> レビュー 2003年5月30日 09:27 PM 更新

35mmフルサイズのCMOS――半年経過するもライバル不在
キヤノン EOS-1Ds(1/3)

製品写真
総合評価9
デザイン9
ユーザーインタフェース7
機能10
性能10
バッテリ9
ソフト4
レンズ7
レイティングポリシー

評価のポイント

デザイン

     エンブレムだけが相違点でボディは1Dと同一。EOS-1vをベースにしたプロ仕様のボディである。私の10Dと比較すると(比較してはいけないのだが)「プロの持ち物はこんなにも違うのか」とがく然とする。アスファルトの上で三脚ごと倒れたとしても、壊れないのでは? というくらいしっかりとした剛性感が右手に伝わってくる。タテ位置撮影時のホールド感も抜群。堅牢かつ流麗。この工業デザインは日本の宝といっていいかもしれない。

ユーザーインタフェース

     実は1Dのところで言及を避けたが、ここでは言わせていただこう。MENUがわかりにくい。地雷が仕掛けられているかのようだ。JPEG&RAWの同時記録やWB(ホワイトバランス)の設定チャンネルが2カ所にまたがっており、別々に設定が必要なのである。なぜ1カ所に集約できないのか。単純明快のタブなし羅列型MENUの10Dでさえも同様のことがいえるが、2カ所設定方式はミスを誘発する要因になると思われる。

     なおこれも1Dsに限らないのだが、撮影可能枚数の表示などよりISO感度の常時表示をデフォルトにしてほしい。表示すべきプライオリティを誤っている。1Dを学習教材として、1Dsではその効果を示してほしかった。最高級機だから注文・要求も増えるのだが、そのほかはめくじら立てる要素なし。

機能

     今のところライバル不在かもしれない。1110万画素の35mmフルサイズ撮像素子とこの映像エンジンに太刀打ちできるものは見当たらず、その実力は一人勝ちに近いのではないか。ただし、今、話題集中の「RAWファイル撮影」を考慮すると、RAW現像に特化した「コダック DCS Pro 14n」が発売となれば分布図の変化が起こることが予想される。コダックの現像ソフトは、日本の光学メーカーがかなわない歴史と実績を持っている。14nとは価格帯で直接競合しないが、現在のRAWブームをみると1D、1Dsの強敵となることは確実視されている。

     といっても可逆圧縮のJPEG2000が登場すれば、RAWファイルのもてはやされぶりはあっさりと鎮静し、もっといえば消え去るかもしれない。テクノロジーの世界なんてそんなものだ。

性能

     マウントの大きいキヤノンだから、35mmフルサイズ撮像素子の搭載が早期に実現したのだろうか。それともやはり「技術のキヤノン」だからか。1Dsの発売は、「広角を不満なく撮りたい」というプロたちの悲願がかなった瞬間だった。その代わりピントをシビアに見せつける、極限性能が如実に現れる大型撮像素子である。長玉くっつけて手持ちで撮影、となったら覚悟を決めてかかろう。手ぶれ、ピンボケは直ちに見る人にバレるのである。

バッテリ

     1Dと共通なので、ここで語ることなし。1Dと1Dsを併用するプロは多いので、そういう人にとっては持ち歩く荷物(チャージャー)が減ることはウェルカムな話である。

ソフト

     もしもあなたがRAWの現像ソフトの改善をキヤノンに望むなら、声を出そう。「デジタル一眼レフで撮るならRAWだ」などと叫ばれるようになったのは、ここ半年くらいのムーブメントである。もっちー(=望月宏信氏)が3年前から(1人で)叫んでいたRAWによる撮影の利点に、ようやく時代が追い付いて認識されるようになったのだ。イメージングブラウザ用の専用ソフト(Image Browse)も、不満だらけの人は声を出そう。デジタルカメラの業界には明日に夢を見出す希望が持てるのだから。

レンズ

     私が愛用するEF 16-35mm F2.8L USMは10Dにも1Dにもマッチするが、フルサイズCMOSのこのカメラでは使えない。デジタル一眼レフを強く意識して開発されたレンズだが、1Dsに装着し超広角側(16mm)で撮影するとこのレンズが嫌いになりそうになる。四隅の絵が流れてしまうのだ。そうした作例はネット上にすでに公開されているので、今回のレビューではネガティブな作例は避けている。レンズやカメラが悪いのではなく相性の問題だ。しかし基本的に1Dsに合わせる超広角は、単焦点を選ぶほうが「吉」と出るに違いない。

     1Dsの性能を引き出すにはLレンズ(LはLuxuryのL)だ。このことは1Dsの検討ユーザーなら自明だと思うので、以上。

総合評価

 色調は控えめ、輪郭も控えめ。なので露出だけをきっちり調整、あとはAWB(オートホワイトバランス)で細かい設定を気にせずガンガンRAW撮影。撮ったあとにじっくり納得のいく作画に完成させる。こうした使い方はやはり正しいのだろう。仕上がった絵をストレートに(補正なしに)展開すると、どことなく眠たい印象のカットを作る点は否めない。

 しかしカメラ側で勝手にギチギチにシャープをかけられ過ぎても、プロとしては使い回しのしづらいデータになってしまう。この辺りも「プロ仕様らしさ」と考えるべきなのかもしれない。

 名実ともに、現在1Dsはデジタル一眼レフのチャンプの座にある。画像はごく素直で輪郭も自然。フィルム的な描写をするカメラだ。デジタルの頂点に君臨する一眼レフは、デジタルを感じさせない描写なのである。描写、描写といっても、解像感は一眼レフの場合、レンズに左右されるところが大きい。1Dsのポテンシャルを引き出し、阻害しないレンズ選びを心がけたい。

 フレーム周辺部の描写力は、安定感を得たいなら相性のいいレンズを選ぶべし。レンズへの出費を惜しむと、このカメラの性能を見誤ることになる。PCの画面に展開し100%表示すると、ピントやブレは一目瞭然。このカメラで風景を撮るなら三脚の出番は確実に増えるだろう。撮影者に技術を要求する、まさにプロのためのシビアな実力を備えたキング・オブ・DSLRだ。

ベンダー製品担当者からの一言

 スタジオ撮影を中心とするプロ用最高級デジタルAF一眼レフカメラ。35mmフルサイズCMOSセンサー搭載により、全てのEFレンズをそのままの画角で使用できます。また、有効画素数約1110万画素というデジタルAF一眼レフカメラで最高レベルの高解像度を実現。(キヤノン販売 広報部 徳重義弘)

主要スペック

撮像素子35mmサイズCMOSセンサー
有効画素数1110万画素
対応レンズキヤノンELレンズ群
レンズマウントキヤノンELレンズ
感度(ISO)ISO100−1250相当
焦点調節オート/マニュアル
最高品質時の最大画像解像度(W×H)4064×2704ピクセル
シャッタースピード1/8000−30秒、バルブ
露出補正あり
ストロボなし(シンクロ端子あり)
記憶メディアコンパクトフラッシュ(TYPE II)
画像ファイル形式JPEG、RAW
電源ニッケル水素パックNP-E3、ACアダプタ
PCとのインタフェースIEEE 1394
サイズ(W×D×H)156×79.9×157.6ミリ
重量1265グラム(本体のみ)

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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