その上で大企業向けの法人市場を見ますと、我々がこれから大きく成長するところとして、『自動車』『流通・物流』『金融・保険』の3つの業界を重視しています。
ITmedia どの業界も、ここ最近の動きが活発化していますね。例えば、自動車業界では日産自動車のEV(電気自動車)「リーフ」がテレマティクス標準装備で、通信モジュールを内蔵していました。
真藤氏 ええ、自動車業界は一気に動き始めましたね。昨年はまったくダメで、なかなかうまくいかなかったのですが(苦笑)。今年に入ってからはクルマに通信モジュールを搭載するという動きが拡大しており、今後さらに成長しそうです。
また流通業界、物流業界ではバーコードリーダー付きハンディターミナルへの3Gモジュール内蔵の動きが広がってきています。この業界では業務効率向上やコスト削減ニーズが高く、着実に(モバイルソリューションの)市場が拡大しています。
金融・保険業では、社外でのコンサルティング業務でのニーズが高くなっていますね。ここではセールススタッフの業務支援と高度なセキュリティ管理との両立が重要ですので、そういったソリューションも含めたモバイルサービスが必要です。
ITmedia 金融・保険分野は業法改正などもあって商品説明が増えていますし、ノートPCやスマートフォンなどをシンクライアントとして使うケースが増えてますね。
真藤氏 私はiPadのようなタブレット型端末も、この市場には向いていると考えています。たとえ3Gモジュール内蔵でなくても、iPadなどのタブレット型端末はWi-Fi機能を内蔵しており、ドコモのモバイルWi-Fiルーターと組み合わせて使うことができますから。我々としては、そういった提案も積極的にしていきたい。
あと、金融・保険業でのモバイルソリューションでは外部機器連携も重要ですね。例えばモバイルプリンターやスキャナーなどが必要なことが多いので、Bluetoothで連携する周辺機器も今後は取りそろえていきたいと考えています。
ITmedia なるほど。金融・保険業のニーズにきめ細かく対応していくわけですね。
真藤氏 ええ。特に今後は地銀・信金など地元密着の金融機関がモバイルITソリューションを積極的に導入しなければならない時期になります。その際には現場のニーズにしっかりと対応したソリューションを、トータルで提供する体制がとても大切です。
ITmedia 2010年に入ってから、コンシューマー市場ではスマートフォンの存在感が強くなっています。法人市場においてはいかがでしょうか。
真藤氏 昨年までですと、法人市場におけるスマートフォンの需要は、BlackBerry以外はほとんどないという状況でした。
ITmedia BlackBerryは需要があった、と。
真藤氏 ええ。BlackBerryは外資系企業や国内のグローバル企業を中心に根強いニーズがあります。特にBlackBerryのセキュリティ機能の信頼性や柔軟性は企業ユーザーのニーズにあっています。ただ日本企業の情報システム部はセキュリティポリシーの関係からこういったモバイルソリューションの導入にまだ慎重に考えているところもありまして、スマートフォンの中ではうまくいっていますけれども、数としてはまだ数万台のレベルであり、もっと利用が伸びても良いと思いますし、事実、ここにきて導入検討をする企業が増えてきております。
ITmedia 法人市場でのスマートフォンの普及は、ハードルが高いのでしょうか。
真藤氏 いいえ、ここにきて注目されてきています。特に風向きが変わったのがiPadの登場がきっかけではないかと思いますが、この端末に対する法人ユーザーの関心度はとても高い。特に金融業界の方は、お客様への情報提供やコミュニケーションのツールとして、タブレット型端末は有用だと見ていらっしゃいます。
ITmedia 法人市場では従来型のスマートフォンより、iPadのようなタブレット型端末の方が注目ということですね。
真藤氏 その通りです。法人ユーザーが注目しているのは、他のスマートフォンやiPhoneというよりむしろiPadになっているように思います。残念ながら、iPadはドコモが直接扱っていませんが、iPadのWi-Fi版とドコモの回線やソリューションを組み合わせた提案はすでに行っています(笑)
ITmedia 今はiPadが注目とのことですが、Androidへの注目度や期待感はいかがでしょうか。Androidは今はまだスマートフォン向けですが、将来的にはタブレット型端末への展開も行われる模様ですが。
真藤氏 将来的にはAndroidの重要性は増すと考えています。特に大企業向けのソリューションでは、ASPサービスの利用だけでなく、かなり作り込まれた業務支援用ソリューションが前提になります。今のAppleのように垂直統合型の環境では、そういった端末/ソフトウェアまで踏み込んだカスタマイズが難しい。ですから、企業でのモバイルソリューション利用が高度化するほど、(iPhone/iPadではなく)Androidの方が使いやすいということになるでしょう。
ITmedia 2010年以降、法人市場はどのように変化していくのでしょうか。
真藤氏 まず市場環境で見れば、法人市場は一時の停滞期を越えて、再び成長フェーズに入っています。法人ユーザーが業務効率の向上や売り上げ拡大のために積極的にモバイルの活用を考え始めています。大企業向けのモバイルソリューションから、中堅・中小企業向けのASPサービスまで、法人市場全体の需要は伸びていくでしょう。
個別分野で見ますと、スマートフォンに注目ですね。iPhoneやiPadが象徴的ですが、直感的に誰でも使える端末が登場したことで、スマートフォン分野は今後急速に成長・進化していくでしょう。法人市場でもiPadが注目されているように、使いやすいスマートフォンやタブレット型端末の市場は伸びると考えています。
もちろん、こうした市場環境の変化や端末の進化にあわせて、キャリアが提供するサービスやソリューションも進化します。我々ドコモでも、今年は今まで準備してきた法人向けの新サービスを投入していく予定です。2010年は「法人市場が面白い」。そんな年になるでしょう。
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