―― 前回のインタビューでもお聞きしましたが、ゲーム市場に特化して見ますと、マイクロソフトのiPhoneやAndroidに対する強みは“Xbox 360というゲーム機市場も持っていること”。Xbox 360は、海外ではPS3より売れているわけです。このXbox 360と連携しつつ、さらにグローバル展開して採算が取れるというのが、Windows Phone 7向けゲーム市場の大きな特長になりそうですね。
一方で、iPhoneがゲーム市場にもたらしたインパクトが、初期投資や流通のハードルを下げることで、個人やベンチャー企業の新規参入をしやすくすることでした。これは過当競争と価格破壊をもたらすという弊害はありましたが、玉石混淆でも多数のゲームを自らのプラットフォームに集めることには成功した。これは大手ゲームメーカーには採算性の悪化というデメリットですけれど、ベンチャーの中から少ない開発投資でヒット作を生みだす会社も出てきたわけです。
越川 もちろん、大手ゲームメーカーが採算が取りやすい環境を整備する一方で、個人やベンチャーの新規参入も促していきたいと考えています。
では具体的にどうするかといいますと、まずゲーム開発に必須の開発ツール「Microsoft Visual Studio」をWindows Phone 7からは無償で提供させていただきます。SDKやエミュレーター類も含めて、Windows Phone 7のアプリ開発に必要なものはすべて無償で用意する方針です。
―― iPhoneのエコシステムと同様に、個人の開発者はもちろん、小資本のベンチャー企業でも参入しやすい環境も作るわけですね。
越川 そうです。あとWindows Phone 7では.NETとSilverlightが技術的な土台になってきますので、今後はWebサービスのデザイナーが(Windows Phone 7の市場に)多く参入していただけるのではないかと期待しています。
―― ソーシャルゲーム市場が取り込めるといいですね。国内にはモバゲータウンやアメーバピグなど、人気のソーシャルゲームが多数あります。しかし、これらはFlashベースで展開されているので、その市場をSilverlightで取り込めるかという課題はありますが。
越川 Silverlightでも、PCとWindows phoneのどちらでも動きますから、そこ(ソーシャルゲーム市場)へのアプローチはしっかりとやっていきたい。さらに我々にはXbox 360もあります。
これは私見ですが、今後、ビジネスがさらに成長するエンターテインメントコンテンツは「ソーシャルゲーム」だと考えています。実際、Facebookゲームなどでは3スクリーン展開のデモンストレーションなどを行っています。
―― これはモバイルに限らないのですが、ソーシャルゲームは利用ユーザー層が幅広く、若い女性ユーザーが多いという強みがある。この市場がスマートフォンとどう結びつくかは、注目と言えそうですね。
―― Windows Phone 7は今後、アメリカから日本と発売されることになりますが、このローンチにどのような姿勢で臨むのでしょうか。
越川 重要なのは「グローカル」だと考えています。海外で使われているからといって、グローバルなものをそのまま日本に持ってきても通用しない。今後のテーマは、グローバルとローカルの融合だと考えています。Windows Phone 7は欧米で発売された後に日本に投入されますが、そこでも“海外のWindows Phone 7”をそのまま日本に持ってくるつもりはありません。日本のユーザーの皆さまに使いやすいと感じていただけるものにしていきたい。
―― 日本市場の声をしっかりと反映したものにしていく、というわけですね。
越川 ええ。そのために日本のパートナー企業の方々だけでなく、ユーザーの声にもしっかり耳を傾けていきたい。ユーザーの皆さまとの対話においてはTwitterがとても役立っており、日本のWindows phoneのハッシュタグ「#wpjp」には小まめに目を通すようにしています。すべてにコメントは返せませんが、ぜひ(#wpjpで)ITmedia読者の方々からもメッセージをいただければと思います。
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