音声とデータの収入反転は「2年間は無理」と小野寺氏――KDDI決算発表

» 2010年07月23日 21時06分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 決算発表には同社代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が登壇した

 KDDIは7月23日、2011年3月期の第1四半期決算を発表した。同社の業績は増収減益。端末販売収入や固定通信事業のグループ会社収益の増加が後押しし、売上高は前年比1.4%増の8660億円となった一方、端末販売原価や周波数再編に伴う営業費用などが増加し、営業利益は前年比8.8%減の1293億円となった。

データARPU向上の鍵は「すそ野の拡大」 音声ARPUとの反転は「2年間は無理」

 移動体通信事業のみの業績は、売上高が前年比0.1%増の6637億円、営業利益が前年比12.6%減の1333億円となった。減益の要因の1つはARPUの減少。データARPUは前年比2.2%増の2300円となったものの、基本使用料が安価になるシンプルコースの移行が進んだことで音声ARPU(音声通話料+基本使用料)が前年比14.6%減の2860円となった。

photophoto ARPUの推移(写真=左)と、シンプルコースの契約率(写真=右)

 シンプルコースの契約率は6月末時点で49%と全体の約半分となり、2011年3月末には68%にまで拡大する見込み。同社の小野寺正社長は、音声ARPUの低下は来年度に入っても継続すると話す。「シンプルコースの契約率は最終的には80〜90%にまで拡大すると考えている。それまでは音声ARPUは黙っていても下がり続ける」(小野寺氏)

 音声ARPUの減少は業界全体が直面している課題であり、これを補うものとして各社はデータARPUの拡大に取り組んでいる。拡大の鍵として、インターネットと親和性の高いスマートフォンに注目する向きもあるが、小野寺氏は「普及率でいえばまだまだ」と、現時点ではデータARPU向上には大きく寄与しないとの見方を示した。

 小野寺氏はデータARPUを上げるために「ローエンド、ミドルクラスのお客様にどうやってデータ通信を使っていただくかが重要」と話す。「すそ野を広げないとデータARPUは上がらない。そのためにはそういったお客様に適したアプリやコンテンツを用意する必要がある。例えばau Smart Sportsの提供を契機に、データ通信を使っていただけるケースもある」(小野寺氏)

 なお、他社のデータARPUと音声ARPUの収入の比率を見ると、ソフトバンクモバイルはデータARPUが音声ARPUを上回っており、NTTドコモも2010年度中にデータARPUが音声ARPUを逆転すると予想している。小野寺氏は、同社のデータARPUが音声ARPUを上回る時期について、「今のペースでいけば2年間は反転は無理」との予測を述べた。また、反転が他社より遅れる理由として、シンプルコースの導入時期が他社の類似サービスより遅いことを挙げた。同社がシンプルコースを始めたのは2007年11月だが、分割払いに対応したのは2008年6月。一方、ソフトバンクモバイルのスーパーボーナスは2006年9月に、ドコモのバリューコースは2007年11月に開始されている。

 そのほか小野寺氏は、現状ではデータARPUの増加分が音声ARPUの減少を補いきれていない点にも触れた。第1四半期で5160円だった総合ARPUは、通期では5010円に減少する見込み。一方で、「コンテンツメディアは20%以上の年率で伸びている」と、トラフィックに依存しない事業収入の拡大を強調した。

トライバンド対応端末への移行 「今のペースか、もう少し上げる必要がある」

photo 販売手数料の推移

 ARPUの減少が止まらない状況に対応するため、同社は端末の販売手数料の削減に取り組んでいる。前年の第1四半期では4万1000円だった販売手数料平均単価は今回、2万7000円と大幅に減少した。しかし、周波数再編に伴ってトライバンド対応端末への移行を進めていることが影響し、端末販売台数が前年比27%増加。これにより、手数料の総額が増えたことも、減益の要因と小野寺氏は説明した。

 トライバンドに対応しない旧端末は2012年7月に利用できなくなる予定。第1四半期におけるトライバンド端末への移行数は98万台で、非トライバンド端末は残り769万台となった。移行のペースについて小野寺氏は「今のペースか、もう少し上げる必要がある」と話し、今後の移行促進の施策については、「これまで、アナログを止めたとき、PDCを止めたとき、1.5Gを止めたときといった、過去と同じようなことをやるだろう」とコメントした。

photo 設備投資について。新800MHz帯への設備投資が大きい

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