> ニュース 2003年10月16日 07:53 PM 更新

写真画質新時代を感じさせるキヤノン、エプソンの新インクジェット(1/2)


 今年もプリンタ商戦の幕が切って落とされた。おそらくこれから1カ月ほどの間に、各社製インクジェットプリンタに関する紹介記事や評価記事がたくさん登場することだろう。筆者自身、画質だけではなく、色設計やドライバの使いやすさ、付加機能など、さまざまな視点で各社製プリンタを比較している最中だ。

 その中で興味深いことは、エプソン、キヤノンの両雄が、ともにインクジェットプリンタの写真画質を語る上で不可欠だった「粒状性」を、差別化のポイントとして唱えなくなっていることである。

 実際には一昨年ぐらいから、開発サイドからは粒状性に関するプレゼンテーションがほとんど行われていなかったが、営業面での“うたい文句”としては残っていた。それがほとんど聞かれなくなった、というところにインクジェットプリンタ業界全体の方向修正が見える。

 では、どのようなアプローチで高画質化を図ろうとしているのか。現時点ではまだ評価を終えていない部分も多いが、両社が目指した画質向上の手法やその成果の一端を見ると、今年は久々に写真画質プリンタの技術革新が注目すべきポイントになっていることが分かる。

 ここ数年というもの、インクジェットプリンタの写真画質は“粒が小さくなって高画質化”という正常進化の繰り返しで少々食傷気味だったが、このステップを登り切ろうとしている今年、インクジェットプリンタは新しい領域に進めるかもしれない。例えば、保存性を解決したエプソンの手法は注目に値するし、PictBridgeを全機種に搭載したキヤノンの判断も興味深い。しかし、今回はいくつかの切り口のうち、「新しいインク色の追加」にフォーカスを当ててみた。

増えたノズルの使い道

 今年のモデルで興味深いのは、エプソンとキヤノン、両社ともにCMYK、印刷に利用する三原色+黒に加えて、特色インクを加えていることである。エプソンはブルーとレッド、キヤノンはレッドを新たに加えた。

 インクが増えた背景には、製造技術の進歩でノズルあたりのコストが下がった(言い換えれば同じコストならばノズル数を増やしやすい)こと、印刷データのほとんどがRGB色空間で作られていること、の二つが原因として挙げられる。しかし最大の原因は、粒状性や印刷速度に関してめどが立ったことで、メーカーがテクノロジー進化のベクトルを従来とは別の方に振り始めたことだろう。スペックの追求ではなく、感性に訴えかけるための進化と言い換えることができるかもしれない。

 Windows標準のsRGBは、色域が狭すぎるとの批判を受けることが多い。その指摘は一部の色域において真だが、別の色域を見るとプリンタの方が色再現域で狭い部分もある。例えばマゼンタとイエローで作るレッド、シアンとマゼンタで作るブルーは、CMYKインクで表現しにくい色だが、RGB色空間では表現しやすい。

 同様にイエローとシアンで作るグリーンもCMYKでは作りにくいはずだが、実際にはグリーンの表現力に大差はないため、エプソン、キヤノンともに採用していない。両社が共通して採用しているのはレッド。実際、インクジェットプリンタの赤は、色域によっては冴えない、ヌケが悪いと感じる場合もある。これを特色とするのは意味がありそうだ。

 一方、ブルーインクに関してはエプソンのみの採用。キヤノンはブルーインクに関して「ブルーインクを追加すれば、確かに表現可能な青の範囲は拡がるが、視覚上、大きな違いを得られるほどの効果がない」として採用を見送ったという。実際、sRGB色空間の青は非常に広く、インクの青を多少追加した程度では視覚上、コストに見合うだけの効果がないというのもうなづけるし、このコメントが単なる言い訳ではないと思われる部分もある。

 では実際の製品を見てみよう。

 キヤノンの「PIXUS 990i」は従来の6色にレッドを追加した7色インク構成で、各色768ノズルを装備していると公式にはアナウンスされているが、実際にヘッドを見ると768ノズルのノズル列が10個ある。また写真からもわかるとおり、ヘッドユニットのインク導入分部、一番左の部分にプラスティックパーツがはめられており、大きな設計変更なしに、もう1つカートリッジを取り付けるようになっていた。

 つまり、ヘッド部はあと3色、インク導入部はあと1色、追加可能な余裕がありながら、今回はレッドインクのみの追加にとどめているのだ。これはなぜなのか?


キヤノン PIXUS 990i


 また、エプソンは色再現域を広げるだけの目的でブルーインクを追加したわけではない。このあたりを見ていくと、エプソンとキヤノンの考え方の違いが、おぼろげながらにも見えてくる。

エプソンが薄いインクを排除した理由

 まずエプソンの「PX-G900」から、もう少し見てみよう。この機種はこれまであった薄いシアンとマゼンタをなくし、その代わりにレッドとブルーを追加した(ほかにダークイエローの廃止やグロスオプティマイザー、マットブラックの追加もある)。ではなぜ薄いインクがなくなったのか?


エプソン PX-G900


[本田雅一, ITmedia ]

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