ペン操作が、より容易に自然に――マイクロソフト、タブレットPC用OS次期バージョン「Windows XP Tablet PC Edition 2004」を公開

 マイクロソフトは12月9日、タブレットPC用OSの次期バージョンとして「Windows XP Tablet PC Edition 2004」(以下Tablet PC Edition 2004)をプレス向け簡易懇談会にて発表した。2004年夏に提供開始予定、既存タブレットPCユーザーは無償ダウンロードによりアップグレードが可能となる。ダウンロード容量はまだ未定だがおよそ100Mバイト程度とのことだ。

 Tablet PC Edition 2004の主たる変更点として、IMEなどを含むOSそのものの操作や、Windowsアプリケーション上でのペン入力作業をより便利に無理なく操作できるよう「(タブレットペンでの入力時における)インクのテキスト変換」機能や、単語や大文字・小文字の認識性能を強化した新たなTablet PC入力パネル「TIP」の搭載が挙げられる。

 具体的には、
・入力パネルの表示位置が自由に――「In Place」
・入力パネルの表示サイズもフレキシブルに――「Auto Grow」
・入力パネル内で漢字変換も可能に――「KKC on TIP」
・英文字入力認識能力が向上
 の4つである。

入力パネルの表示位置が自由に――「In Place」

 従来のペン入力パネルはデ
ィスプレイ下段に固定表示され、アプリケーションウインドウが勝手に縮小されたり、入力したい場所がパネルによって隠れてしまうことがあった。「In Place」によって、OSが文字入力可能な場所を認識、そこをペンでタップすると、まさにその場所に入力パネルが表示されるようになる。


「In Place」機能の表示例(左)。入力時におけるペンの移動量はもちろん、より自然に入力できるようになる。従来バージョン(右)はディスプレイ下段に表示されている

入力パネルの表示サイズもフレキシブルに――「Auto Grow」

 日本語手書き入力時には、表示されるいくつかの入力ボックスの中に文字を記入するわけだが、長文入力時にはセンテンスの途中で入力可能なボックスがいっぱいになってしまうことがかなり頻繁に起こる。その時は、一度[送る]で入力文字をアプリケーションに送ってから続きを入力する必要があったのだが、「Auto Grow」によって1行分の文字ボックスがいっぱいになったら自動的に2行目が表示されるようになる。


文章は「マ社のタブレットPC新バージョン……」と記入するところだが、従来バージョン(右)では「……レット」でボックスがいっぱいになってしまい入力作業が中断した。一方Tablet PC Edition 2004(左)では「Auto Grow」によって自動的に2行目が表れる

入力パネル内で漢字変換も可能に――「KKC on TIP」

 Tablet PC Editionのウリは、通常のWindows XP Professionalに手書きでの文字に有力機能を追加したことにある。そのため、手書き文字認識を使用する場合、その文字ないし漢字をきちんと入力しなければ認識されにくいのは予想できると思うが、キーボード入力での漢字変換に慣れてしまっているユーザーなどは特に、常用漢字でさえもど忘れしてしまうことはないだろうか。

 従来のペン入力時にわからない漢字があった場合は、とりあえずひらがなで入力してアプリケーション上で「再変換」を行うなどの方法がある。もちろんかなり面倒だ。折りしも緊急のメモ取り・取材用としてタブレットPCを使用するにあたってこの時間ロスはかなり致命的となることもありえるだろう(その前に漢字を覚えていない自分が悪いのであるが)。

 そこで新バージョンでは、入力パネル内で漢字変換も可能な「KKC on TIP」を搭載した。たとえば、入力パネルにひらがなで「ばら」と入力、入力ボックスの下に単語認識バーが表示され、おなじみの変換候補ウインドウが表示される。


「薔薇」はもちろん「檸檬」とか、最近書けなかった漢字……「烏骨鶏」「蕎麦」とか

英文字入力認識能力が向上

 とくに英単語筆記体での認識精度が向上したという。タブレットPCが導入されているという医学系大学や病院などは外国語の使用頻度は高いと思われ、要望が高かったのだと思われる。


日本語入力ボックスの横にボックスで区切られていない英文字入力部分が表示され英文字が入力可能となっている。ややくずした筆記調で「superset strategy」と入力(左)、文字そのものの認識はもちろん、単語間の半角スペースもきちんと認識されている(右)

 また2002年に発表して1年が経過したタブレットPCだが、新規購入者の約5割がPC知識が非常に豊富なユーザー(ホームPCユーザーの上位5%)で、現在40社以上のソフトメーカーがタブレットPC対応アプリケーション開発を行っている。小売店の在庫管理システム、医科大学でのカルテ用途、建設会社での現場・建築物検査用として、また教育開発関連の財団法人によるプロジェクトの一環となっている小学校などにおいてすでに導入が始まっているという。

 三木市立緑が丘東小学校での導入例では、そもそもキーボードとマウス、アプリケーション内のツールなどにおいてPCを操作する、というタブレットPC使用以前にPCを扱うユーザーとは異なり、ペン操作ができることで、紙に書くような動作を自然に行うようで、タブレットPC上に定規をおいてペン操作している。


上二つは、財団法人コンピュータ教育センターによるプロジェクト「Eスクエア・アドバンス」の一環として三木市立緑が丘東小学校での導入例。下二つは、西松建設で導入されたタブレットPC用専用アプリケーション。建築物の着工から保守管理まで立ちながらペン操作できるようなインタフェースになっている

関連リンク
▼ マイクロソフト タブレットPC
▼ マイクロソフト内 西松建設TabletPC導入事例

[岩城俊介, ITmedia ]

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