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ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第12回 アモルファス合金の情報データベースを支援するファイルメーカーPro(1/3)

ファイルメーカーProを使った学術データベースプロジェクトを紹介します。このプロジェクトで中心的役割を果たしている、豊田工業大学の上野明助教授にお話を伺いました。

 今回の取材先は、名古屋市天白区にある豊田工業大学の上野明助教授です。同大学はその名の通り、トヨタ自動車の社会貢献活動の一環として始まった、工学部のみの単科大学です。

 上野先生は11月26日から開催される「第5回構造物の安全性・信頼性に関する国内シンポジウム」において、「アモルファス合金 製法・特性データベースの構築について」という発表を行う予定ですが、そのデータベースがファイルメーカーProを使って構築されているということを聞きつけ、その概要を伺うことにしました。


ファイルメーカーProにたどりつくまで

 では、まずこのデータベース構築の歴史から。

 1986年に、大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンターという財団法人が、材料強度に関するデータベースの需要が将来出てくると予測して、データベース構築を開始しました。他の学会ではそういったデータベースが作られ、評判を得ていたのです。

 3種類(粉末焼結合金、耐熱合金、アモルファス合金)のデータベースを作り始め、粉末焼結合金、耐熱合金は既にデータベースになっています。2つのデータベースを作った当時はネットワーク環境もなかったのです。入力する場合には、コーディングシートという入力用紙に書いて、プロのキーパンチャーが打ち直すという作業を行っていました。80桁という限られたところにしか情報が入らず、打ち間違いもある。どこが間違っているのかわからなかったのです。

 そして、アモルファス合金のデータベースが具体的に動き始めたのが1995年のことです。1995年というと、Windows 95の年であり、この時期にはネットワーク環境が徐々に整いつつありました。そこで、アモルファス合金のデータベースに関しては最初からWebを通してデータを収集しようという方針が立てられたのです。

 最初は、Visual Basicでデータ入力プログラムを作り、メンバーにプログラムを配布して、データファイルを作ろうとしていました。しかし、メンバーからMacでも使いたいという要求があり、OSに依存するソフトを使って入力するのではなく、ネットワーク経由でOSに依存せずにデータベースを入力する方式に変更することになったのです。

 その条件を満たすのが、ファイルメーカーProでした。最初はWebに直接公開する機能はなかったので、WebサーバとしてはWebSTAR、ファイルメーカーProとWebSTARをつなぐCGIソフト、Tangoという当時としてはデフォルトの組み合わせを使っていました。

 しかし、これにも問題があったのです。データ入力のときには支障ないのですが、入力したデータを後で呼び出し、検索して修正するときに検索が思うようにいかない、時間がかかる、といったものです。これは困ったなというときに、ファイルメーカーProの新バージョンであるバージョン3が登場し、ファイルメーカーPro自身がWebサーバの機能を持つようになったのです。それ以降、ファイルメーカーProのバージョンアップを繰り返していますが、データベースファイルは、ほぼ変更なく継承しているそうです。

 他の研究用データベースでは、CGIを使っているところもあります。では、ファイルメーカーProを使うメリットはと聞いたところ、「最初はCGIで書いていたのですが、デザインのちょっとした変更や、項目をちょっとだけ変えるというときにも、プログラムを変更する必要がありました。それが、ファイルメーカーProだけならば、簡単に済みます」と上野先生。確かに、この手軽さはほかではなさそうです。

 では、現在、このデータベースはどのように運用されているのでしょうか? サーバマシンは1997年から動いている初代Power Macintosh G3。233MHzで動作する、ベージュボディのものです。


 このサーバではファイルメーカーProが稼働しています。この研究に取り組んでいるのはおよそ10名なので、ファイルメーカーProのWeb同時アクセス数10名までの制限で十分なのです。なお、OSはMac OS 9です。

 では、Webからデータを入力するときの画面を見ていきましょう。

[松尾公也, ITmedia ]

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