「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」に隠された本当の変化:林信行が読み解く(4/5 ページ)
画面が大型化した新しい「iPhone 6」シリーズ。しかし、画面サイズの変更をはるかに超える進化が潜んでいる。林信行が実際の使用感をもとに解説する。
細かなディテールで魅せるデザイン
ところでiPhoneといえば、常に最も高度な製造技術で作られた、現代工業デザインのマスターピースでもあるが、その形状デザインはどのように進化したのだろう。
新しいiPhoneが出る度に驚かされるのは、正面から見た形状がほとんど変わっていないということ。iPhone 5sとiPhone 6とiPhone 6 Plusも真正面から見た形はあまり区別がつかず「iPhone」としての強いアイデンティティを保っている。
それでいてディテールに目をやると、iPhone 6シリーズは正面全体を覆うガラスがエッジのほうで緩やかにカーブを描いており、これが指になんとも心地よい感触を伝える。
本体側面も弧を描いており、これがそうでなくても薄い本体を、衝撃を受けるくらいの薄さに感じさせたうえでしっかりとしたホールド感を与えてくれる。実はここの部分や飛び出したカメラレンズなどの特徴はiPod touchゆずりだ。iPhone 6のデザインはある意味、iPhone 5シリーズのデザインとiPod touchの融合となっている。
iPhone 5から引き継いだのは、3G回線や幅広い帯域のLTE通信、高速なIEEE 802.11acの無線LAN接続、Bluetoothといったさまざまな電波を通すため、背面パネルを3ピースに分けた点だ。
ただし、iPhone 5シリーズのようにメタルとガラスの2つの異なる素材パーツで面を構成するのではなく、iPhone 6シリーズでは、3ピースとも同じ合金になっている。そして、その継ぎ目の部分にポリカーボネートだろうか、かなり硬質の樹脂素材による縁取り線が入っている(Dの字型をしているので「Dライン」と呼んでいる人もいるようなので、便宜上、ここでもそう呼ばせてもらう。実際にはまっすぐなラインはiPhone側面まで突き抜けている)。
素晴らしいのは、まるで1枚のメタル板の上に、特注インクでボーダーラインをいれたかのようなデザインだ。このDラインを入れるデザインは、おそらく今回入手ができなかったスペースグレイモデルを念頭に置いたのだと思う。メタルのダークな美しさが輝く本体背面にアクセントのように引かれた1本の目立たない太い線がいいアクセントでもあり、丸みを帯びた本体に緊張感も与えている。
これと対照的なのがシルバーモデルで、こちらは背面パネルが明るいメタルなので、それにあわせてもう少し明るめ、というか半透明なのだろうか、周囲の光にあわせてかなり色の変わる樹脂素材でDラインを作っている。
これら2モデルでは、背面パネルとDラインの色はあまりコントラストを付けず色を合わせてあるが、これに対して少し奇抜なのがゴールドのモデルだ。あえてゴールドとのコントラストが激しい白の樹脂、それもかなりマットで明るい白の樹脂でDラインを入れている。
これはadidasのスポーツウェアやマリークワントが60年代に出していた服、それからウルトラマンの警備隊のコスチュームなどを連想させる。慣れれば決して悪い組み合わせではないが、ちょっと最初はギョっとさせられ持つのに、ちょっと勇気が試される。
ちなみに背面の細部に目をやると、背面パネルの梨地加工がiPhone 5/5sのものと比べ粒子がやや荒めになっている。おそらく、傷を目立たないようにするためだろう。
インターネット上では、新iPhoneのデザインに慣れないという声も見かけるが、これは2年ごとのモデルチェンジの度に繰り返されるお約束。しばらくすれば、そうした声もおさまるのではないかと思っている。
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