「ThinkPad 25」のキーボードを打って「過去」「未来」に思いを寄せる(2/3 ページ)
ThinkPadブランドの25周年を記念して登場した「ThinkPad 25」。最大の見どころは復活した「7列キーボード」だろう。かつての「ThinkPad T400s」で初採用された配列を再現したものだが、その出来はどうなのだろうか……?
ThinkPadで「アイソレーション」が登場した2010年
従来とは異なるユーザー層に訴求すべく、2010年初頭、新たなThinkPadが登場した。最安構成で10万円を切るモバイルノート「ThinkPad X100e」と、ポップな見た目の13型ノート「ThinkPad Edge 13」だ。
従来とは異なるユーザーへの訴求を優先したためか、これら2機種ではThinkPadとしては初めて6列アイソレーションキーボードが採用された。
今振り返ると、当時は他社においてアイソレーションキーボードが普及し始めた頃合いでもあり、「ThinkPadで6列」「ThinkPadでアイソレーション」の可能性を探るためのモデルだったのかな、と思う。
両機種の6列アイソレーションキーボードは、古くからのThinkPadファンほど否定的な意見が強かったように記憶している。しかし、両機種を試用した筆者は、近いうちにClassic ThinkPadも6列アイソレーションキーボードになると確信した。それは以下の理由からだ。
- かつて業務用システムで重要だった「ScrollLockキー」と「Pauseキー」はほぼ使われなくなった
- ワープロ・表計算ソフトユーザーが良く使うであろう「Home/Endキー」「Page Up/Page Downキー」は(位置や押しやすさはさておき)X100e/Edge 13の6列キーボードのThinkPadでも独立キーとして残している
- ThinkPadユーザー以外は、6列キーボードに慣れている
- 見た目的には、アイソレーションキーボードの方が「威圧感」が少ない
- アイソレーションキーであっても、X100e/Edge 13は他社ノートPCよりもカッチリとしたThinkPad的なタイプ感を実現できている
配列やキーの見た目こそ違えど、ThinkPadの要であるキーの打鍵感はしっかり維持できている。しかも、ノートPC全般を見渡すと、7列キーボードはもはや「普通」ではない(これこそがThinkPadであるという意見もあるだろうが)。
ThinkPadが7列キーボードにこだわるべき理由は、2010年の段階でほとんどなくなっていたのだ。
変化への“確信”が深まった2011年
2011年、ThinkPadの新たなプレミアムモデルとして「ThinkPad X1」が登場した。
ThinkPad X1は「ThinkPad X300」シリーズの事実上の後継機で、Classic ThinkPadの一員と位置付けられた。ところが、ThinkPad X1はClassic ThinkPadにも関わらず6列アイソレーションキーボードを採用した。
Classic ThinkPadのプレミアムモデルに6列アイソレーションキーボード――これは多くのThinkPadユーザーにとって大きな衝撃だった。将来的にはThinkPadも6列キーボードになるだろうと確信していた筆者も、さすがにショックを隠しきれなかった。
だが、ThinkPad X1を見た筆者は、来年(2012年)には他のClassic ThinkPadも7列キーボードとの「別れ」を迎えるとより深く確信するに至った。
筆者の“想定通り”にアイソレーション化した2012年
そして2012年。筆者の確信は現実となった。全てのClassic ThinkPadの新モデルが、6列アイソレーションキーボード化したのだ。
このことは、ThinkPadファンにとってアイデンティティーの崩壊ともいえるほどの衝撃をもたらした。ThinkPadにタッチパッド(UltraNav)が追加された時よりも、7列キーボードがリニューアルされた時よりも、ひいてはThinkPad X1が6列アイソレーションキーボードとなったことよりも大きなインパクトだった。
筆者の回りでは、7列キーボードのThinkPadを何台も買いだめする人、そのThinkPadの保守部品として7列キーボードを何枚も備蓄する人、果ては「7列キーボードでなくなった『ThinkPad』はThinkPadではない」として他社ノートPCに乗り換える人……と、反応が3分された。古くからのThinkPadファンにとっては、それほどの“大ごと”だったのである。
かくいう筆者は、「心の準備」ができていたこともあり、衝撃の発表からあまり間を開けずに6列アイソレーションキーボードの「ThinkPad T430s」を購入した。キーボードの習熟に若干時間はかかったものの、F4キーとF5キーの間とF8キーとF9キーの間にあった「空間」が全くないこと以外は満足して使うことができた。
このT430s以降、現在の愛機である「ThinkPad X1 Carbon(第5世代)」に至るまで、筆者はずっと「6列アイソレーションキーボード」のThinkPadを使い続けている。唯一の大きな不満だったファンクションキーの「空間」が2014年モデル以降で復活して使いやすくなったことも理由として大きいが、打鍵感の面でThinkPadを超えるノートPCになかなか出会えないことが一番大きな理由である。
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