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1日座っていても“むくみ”知らず――イトーキ「Cassico」(カシコ)に座ってみた (2/2)

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女性向けはピンクにすればいい?

 秋山さんは「女性はさまざまなテイストを好むため、デザインにも苦労しました」と明かす。

 「本当に女性が好むものってなんだろう」

 プロジェクトの女性メンバーで議論をした時、当時世の中で女性向けに作られている物の批判から始まったと秋山さんは言う。「なんとなくピンクにして、丸くしておけば女性は好むのではと思っているのではないかと感じることが多かった。でも『そうじゃないよね』と」。

 張地は起毛した柔らかい素材を使用し、半袖を着用した場合、肌に触れて気持ちがいいと思えるものを採用した。「長時間体に密着しているものですから、肌触りのいいものにしました」(秋山さん)。フェルトに似た感じと言ったらいいだろうか。服のようで、直接肌に触れても違和感がなかった。これなら肌の露出が多い季節でも快適だ。

 色はスウェード調6色(プラムパープル・ラズベリーレッド・コーラルピンク・シュガーブラウン・ミルキーホワイト・パンプキンイエロー)と、従来のイスとテイストを合わせた2色(アップルグリーン・ブラック)の合計8色展開。ピンクも起毛の張地にすることで、大人の女性らいしい落ち着いた色になったため、選択肢のひとつとして取り入れることにした。個人的には一番気になる色だった。

photo ひざがそろいやすい座面形状

 秋山さんは「さらに男性と女性で姿勢に対する意識を調査したところ、仕事中足下が前から見えてしまうのが気になるだとか、オフィスで背もたれを倒すのが気が引けるだとか……女性の方がわりと敏感に感じていることが分かりました」と続ける。

 座面の真ん中がへこんだCassicoは、膝がそろいやすい仕様になっている。またローライズのパンツなどをはいたとき、背後から肌や下着が見えてしまうことがある。それを考慮して、背もたれを“ほっぺた”のようなふくれたような形状にし、後ろから見えにくくしている。

操作を簡単にするには

 レバーの種類も普段から使いやすいように、座面の高さを上げる上下昇降、背もたれのロック、サーキュレートシートのレバーの3つに整理。「たくさん機能が付いていても使い切れなくて、初期設定のままにしておくケースが多かったので、極力分かりやすいレバーで構成しました」と秋山さん。

photo 手の腹で操作できる、簡単レバー

 レバーの形も、力が弱く指ではレバー自体の操作がしにくいという人のためにも、握って操作するタイプを装備している。それによって爪を伸ばしても操作しやすい。これまで何が起こるか分からないという怖さもあって、イスの調整を完璧に無視してきたのだが、わたしでも操作が容易だった。とにかくわかりやすくていい。

 Cassicoはオプションも充実している。従来、男性がジャケットを掛けられるがっちりとしたハンガーではなく、ブランケットやカーディガンなどがかけられる華奢なハンガーを用意している。肩幅が小さくジャケットも型くずれもしにくいので、女性にはありがたいオプションだろう。また、イスの背の部分も樹脂タイプとレザータイプから選べる。

photophoto ハンガーオプション

イトーキの今後の商品展開

 これだけ配慮を施した製品だが課題もある。「コールセンターなど女性ばかりの職場なら導入しやすいのですが、企業の総務の方から見れば男性、女性の比率が変わってくるのでなかなか採用しにくいみたいで。これがハードルになっています」。

 これまで同社では法人向けの商材を多く扱っていたため、エンドユーザーになかなか届かなかったと秋山さん。この反省を生かし、プロモーションのため、Webサイト「オンナノシゴト向上委員会」を立ち上げた。「女性にこういうイスがあるよと伝えたかったので」(秋山さん)。サイトは1カ月に1回更新される。Cassicoの特徴紹介以外にもコンテンツを設けている。

photophoto 特設サイト「オンナノシゴト向上委員会」。右が「カラダノナヤミ」コーナー

 「カラダノナヤミ」コーナーでは、乾燥している時期は皮膚を特集するなど、女性が今何を悩んでいるかをリサーチして、ユーザーに情報を提供する。

 Cassicoに実際に座ってみた感想として、必要なものを必要な分だけ付けたという印象を持った。小ぶりのサイズでシートにも奥までかけられ、156センチの身長のわたしにはとてもしっくりきた。一方で意地悪な見方をするならば、最近では長身の女性も多く、Cassicoが合わない人も当然たくさんいるはずである。

 「Cassicoは、女性に配慮したということを全面に押し出したものですが、今後どんな商品でも、Cassicoように細かな配慮を続けて行きたいと思います。人に優しいオフィスを提案することが当社のポリシーなので。Cassicoはその選択肢のひとつとして見てほしいですね」と秋山さんは抱負を語った。

 イトーキでは働く女性を応援したいという会社としてのメッセージを伝えるために、昨年から乳がん支援のピンクリボンの協賛を始めている。「Cassicoを通して、働く女性を応援したいというイトーキのメッセージを表現するためにピンクリボン活動に参加しています」と秋山さん。今後の商品展開にも注目していきたい。

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