ビジネスソリューションから見る、iPhone活用のミライiPhoneとビジネスのミライ(2/2 ページ)

» 2010年06月09日 11時00分 公開
[手塚康夫(ジェナ),ITmedia]
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販促資料から社員教育の教材まで――企業導入が進む「Handbook」

Photo インフォテリア 執行役員 スマートソフトウェアビジネス部部長の穴沢悦子氏

 iPhone向けコンテンツの作成・配信に必要なソリューションと、コンテンツを閲覧するためのビューアをパッケージで提供する「Handbook」の開発・販売を手がけるのがインフォテリアだ。このソリューションは、iPhone 3GSを1400台導入したアイエスエフネットや、iPhone 3Gを550台導入した青山学院大学など、多くの採用実績がある。

 Handbookの特徴や利用シーン、配布コンテンツの開発環境、導入コストについて、同社スマートソフトウェアビジネス部 部長の穴沢悦子氏に聞いた。

ITmedia(聞き手:手塚康夫) コンテンツとひとことでいっても、さまざまなものがあります。Handbookではどんなコンテンツを配信できるのでしょうか。また、既存のExcelやWord、PDFなどの資料を変換して配付することができるのでしょうか。

穴沢氏 Handbookで配信できるコンテンツは、リッチテキスト、画像、動画、PPT、Excel、PDF、クイズ、試験、アンケートです。これらを自由に組み合わせてレイアウトしたiPhoneコンテンツを簡単に作成できるわけです。なお、PPT、Excel、PDFは添付ファイルとして配信されます。

ITmedia コンテンツ作成ツールは、グラフィック系ツールを扱った経験のない人でも使えるのでしょうか。

穴沢氏 コンテンツ作成ツールの「Handbook Studio」は、ブログを作成するような簡単なインタフェースであり、WordやExcelを利用できる人なら、グラフィック系ツールを扱った経験のない人でも十分使いこなせると思います。実際に利用している方も、ほとんどがグラフィック系ツールの未経験者です。

ITmedia 企業内の社員や大学の学生など、限られた相手に向けた配信はできますか。また、その際にセキュリティは保たれているのでしょうか。

穴沢氏 Handbookは、コンテンツ閲覧用のiPhoneアプリケーションをApp Storeから無料でダウンロードでき、「Handbook」と「Handbookグループ版(Handbook G)」の2種類のアプリを用意しています。前者はコンテンツの公開対象を限定しないオープンなアプリケーション、後者はユーザー認証により公開対象を限定する企業向けのクローズドなアプリケーションです。

 通信にはSSLを使っています。また、仮にiPhoneを紛失した場合でも、Handbookグループ版(Handbook G)では、サーバ側から紛失者のユーザーIDを削除することで、動画や添付ファイルなどを含む一切のHandbookコンテンツを参照できないようにすることが可能です。

ITmedia 大学や企業では、どのように使われていますか。

穴沢氏 Handbookをリリースした当初は、大学における導入が中心でした。大学のiPhone活用事例としては、青山学院大学の社会情報学部がすべての学生向けに、約550台のiPhoneを導入したことが大きなニュースになりましたが、Handbookは同学部でも2009年10月から講義資料の配信に使われています。

 企業におけるHandbookの利用ニーズで多いのは、社内情報の配信です。PDFやPowerPoint、Excelで作成された社内資料を外出時にiPhoneから参照できるようになり、これが業務効率を格段に向上させます。ユーザー認証に対応するHandbookグループ版であれば、社内の特定ユーザーのみの閲覧が可能になり、企業向けセキュリティ機能も充実しているので、セキュアな環境で利用できます。

Photo 社内情報の配信利用イメージ

穴沢氏 企業導入の具体的な事例としては、アイエスエフネットの案件があります。iPhoneとHandbookの導入により、顧客先に常駐する約1000人の社員が、社内情報や研修資料を常駐先でも閲覧できるようになりました。

