderbolt 3 Dock Proは税込みで4万円弱)だが、USB Type-C接続の製品よりも伝送速度が高いため、いろいろな機器を接続しても速度低下が発生しづらいというメリットがある

 変換アダプターや変換ケーブル、ドッキングステーションなどでどうにかなるとはいえ、「何でも直接接続できることが美しさある」と考える人にとって、USB Type-C(Thunderbolt 3)端子しか備えないノートPCやMacBookファミリーは使い勝手の面でストレスとなりうる。

 一方、スマートフォンを中心にUSB Type-C接続の機器で身の回りを固めている人、あるいは変換ソリューションの利用に違和感を覚えない人なら、USB Type-Cのみ備えるPCでも案外困らないだろう。

 現行のMacBookファミリー、あるいはWindowsノートPCでもUSB Type-C端子しか備えないモデルを購入しようと検討している人は、事前に自分なりの「USB端子戦略」を練ってみることをお勧めしたい。

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