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Windows 10のアプリ不足を解消する「Windows Bridge」に危険信号か鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

特にWindows 10 Mobileのアプリ増強策として期待されているMicrosoftの「Windows Bridge」プロジェクトだが、当初の計画より遅れが目立ってきた。

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成功の鍵を握るのはアプリ拡充だが……

 本連載で何度も触れてきた通り、Windows 10の成功は、UWP(Universal Windows Platform)アプリが今後どれくらい伸びるかにかかっている、と言っても過言ではない。

 UWPアプリはユニバーサルアプリとも呼ばれるもので、Windows 10 Home/Pro搭載のPCやタブレットに限らず、ゲーム機のXbox One、Windows 10 Mobile搭載のスマートフォン、さらにはWindows 10をサポートする幅広いデバイスで動作が可能だ。

 特にWindows 10 Mobileでは、UWPアプリの増加が強く求められている。ミドルクラス以上のWindows 10 Mobile搭載スマホは「Continuum for Phones」機能を備えており、スマホに外部ディスプレイやキーボード、マウスを接続すれば、スマホ用アプリをまるでPC用アプリのように利用できるが、この機能を使うにはアプリがUWPアプリであることが必要だからだ。UWPアプリの増加が、先行するiOSとAndroidへの対抗策となる。

Continuum for Phones
Continuum for Phonesに対応したWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「NuAns NEO」(トリニティ)。プロセッサはミドルクラスのSnapdraton 617(MSM8952)を搭載する。下位クラスのプロセッサでは、Continuum機能をサポートしない点は注意が必要だ

 そのためにMicrosoftは、iOSやAndroidなど他のプラットフォームのアプリを幅広いWindows 10搭載デバイスで実行できるUWPベースのアプリに変換するプロジェクト「Windows Bridge」を進めている。このプロジェクトによりUWPアプリを増やし、Windowsストアを盛り上げ、さらにWindows 10の普及を加速させる構えだ。

UWPアプリ
幅広いWindows 10搭載デバイスで動作するUWPアプリ。このアプリが増えるほど、Windows 10はプラットフォームとして強みを発揮できることになる
Windows Bridge
Microsoftが掲げる「Windows Bridge」の概要。iOSやAndroid、Win32ベースのデスクトップアプリケーションや.NETアプリケーション、そしてWebアプリケーションまで、全てをUWPアプリに取り込もうという野心的なプロジェクトだ

 Windows Bridgeについては、2015年8月時点での状況を報告したが、その後の進展はどうなっているのだろうか。今回は4つのブリッジの中から、Windows 10 Mobileにとって重要な「Windows Bridge for Android(Project Astoria)」と「Windows Bridge for iOS(Project Islandwood)」に焦点を当てる。前者はAndroidアプリから、後者はiOSアプリからUWPアプリへのポーティング(移植)を促す施策だ。

 Windows Bridge自体の解説については、過去の連載記事を参照していただきたい。

Windows Bridge for iOSはIPAファイル登録ページが出現

 2015年夏の時点では一部登録デベロッパーにSDKが出回り、予定通り2015年秋での提供が始まるとみられていたWindows Bridge for Androidだが、その後急に続報がなくなった。むしろ現時点ではWindows Bridge for iOSのほうが先行している状況だ。

 Windows Bridge for iOSは、GitHub上で既にソースコードがオープンソースとして公開されており、試すことが可能だ。MSDNでは利用ガイドも掲載されている。

MSDNの利用ガイド
MSDNに投稿されたWindows Bridge for iOS(Project Islandwood)の利用ガイド

 基本的に、Windows Bridgeは他のプラットフォームで動作しているアプリをUWP向けに“そのまま”コンバートするツールとなるが、このWindows Bridge for iOSは若干毛色が異なる。

 それは、MacのOS X上のXcodeで作成されたプロジェクトファイルをWindows 10搭載PCに読み込み、Objective-Cの編集が可能なVisual Studio 2015上でコンバート作業を行うというものだ。プロジェクトファイルを読み込んだ時点でそのままUWPアプリとしての出力が可能だが、場合によっては若干の修正が必要で、これをVisual Studio上で作業するという手順になる。

 さらに年が明けて2016年1月中旬になり、iOSアプリの配布パッケージである「.ipa」ファイルを登録して互換性検証を行うページが出現した。Microsoftによれば、現在IPAファイルを登録することでUWP変換時の互換性検証を自動的に行うWebツールの準備を進めており、数週間内にも正式公開する予定という。現時点ではIPAファイルを登録するだけだが、ツールが有効化された段階で登録者に対して判定結果が返信されることになる。

iOSアプリ互換性検証ページ
iOSアプリの互換性検証を行うためのページ

 なぜこのようなツールが必要かという点だが、現状でWindows Bridge for iOSは開発途上であり、全てのライブラリや機能が実装されているわけではない。そのため、これでXcode上のプロジェクトファイルをUWPアプリにコンバートしようとしても、未実装の機能については変換されず、アプリは完全な形では動作しないのだ。

 ただし、Microsoftでは(Windows Bridge for iOSの)開発の優先順位をつける必要があり、この中でどの機能を優先的にサポートすべきか、アプリ開発者らに積極的にIPAファイルを登録させて、利用しているライブラリの比率を算定し、これで開発順序を決定するものと予想される。

 いずれにせよ、参加するデベロッパーが多いほどWindows Bridge for iOSの開発における進展スピードも、その完成度も高くなるため、可能な限り最新動向を周知したほうがいいという状況だ。

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