うわさのサーバ向けARMプロセッサ「Qualcomm Centriq 2400」が正式ローンチ Intel Xeonと比較した実力は?:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)
Qualcommが投入したサーバ向けARM SoC「Centriq 2400」は、Intel Xeonの牙城を崩せるのか。米カリフォルニアで開催されたローンチイベントを現地からレポートする。
Xeonと同じパフォーマンスなら省電力でさらに有利に
このような期待を背負って今回投入されるCentriq 2400の製品概要を説明するのは、米Qualcomm Datacenter Technologiesのジェネラルマネジャー兼シニアバイスプレジデントであるアナンド・チャンドラシーカ氏だ。
Centriq 2400はSamsungの10nm FinFET技術を用いて製造され、398mm平方メートル大のダイに180億以上のトランジスタが搭載される。製造プロセス面での優位性により、パフォーマンスや省電力、コスト面でライバル製品と比較しても競争力があるというのが、先ほどのジェイコブス氏のスライドで示した図の意味するところだ。
Centriq 2400の詳細なスペックについては、米カリフォルニア州クパチーノで8月に開催された半導体業界イベント「Hot Chips 2017」での発表内容から特に変更はないが、チャンドラシーカ氏があらためて強調するのは「(48コア構成という)コア数を重視した高密度設計」と「潤沢なキャッシュサイズ」の2点だ。
並列動作やスケールアウトを主眼に、当初からコア数の多いコンフィグを設定しており、これでなお最大TDP(熱設計電力)が120Wとなっている。実際に多くのワークロードで120Wに到達するケースはなく、この点で高負荷なワークロードへの適用の他、低消費電力動作による電力や冷却コストの低減効果なども期待できるという。
またキャッシュを多めに搭載していることで、同一SoC内のコア同士で互いが干渉することなく快適が動作が可能になるというメリットがあるようだ。
データセンターでの高密度サーバ向けという形で、上から下まで幅広いラインアップを抱えるIntelのXeonに比べて適用対象が狭いCentriq 2400ではあるが、恐らくARMの適正を最も生かせる用途なのではないかと考える。
同社がライバルとして想定するIntel Xeonと比較したベンチマークテスト結果も公開されている。
例えば単一スレッドあたりの性能でCentriq 2460(48コアで48スレッド対応、TDP 120W)とXeon Platinum 8160(24コアで48スレッド対応、TDP 150W)を比較した場合、SPECint_rate2006とSPECfp_rate2006でそれぞれ7%と13%ほどCentriqがXeonを上回るという。
Xeon PlatinumはHyper-Threadingがかかっているため、正確には搭載コア数が異なるが、「ARMはシングルスレッドあたりの性能で単純にXeonに劣る」という先入観を崩すには十分な数字だろう。
チャンドラシーカ氏がポイントとして挙げているのは「Centriq 2400が提供するパフォーマンスはXeonと同等でも、その電力あたりのパフォーマンスでは大きく勝っている」という点で、これが前述の高密度コンピューティング用途で大きな力を発揮するとしているゆえんだ。
もう1つCentriq 2400の特徴として、I/Oなどの機能を全てSoC内に包含しているため、競合のIntelプラットフォームにあるようなブリッジチップを別途要求しない点がある。これのメリットは、実装面積やコスト面で優位になる他、「ブリッジチップで消費される電力を加味すれば、さらに省電力面で優位になる」という点だ。実装面での自由度も上がるため、将来的な広域展開で優位に働くだろう。
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