ファイルメーカーで商用ウェブサイトを構築する
最終回 最新バージョンのファイルメーカーPro 6で、どう変わるか?
新バージョンのファイルメーカーPro 6.0はXMLのフルサポートがされており、それが大きな特徴となっていますが、それ以外の便利なところもたくさんあります。新バージョンはどこが新しいのかを、使い勝手も含めてここでまとめてみたいと思います。
「ファイルメーカーPro 6は、XMLの機能が大幅に拡張され、バックエンドのデータベースとのやりとりが非常に容易になっています。その機能を使って、BeforeCMSを作り替えるとどうなるのか? 実際に試してその使い勝手をレポートします」というのが、最終回になる予定だったのですが、実のところ、まだそこまでは話が進んでいないのです。バックエンドのシステムがXMLになっていれば、そのままファイルメーカーPro 6の機能を使って一発でオッケーとなったはずなんですが……。
XML機能をこのシステムのなかで試すことができないのはたいへんに残念ですが、新バージョンのファイルメーカーPro 6.0にはそれ以外の便利なところもたくさんあります。今回はどこが新しいのかを、使い勝手も含めてここでまとめてみたいと思います。
まずは互換性の検証
ファイルメーカーProのバージョンが5.5から6.0へと、新しいナンバーに到達しましたが、互換性という点では問題がなさそうです。プラグインの互換性はだいじょうぶですし、外部アプリケーションのコントロールも問題なし。使いなれたキーバインドもそのまま生きている(一部、新機能の追加などにより変更されたところもあります)。
ファイルメーカー Serverは、ファイルメーカーも保証しているように、バージョン6との連動は問題ありません。Palm版のファイルメーカー Mobileは、実際に購入して試してみたのですが、問題なく動作しています。そのファイルメーカー Mobileはバージョンが2.1とあがっています。Windows版ではPocket PCも対応が加わり、バーコードにも対応するなど、ますますソリューションとしての使い勝手を向上させたようです。
現在のところ、BeforeCMSではファイルメーカー Mobileと連動するようには作っていませんが、別に作ってある個人用ファイルメーカーDBとの連動は見事にうまくいっています。実は、先週の週末を利用して、カラオケデータベースの構築をしていたのです(もちろん個人用)。通信カラオケの曲名、アーティスト名、キー、歌詞、リモコン用の番号などを各所から集めて、1ファイルに集めたものです。洋楽楽曲5400レコードのなかから、選択したレコードだけをPalmに送り込むことで、自分のレパートリーだけをカラオケルームに持ち込むことが可能になるのです。
まあ、これはファイルメーカー Mobileの実験ということでやってみたのですが、同じように、インタビューや取材の前などにBeforeCMSに入っている関係レコードを検索して、Palm/Pocket PCのなかに入れておけば、取材活動は非常に円滑になると思います。このソフトの安さを考えれば、導入する価値は十分にあると思います。使ってみることで新しいアイデアが産まれることでしょう。
ファイルメーカーPro 6で充実した検索機能、ユーザビリティ
新しいバージョンのファイルメーカーProを使ってみてまず気付くのは、検索機能が充実したところでしょう。Command + Fで通常の検索モードにしただけではわからないのですが、[編集]メニューのなかから、[検索/置換]階層にある[検索/置換...]コマンドを選択すると、次のようなダイアログが現れます。キーボードショートカットだと、Shift + Command + Fです。
5.5までは、このコマンドはなく、ただ検索モードにできるだけでした。そこで、フィールドの一括置換を行うためには、スクリプトを使う必要があり、フィールドの内容をSubstituteで置換するフィールド設定をループさせるようなスクリプトモジュールを作っていたのです。これははっきりいって手間がかかる作業でしたが、今バージョンからは、ワープロやテキストエディタのように手軽に、レコードの検索・置換を扱うことが可能になりました
さらに、検索する対象のフィールドに、カ現在のフィールドだけではなく、すべてのフィールドを対象にすることも可能です。何らかのミスがあったときに、どこのフィールドにその間違いが潜んでいるかわからない場合などは、便利です。
