> ニュース 2003年11月12日 03:00 PM 更新

「機能のシェイプアップは退化ではない」──バイオノート505エクストリーム(3/3)


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 別途、詳細は記事でレポートする予定だが、X505には様々な「贅」が尽くされている。

 たとえばPentium Mのシステムとしては異常なまでに小さなメイン基板はMDとほぼ同サイズ。6層基板の両面を2段ビルドアップした計10層となっている。このコストのかかる基板を使うことで、複雑な配線と電源が必要なPentium Mシステムでも、90%という部品実装率を実現した。

 基板設計を行った西野氏自身「実際に動かしてみるまで、本当にうまく動いてくれるのか心配だった」と懐述する。「X505の基板設計データをCADで分析すると、実装率で101%になってしまう。実際に部品が張り付いている面積は90%だが、表面の配線もあるためCAD上では面積が足りないことになってしまう。そこをひとつひとつ詰めていった結果、今回のMDサイズ基板が実現した」

 「それ以外にも、基板に載せるチップ抵抗(1個0.6ミリグラム)まで計算して、軽量化に努めた。たとえば基板の銅箔はどこまで薄くできるのか? そこまで追求している」(西野氏)

 基板設計が「執着」したのは、軽量化や単純な小型化だけではない。デザインも含めたレイアウトの最適化も行われている。X505の底面をよく眺めて見ると、中央(基板が配置されている部分)から端に向かって微妙なカーブを描きながら薄くなる、非常に繊細な曲面で構成されているのに気が付く。これは横から見た時、本体の薄さを強調する意図が込められたものだが、基板部分だけが平面にならないよう、実装部品の高さが中央から端にかけてだんだんと低くなるように配置されているという。

 筐体部もスゴイ。エントリーモデルではカーボンの短繊維をプラスティックで固め、20ミクロンのニッケルコート層で強化したモールド製法の外装素材を採用することで、薄型・軽量ながら丈夫なノートPCとすることができた。さらにソニースタイルモデルには、長繊維のカーボンシートを積層し、エポキシ樹脂で固めた素材を用い、より軽量で、より強い筐体を実現している。

 内側2面はマグネシウム合金製だが、キーボード側はこれまで最薄だった0.7ミリ、液晶ベゼルに至っては0.4ミリという驚異的な薄型パーツをモールド技術で作っている。「最初、0.4ミリは不可能と製造の人間に言われたが、試しにやってみたら0.4ミリでも十分な品質と歩留まりを得られた」

 「今回は、コストを考えなくていいと言われたので、使いたい素材は何でも試すことができた。今回のプロジェクトでなければ、長繊維カーボンが使われることはなかっただろうし、0.4ミリ厚のマグネシウムもあり得なかった」と辛島氏。

 「ほかにも“超々ジュラルミン”の削り出しで筐体を作る案もあったが、加工会社がすべて手を引いてしまった。とんでもない発想? いえ、薄さ、軽さ、そして強さを求めるためならば、なんでもしようという共通認識があったからこそ、そうした素材にもチャレンジできた」

 「コスト度外視は素材だけではない。通常、製造工程を減らすため、組み立てが難しくなる設計は行えない。しかし、今回は軽量化のためにネジも減らしたかったため、非常に難しい組み立て工程になっている。具体的な数字は言えないが、ネジ数が激減し、それによって軽量化にも貢献してる」(辛島氏)

X505で採用された長繊維カーボン繊維。繊維のパターンは同一にならないため、X505の表面の繊維パターンはすべて一つ一つ微妙に異なっている

意外な快適性

 さて、これほどまでのコダワリが伝わるX505だが、使い勝手の面はどうだろうか。無駄を一切省いた少量生産のライトウェイトスポーツカー、と聞くと、どうしてもユーザーを選ぶ傾向が強いのでは?と考えてしまう。

 とくに隙間のあるペタンコのキーボードにパームレストのないデザインを見ると、本当に使いやすいのだろうか?と不安を感じ、例を見ないほど薄い筐体で冷却ファンのないシステムと聞けば、発熱の問題はないのか?といった疑問も出てくるだろう。

 詳細は製品レビューでお伝えしたいが、キータッチに関してはほとんど問題がない。むしろ、17ミリピッチの薄型ノートPCとしては良好と言える。パームレストに関しても、筐体先端部が薄いおかげで、机自身がパームレストとして機能する。ただし、膝の上で使う時には多少の不自由を感じるのは否定できない。

 熱処理はまったく問題がない。X505はファンレス設計で、CPUとチップセットの熱をグラファイトシートを用いて分散させている。グラファイトはアルミよりも高く銅と同程度の熱伝導率を誇る。また熱伝導に方向性があり、すばやく熱を拡散してくれる。かつて、松下電器産業のLet'snote miniがグラファイトシートを用いて熱を分散させていた。

 そのためか、通常使用時はもちろんだが、AC駆動時にベンチマークテストを動かしても、さほど熱さを感じない。もちろん筐体が金属でないことも、体感的な熱さを感じさせない理由だろう。さらにキーボード下にチップなどの発熱体が一切ないため、熱による不快な感覚は受けることがなかった。

 X505はすべての人に勧められる製品ではないかもしれない。しかし、頑固なまでにコンセプトを守った製品だけに、その多少偏りも感じる製品仕様にも不思議と文句を言う気が起きない。

 インタビューの最後にこんな質問をしてみたが、三人とも明快に答えてくれた。

 「創っていて楽しかった?」

 「コストという枠に縛られず、あらゆる選択肢の中からベストの道を選ぶことができる。技術者としてこれほど幸せなことはなかった」

関連リンク
▼ バイオホームページ

[本田雅一, ITmedia ]

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