 次いで多いのが、製品紹介ツールとしての活用です。iPhoneでお客様に、会社案内や製品資料、製品紹介や自社CMの動画を見せたりするのに使われています。試験の出題や採点機能、アンケート機能などを社員研修に活用する事例も多いですね。

Photo 「製品/サービス紹介ツール」としての利用イメージ
Photo 社員研修での利用イメージ

ITmedia 大規模導入で採用されることが多いようですが、導入と運用にかかるコストはどの程度なのでしょうか。中小規模の企業が導入するメリットはありますか。

穴沢氏 SaaS版とライセンス版の2種類のモデルを用意していますので、小規模で導入される場合には、SaaS版をご利用いただくとよいと思います。利用人数が500人までなら、サーバ利用量500Mバイトまで、年間21万円でご利用いただけます。

ITmedia iPadへの対応で、Handbookの活用シーンはどのような形で拡大すると考えますか。

穴沢氏 すでにiPadでのご利用検討のお問い合わせを多数いただいています。iPhoneが移動中や外出先で使われるケースが多かったのに対し、iPadは学内や店内、社内での利用を検討されているお客様が多いようです。また、iPhoneは学生や社員が閲覧するという用途が多かったのですが、iPadは顧客に紹介するコンテンツの作成に利用したいというニーズが多いように思います。

ITmedia 今後のHandbookの進化の方向性は。

穴沢氏 今後Handbookはコンテンツ課金などもできるようになっていきますし、さらなるUIの改良や機能追加も予定しています。Android版の投入でマルチキャリア対応を進め、より多くの方々に使っていただける環境を用意したいですね。

iPhoneソリューション市場は群雄割拠の時代へ

 筆者が代表を務めるジェナではiPhoneに対応したソリューションを「iPhone Business Paradise」というビジネスユーザー向けのポータルサイトで紹介している。2010年に入ってからは、導入に関する問い合わせはもちろん、ソリューションの開発元からの情報掲載依頼も増えている。

 iPhone Business Paradiseに掲載されているソリューションの一部と、代表的なiPhone対応ソリューションをまとめたのが次の表だ。

カテゴリー ソリューション名 開発元/提供元
グループウェア Microsoft Exchange マイクロソフト
Lotus Notes/Domino IBM
サイボウズ リモートサービス サイボウズ
desknet’s ネオジャパン
SFA/CRM Salesforce CRM セールスフォース・ドットコム
顧客創造日報 NIコンサルティング
クロネコ名刺Plus ヤマトシステム開発
Link Knowledge 三三
セキュリティ BizReisen イノス
WisePoint ファルコンシステムコンサルティング
PassLogic パスロジ
コンテンツ配信 Handbook インフォテリア
CorporateCAST リミックスポイント
コミュニケーション uniConnect エス・アンド・アイ
Lotus Connections IBM

 iPhoneアプリケーションの市場と同様、iPhoneソリューションの市場も大きな伸びを見せており、iPhone 3GSが登場した2009年6月頃から対応ソリューションの数は飛躍的に増加している。

 2010年4月にはサイボウズが、iPhone 3GSを販売するソフトバンクモバイルとの提携と「かんたんSaaS」のiPhone対応を発表しており、今後もiPhoneに対応するソリューションがさまざまな企業からリリースされるであろうことは疑う余地がない。

 iPhoneを取り巻く環境は今後も、iOS 4のリリースやiPhone 4の発売により、めざましいスピードで変化し続ける。その中でiPhone向けソリューションも進化し続け、法人市場に新たな可能性をもたらすことは間違いないだろう。

プロフィール:手塚康夫

株式会社ジェナ代表取締役社長。慶応義塾大学環境情報学部在学中より複数のモバイル関連ベンチャーに参画し、2006年に株式会社ジェナを設立。創業時より法人向けモバイルソリューションに特化したコンサルティング事業を展開。2009年に法人向けiPhone総合サービスを開始し、iPhoneビジネス活用ポータル「iPhone Business Paradise」の中の人として法人向けiPhone市場の開拓に日々励む。Twitterアカウントは @iphone_business 、OneTopiのトピック「iPhoneビジネス」のキュレータも務める。



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