IntelがノートPC向けに開発した外部GPU「Iris Xe MAX Graphics」は、第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)と協調して動作する「Intel Deep Linkテクノロジー」に対応することが特徴だ。
CPUとGPUを協調動作させるメリットはどこにあるのか――日本法人のインテルが報道関係者に説明した。
Iris Xe MAX GraphicsとTiger Lakeの内蔵GPU「Intel UHD Graphics」「Intel Iris Xe Graphics」は、いずれも「Xe-LPアーキテクチャ」に基づき開発されたものだ。
Xe-LPアーキテクチャは、「TFLOPSからPFLOPSまでカバーできるスケーラビリティ(拡張可能性)」を持つGPUアーキテクチャ「Xe(エックスイー)」の土台となる。LPは「Low Power」を意味し、ノートPCでも使いやすい低消費電力で稼働することが特徴だ。
Tiger Lakeに内蔵されるXe-LPベースのGPUのスペックは以下の通りとなる。
ノートPC用外部GPUとして開発されたIris Xe MAX Graphicsは、Tiger Lakeの内蔵GPUを強化し、専用のグラフィックスメモリを追加した構成となっている。
先述の通り、Tiger Lakeの内蔵GPUとIris Xe MAX Graphicsは、Deep Linkテクノロジーによる協調動作に対応する。どのくらい“深く”協調動作し、そのメリットはどこにあるのだろうか。
Tiger Lakeの内蔵GPUとIris Xe MAX Graphicsは、共通のソフトウェアフレームワークを利用する。簡単にいうと、1つのデバイスドライバーでCPU内蔵GPUと外部GPUを一元管理できるようになっている。
これにより、後述する「ダイナミックパワーシェア」を始めとする高度な協調機能を実現した。
外部GPUを搭載するノートPCでは、CPUと外部GPUで電力や放熱といったリソースを“共有”することが多い。
そうなると「CPUの負荷が高いときは外部GPUへのリソースを融通する」「外部GPUの負荷が高い時はCPUへのリソースを融通する」といったことができると、より高い電力効率とパフォーマンスを実現できそうなものだ。しかし、一般にCPUと外部GPUのメーカーは異なることが多いため、相互に連携して動作させることは難しい。
だがTiger LakeとIris Xe MAX Graphicsは同じIntel製で、先述の通りGPU部分は1つのドライバーで一元管理できる。そのメリットを生かした機能が、CPUと外部GPUで電力と放熱のリソースを融通し合える「ダイナミックパワーシェア」である。
ダイナミックパワーシェアを使うと、CPUと外部GPUをそれぞれ単体で稼働した場合よりも処理性能を引き上げることができる。Intelが実際に行ったテスト(一部シミュレーション)によると、CPUに負荷が掛かる処理、GPUに負荷が掛かる処理の両方において、第10世代プロセッサ(開発コード名:Ice Lake)やTiger LakeにNVIDIAの「GeForce MX350」を組み合わせたノートPCよりも高いパフォーマンスを発揮できたという。
繰り返しだが、Tiger LakeとIris Xe MAX Graphicsは同じアーキテクチャのGPUを搭載している。Deep Linkでは、2つのGPUを並列動作させることで、DP4a命令による機械学習(AI)処理や、メディアエンコーダーを使った動画のエンコード処理を高速化できるという。
とりわけ、動画のエンコードは「GeForce RTX 2080 SUPER」の「NVENC」と比べると、最大で2倍のスループットを実現できるという。ただし、この性能は「PoC(Proof of Concept)」、つまり本格実装前の計測値となる。本格的な機能実装は2021年上期を予定している。
Deep Linkを最大限発揮するには、ソフトウェアの最適化も欠かせない。既に対応済みのソフトウェアもあるが、今後もソフトウェアの最適化を促していくという。
この動きは、高性能ゲーミングPC向けの「Xe-HPGアーキテクチャ」のGPUの発売に向けたものでもある。Xe-HPGはラボ(研究拠点)での動作テストに入っているという。
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