岐阜県教育委員会、慶應義塾大学SFC研究所と日本マイクロソフトは6月11日、岐阜県立学校(高等学校、特別支援学校)における「未来を創る学び」を目指す連携協定を締結した。今後3者は連携して、「いつでもどこでも安全に、生徒が学び、教員が教えることができる環境の整備」を目指す。
岐阜県教育委員会は、2019年度から2023年度までの5年間に渡る「岐阜県教育振興基本計画 第三次岐阜県教育ビジョン」を策定した。この計画では「ふるさと教育の拡充」と「ICT環境の整備と利活用の推進」を重点施策として盛り込んでいる。
ICT環境の整備と利活用の推進という観点では2020年度、県立学校に通う児童/生徒全員に「Surface Go 2」を配布(貸与)し、高等学校の生徒にはMicrosoft 365のアカウントも用意したという。それに前後する形で、県立学校でもICT環境の整備を進めてきた。
2021年度は「1人1台タブレット端末元年」と位置付けるが、「配布した端末を児童/生徒の学びにどう活用するのか」「県立学校の教員の指導や業務の効率化に結び付けられるのか」といった課題もある。そこで、端末とサービスの提供で連携してきた日本マイクロソフトに加えて、慶應義塾大学SFC研究所内の「Society5.0時代の学びと教育・ラボ」と連携し、授業におけるICT技術の利活用や、教員の働き方改革を一緒に進めていくことにしたという。
文部科学省が昨今推進してきた「GIGAスクール構想」では、小中学校と特別支援学校において学習用端末の購入補助が行われた。そのため、ほとんどの小中学校と特別支援学校では2020年度末までに学習用端末の配備が完了している。
一方で、高校では校内通信ネットワーク環境の整備に関する補助は行われたものの、端末導入に関する予算措置は行われていない。そのこともあり、特に公立高校では、自治体によって学習用端末の配備について方針が異なる。岐阜県のように貸与端末を用意する所もあれば、生徒に購入を求める所もある(※)。
(※)要件さえ満たせば端末を自由に選べる「BYOD(自由持込み)」、自治体あるいは学校が指定する端末の購入を求める「BYAD(指定購入)」、両者の中間で、幾つかの選択肢の中から購入する「CYOD(選択購入)」に細分化される。いずれの場合も、通常は低所得世帯向けの購入補助制度とセットで導入される
Society5.0時代の学びと教育・ラボの代表を務める慶應義塾大学の鈴木寛教授は、高校が実社会と直結する場であることを踏まえて、「きちんとICTを使いこなせる高校生を社会に送り出すことが重要」と指摘する。その上で「ハード、ソフト、ヒューマンの3点から、3者(岐阜県教育委員会、SFC研究所、日本マイクロソフト)の得意分野を持ち寄って、他の地域にも影響を与えるベストプラクティスを示していきたい」と連携に対する意気込みを語った。
3者は共同して、多様な視点からこれからの授業研究を行うことで合意している。岐阜県教育委員会が研究会の計画と運営を担い、鈴木?教授の研究室が議論のたたき台となる「熟議ワークショップ」の実施と学術的視点からの助言と公表を担う。日本マイクロソフトは、教育ICTの利活用に関する提案と助言、民間企業視点からの助言を行うという。
熟議ワークショップは6月18日に実施される予定で、既に参加を希望する教員の公募は終わっているという。ワークショップの後、Microsoft Teamsを活用してグループ研究を行い、9月に中間発表会を、12月に成果発表会を実施する予定だ。
教員の働き方改革の側面では、岐阜県立学校のうち高校6校と特別支援学校1校を「モデル高」に指定し、児童/生徒や家庭との連絡のデジタル化や職員会議のデジタル化を実施する。授業研究の成果と合わせて、他校と成果を共有することで、岐阜県立学校のICT化を進めるという。
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