> レビュー 2003年10月29日 02:18 PM 更新

Longhorn Developer Preview
Longhornの開発状況は今?

「PDC 2003」で配布されたLonghorn Developer Preview版を早速インストール。その開発状況や何が変わったのかを検証してみた。

 Microsoftが主催するソフトウェア開発者向けカンファレンス「Professional Developers Conference 2003(PDC 2003)」で配布された開発者向けキットを早速インストールしてみた。カンファレンス会場では、多くの興味深いLonghorn関連技術セッションがあるが、まずはLonghornの現状について紹介しておこう。

PDC 2003で配布されたLonghorn。色使いが変化したほか、タイトルバーのサイズやIEのデザインなどに変化が見られる。Outlook Expressはバージョンが7になっていた

新しいAPIに準拠したコードの動作確認が主

 今回、来場者に配布されたのはLonghorn Developer Previewというもので、通常のx86版に加えIA-64、AMD64に対応した64ビットLonghornも含まれたDVD-ROMである。開発者向けにデバッグシンボル、ソフトウェア開発キット、次世代Visual StudioのWhidbey(β版)、次世代SQL ServerのYukon、それにこれらのテスト環境を作るためのVirtual PC 2004(ただしこれもβ版)、各種ドキュメントやサンプルプログラムのソースコードが含まれている。

 もっとも、上級副社長のジム・オルチン氏自身が「非常にパフォーマンスは悪い」と認めているように、パフォーマンスチューニングは行われておらず、各コンポーネントを寄せ集めて開発に利用できるビルドをやっと作ったというレベルのものだ。

 WinFXは実装されているが、Longhorn自身はまだWinFXを積極的に利用した機能(特にグラフィックス部分)は少ない。APIがあるため、プログラムを書けば動くが、インストールしただけでLonghornの機能すべてを体感できる訳ではない。

 このため、PDCの技術セッションで紹介されている開発手法を、Whidbeyをインストールして実践してみる、具体的なプログラムコードとそれに対応するOSの振る舞いを確認したいといった目的では利用できるが、ユーザーインタフェースを評価できる段階ではない。

 基調講演やその後のセッションでは、半透明のウィンドウ枠を用いたデザイン、何種類かのログオン画面などが紹介されたが、それらはデベロッパー向けのビルドには含まれていなかった。例えば3Dグラフィックスを応用したエフェクトなども、シェル上では見ることができなかった。

 5月のWinHECではLonghorn Milestone 5(M5)というビルドでデモが行われていたが、M5と比較するとパフォーマンスが多少アップした程度で、サイドバーにインストールできるアプレットが減っているなど、むしろ見た目には後退している面もある。ただ、M5がWindows XPに若干の機能追加を行った上で、機能を“見せる”ために実装していただけなのに対して、今回配布のビルドは実際にAPIが存在することが大きな違いだ。

 動作環境にはPentium III/800MHz以上、メモリ256Mバイト以上、DirectX 7対応GPU、32Mバイトビデオメモリが必要で、開発者向け推奨環境は1.6GHz以上のプロセッサ、メモリ1Gバイト、64Mバイトビデオメモリ搭載のDirectX 7対応GPUというもの。決して低い要求ではないが、2006年のPCがターゲットで、パフォーマンスチューニングもされていないことを考えれば妥当な数値と言えるだろう。

WinFSを基礎にしたユーザーインタフェース

 Longhornならではの機能を確認する上で、もっとも分かりやすいのはExplorerだ。WinFXのストレージ機能を担当するWinFSは、従来のファイルシステムと協調して動作。ファイルやWindows上で扱うさまざまなオブジェクトをデータベース管理する。この機能を実現するため、LonghornにはYukonのデータベースエンジンが搭載されている。

 データベースエンジンを利用することで、ファイルや各種メディアをはじめ、さまざまな情報に対してさまざまな切り口でアクセスできる。作成日、アクセス日などによる分類、カテゴリや作成者による分類など、扱うファイルの種類ごとに表示できるのだ。これらの属性データベースは、通常、使用している間、自動的にWinFSが登録する。

WinFSを用いたサーチ機能。Longhornがサポートするさまざまなデータタイプを検索できる。電子メールやコンタクト先の検索が行えるようになっているのに注目

 これに伴い、音楽、ビデオ、写真、文書にアクセスする手法も多少変化している。これまで通り「マイドキュメント」フォルダは存在するが、スタートメニューには[Documents]、[Music]、[Video and picture]といった項目があり、フォルダとは別にデータベースのクエリとして管理されている。WinFSのデータベースに対して音楽ファイルの属性を持つファイルを抽出するクエリを出すのが[Music]という項目といった具合だ。

画像フォルダ用の画面レイアウト。プレビューやタスクが表示されるほか、カーソル位置の画像の拡大表示機能がある。この画面では期間ごとに自動分類されている

音楽ファイルの扱いも楽になる。WinFSでは音楽ファイルのアーティスト名、アルバム名をはじめ、画像ファイルのExif情報などで自動分類してくれる

 Longhornには新たに[Games]という項目もスタートメニューに追加されているが、これもゲーム属性の実行ファイルを探して一覧するクエリをWinFSに発行、結果を表示している。従ってハードディスク内に分散して存在する場合でも、まるで同じフォルダに存在するようにアクセスできる。LonghornのExplorerには、並べ替えや名前ごとの表示、検索などの機能があるが、これらでも全面的にWinFSが利用されており、次に挙げるStacを自動生成することで実現している。

ゲームフォルダは実フォルダではなく、ゲーム属性を持つ実行ファイルを並べて表示している

 こうしたPC上のリソースに対する“視点”は自分でも作成することが可能だ。「Documents」にはデフォルトでは何も登録されていないが、ここに新しいStacを作成。登録したいオブジェクトをドラッグ&ドロップすることで登録できる。

 このほか、LonghornでサポートされているWindows Markup FileというXMLファイルを開くと、Avalonによる高精細なページレンダリングを見ることができる。

Windows Markup FileをLonghornで表示させたところ。電子ブックライクな高品質のレンダリングが行われる

 本来ならば、これ以外にも多数の機能を紹介したいところだが、今回配布されているビルドは非常にパフォーマンスが悪く、今回テスト用に持ち込んだマシンではうまく動かないところも多い。また、冒頭でも述べたように実装されていない部分もあり、あまり多くの機能を紹介できない。

 リムーバブルメディアに対して、PC上のデータや設定項目を同期・保存する機能などもあるが、今回はここまでで速報としたい。

データ同期機能の設定画面。ドキュメント、音楽、写真、ビデオ、設定項目(お気に入りなど含む)をリムーバブルメディアに対して同期させることが可能



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[本田雅一, ITmedia ]

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