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Googleの優秀な「DQN」が大活躍ITはみ出しコラム

DQNといっても、あのDQNじゃないですよ。

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 Googleは検索やGoogleドライブ、Google Cloud Platformなどのいろんなサービスを、世界16カ所(本稿執筆現在)の自社データセンターで運営しています。それはそれは膨大な量のデータを世界中でやりとりしていて、さぞや電気代がかさむでしょうと、ひとごとながら心配になります。

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Googleのデータセンター分布

 そういうデータセンターの新たな味方、それは「DQN(Deep Q-network)」。人によっては違う意味のネットスラングを思い出して笑ってしまうような名前かもしれませんが、優れモノの人工知能(AI)です。

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Googleの子会社DeepMindが開発した人工知能「DQN」。中の人はDQNの日本での意味(ネットスラング)は知らなかったんじゃないでしょうか?

 GoogleはこのDQNのおかげで、データセンターの冷却システムで消費する電力を40%も削減できたそうです。

 DQNは、Googleが2014年に買収した人工知能企業、DeepMindが開発したディープラーニング採用のアルゴリズムです。

 おおまかに言うと、ディープラーニングとはニューラルネットワーク(人間の脳神経系を模した情報処理システム)における学習方法の1つ。ニューラルネットワークを多層構造にしてタスクを分担することで(中略……汗)、とにかくいっぱいデータを餌としてあげると、特に人間が教えてなくてもモリモリ消化、学習して頭がよくなっていきます。

 すごいのは、タスクの分担方法も、人が教えてあげなくても、学習しながら自分で改善していくところです(この分野ではこういうのを「教育なし学習」というそうです)。

 休み休みじゃないと学習できない人間と違い、餌を与えたら(コンピュータを稼働し続けられる環境があれば)不眠不休でそれを消化し、しかも教育しなくても勝手にシステムまで改善していくのです。恐ろしい子!

 学習方法は異なりますが、世界トップレベルのプロ囲碁棋士を負かして注目された「AlphaGo」もディープラーニングの人工知能です。Googleフォトで、「犬」とか「笑ってる人」とかで写真を探し出せるのもディープラーニングのおかげ。

 DQNは、Atariのゲームを、誰にもルールを教わらずに、ただピクセルとゲームのスコアデータを餌としてもらっただけで、自分でやり方を試行錯誤して学び、すぐにスコアで人間を追い越し、人間が思い付かないような裏ワザまでこなすようになりました(ゲーム内容によって苦手なものもあるようです)。


 このDQNに、Googleのデータセンターに設置してある多様なセンサーを通じて記録した過去2年分の気温とか消費電力とか冷却ポンプの動きとかの膨大な情報を餌として与えて学習させ、向こう1時間の気温と静圧を予測できるようにしました。そうすることで、冷却システムを効率よくコントロールできるようになり、その結果40%の省エネが可能になったわけです。

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AIにまかせた結果、データセンターの電力消費効率が大幅に改善

 素人が考えても、あのだだっ広いデータセンターの冷却を効率よく調整するのは、考慮すべき要素がありすぎて人間には難しそうなことが分かります。でも、膨大なデータさえあれば、DQNには可能でした。

 しかも人間だと、例えば砂漠のデータセンターで経験を積んで職人的に冷却のワザを身につけても、そのワザは海辺のデータセンターで応用できそうにありません。あらかじめ世界中のデータセンターのデータで学習したDQNであれば、もうすぐ稼働する東京のデータセンターでもすぐに活躍できます。

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フィンランドにあるデータセンターの海水冷却システム

 DeepMindは今後、冷却システム以外にもこのアルゴリズムを応用できるように、Googleに対してさらに多様なセンサーをデータセンターに設置するよう要求しているとのこと。

 GoogleがDeepMindを買収したときは、正直Googleが一方的に得する取引だと思っていました。しかし、ニューラルネットワークの餌として、Googleのユーザーデータやこうしたデータセンターの情報、そして自動運転車の走行データなどは、DeepMindにとって垂ぜんのごちそうです。DeepMindにとっても良縁だったんだと遅まきながら理解しました。


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