さて、この検索/置換機能の影響を受けたところがあります。それは、レイアウトモードでのグループ化のショートカットです。複数のオブジェクトを1つのオブジェクトにまとめるときに使うコマンドですが、このコマンドは従来、Command + Gだったのです。[次を検索]が、新たにCommand + Gを割り当てられたので、グループ化のショートカットは、Command + Rに変わりました。旧バージョンのユーザーの方は、気をつけましょう。
スクリプティングを行う場合に、より柔軟性を高めることができるオプションも増えました。
「対象レコードの絞り込みと拡大」という機能が追加されており、ある条件で検索して絞り込んだレコードを対象に、もう一度検索をかけるということが可能になりました。これまでは、複雑な手順を必要としていたことが、簡単になります。スクリプトの中で、[検索を実行]スクリプトを追加すると、そのオプションとして、3つの選択肢が表示されます。
ユーザビリティに関しては、細かいところがいくつも改良されています。2ボタンマウスの場合の右クリック(MacではControl + クリック)を使ったデータベースのソート機能がサポートされていたり、書式のコピー&ペーストが可能になったりしています。また、ダイアログのリサイズできる画面を増やすという、これまでの傾向をさらに押し進めており、大きな画面を持ったマシンでは、さらに使いやすさが向上しています。
Mac OS Xではパフォーマンスに関する向上も見られます。Mac OS X 10.1以降では性能向上するとされており、手持ちのマシンで試してみたところ、非常に長いスクリプトをスクロールされる場合のスピードが、5.5では42秒かかっていたものが6では39秒と、若干の性能向上を示しています。
データリソースの取込みが大幅に向上
バージョン6.0では、XMLデータの取込み・書き出しがフルに行うことができるというのが最大のポイントともいえますが、それ以外のデータ取り込み機能も、大きな向上をみせています。たとえばデジタルカメラのデータ取り込み機能です。
Mac OS Xには、イメージキャプチャ機能が組み込まれており、接続されたデジタルカメラの画像データを自動的にダウンロードする機能があります。iPhotoはその機能を活用したアプリケーションで、デフォルトでは、iPhotoが起動し、画像データの本体へのダウンロードを行います。
ファイルメーカーPro 6は、この機能を代行し、それ以上のことを可能にしてくれます。iPhotoはそれなりにすばらしいのですが、EXIFデータなど、デジカメ上級者が必要とする画像情報を、フルに活用することはできません。
ファイルメーカーPro 6は、撮影日時、シャッター速度をはじめとするさまざまな情報を取り込むことができるように、あらかじめテンプレートが用意されており、既存の画像管理アプリケーションに不満な方は試してみるとどうでしょうか。
取り込んだ画像を使ってオリジナルのウェブサイトを構築するといったことも、これで手軽に行うことができるようになります。
最後に
こうして原稿を書いているあいだにも、ZDNetのなかに新しいチャンネル(テンポラリーのものも含め)を作る話が持ち込まれてきています。その要求に対し、デザインのパーツさえできあがり、論理構造さえ決まれば、一両日くらいでBeforeCMSに組み込むことができる(集中できれば数時間の仕事)のです。
これからの予定としては、手持ちのデータベースをすべて、Oracleに取り込めるようにし、自動生成可能なインデックスなどはバックエンドに実行させ、ファイルメーカーProのシステムでは、ユーザビリティを向上させたり、写真管理などの新しい機能をもたせたり、モバイルデバイスとの連動などを行っていきたいという野望があります。
さいわい、ファイルメーカーでは、新しいバージョンのファイルメーカー Mobileなど、ソリューションを意識した改良をガンガン行っているようです。こちらでもソフトに負けずにアイデアをふくらましていきたいと思っています。
書き残した部分は、あとで追加していきますが、6回の連載はいちおう、今回でおしまいです。それではまた、お会いする日まで。
[松尾公也, ITmedia
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