> レビュー 2003年12月1日 08:18 PM 更新

新しくなった低価格定番モデルの実力は?――キヤノン PIXUS 560i(2/2)


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安くても、速くてきれい

 2万円を切る実売価格の安さゆえに、「印刷スピードが遅かったり、写真画質があまりきれいではないのではないか?」と疑いの目を向ける人もいるだろう。だが、そんな心配は無用だ。この製品の最大の特徴は、価格に不釣合いなほどの実力を備えている点である。

 「プロフェッショナルフォトペーパー」(新PR-101)に「高品質」の設定で出力したデジカメ画像は、均一ハイライト部など、粒状感の目立ちやすい部分にややざらつきはあるが、おおむねきれいである。色合いも元画像に比較的近く、特に肌色が自然だ。色を意図的に作り込んだ印象もない。デジカメ写真を出力したり、写真入り年賀状を印刷するといったニーズに十分応えられる写真画質である。


「プロフェッショナルフォトペーパー」(新PR-101)に「高品質」で出力した。よく見ると背景の水面に粒状感がわずかに感じられる程度で、4色インク機とは思えない滑らかさ。水面のグリーンは元の画像よりやや鮮やかに出ているが、オリジナルに近い自然な色味だ


同じくプロフェッショナルフォトペーパーに「高品質」で出力した人物写真。腕など粒状感が目立ちやすい部分にややがさつきがあるが、それでもデジカメ写真の出力に十分使えるクオリティだ。肌色がオリジナル画像に近い自然な色合いなのもよい。イチゴの赤などはオリジナルよりも濃く出ているが、全体的には、変に色を作り込んだ印象もなくきれいだ


同じくプロフェッショナルフォトペーパーに「高品質」で出力した花の写真。背景や陰の部分がオリジナル画像より暗めに出ているが、花の色はオリジナルに近く自然だ

 最高レベルの品質を求めるユーザーにとっては、最高画質の設定でも粒状感がわずかに残るなど物足りない部分もあるだろうが(4色インク機なのでどうしても限界はある)、ポートレート写真や風景写真など、どんな画像でも無難に表現できる、多くの人に好まれる色合いと画質だろう。

 注目したいのは、出力スピードの速さだ。画質を評価した最高画質設定(「高品質」の設定)では、はがきフチなし出力は1枚あたり約2分55秒だった。しかし、設定を「きれい」にすると約1分6秒、「標準」にすると約47秒(いずれもはがきフチなし出力)に出力時間が短縮される。実際の出力物は、「きれい」では十分に美しく、「標準」でもハイライト均一部分にやや粗さが目立つようになる程度で、極端に画質が落ちる訳ではない。年賀状などは「標準」で印刷すれば、作業時間をかなり短縮できるだろう。

 また、地図サイトやビジネス文書の印刷といった普通紙出力が速いのもこの製品の特徴だ。後掲の表からも分かるように、普通紙出力のスピードは現在のインクジェットプリンタの中でもトップクラスである。写真印刷、普通紙出力ともに画質とスピードのバランスがよく、日常の幅広いニーズに応えてくれる製品と言えるだろう。

デジカメ写真出力
   高品質約2分55秒
   きれい約1分6秒
   標準約47秒
普通紙出力
   モノクロ文書約8秒
   カラービジネス文書約22秒
   カラー地図サイト約23秒

※ 給紙開始から排紙までの実印刷時間

秘訣は「新・完全双方向印刷」ヘッド

 PIXUS 560iの画質と出力スピードの両立の秘訣は、「新・完全双方向印刷」ヘッドにある。このヘッドは2003年秋冬モデルで初採用されたものではないが、PIXUS 560iを始めとする同社製4色インク機の多くに採用されているキーテクノロジーなので、その構造をここでおさらいしてみよう。

 新・完全双方向印刷ヘッドのカラーインク用ノズルは、イエローを中心にシアンとマゼンタが左右対称に配置されている。これは、ヘッド移動の無駄がないため印刷スピードを上げられる双方向(ヘッドの往復の両方)印刷した時に、インクが重なる順番の相違で色合いが異なってしまい、画像に帯状の色ムラができてしまうのを防止するためだ。

 また、新・完全双方向印刷ヘッドでは、カラーインク用ノズルとブラックインク用ノズルが1パス分ずらした位置に配置されている。PIXUS 560iは、色が濃くにじみが少ないため輪郭がシャープな顔料インクをブラックインクに使用しているが、顔料インクは染料インクに比べて紙に載ってから乾くまでに時間がかかるため、同一パス上にカラーインク用ノズルとブラックインク用ノズルを配置すると色が混じってしまい、顔料インクの良さを生かし切れなくなってしまうからである。

 この新・完全双方向印刷ヘッドの土台になっているのが、半導体製造にも使われるフォトリソグラフィー技術を応用したヘッド製造技術。合計1600個の微小ノズルを最適な位置に高精度に作れるこの技術があったため、画質と出力スピードの両立が実現できたのである。

 2万円弱というお手頃価格ながら、実力は十分。低価格モデルとは思えない高いレベルで、画質と出力スピードのバランスが取れている。動作音も、給紙時でも52ホン以下で耳障りな音がなく、比較的静かだ。付属ソフトも豊富である。年賀状の季節だけでなく普段使いでも幅広く活躍できる、売れ線の1台になるだろう。

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[田中裕子, ITmedia ]

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