ネットの大海原に出るための「再定義」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略(後編)神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

» 2011年05月13日 16時13分 公開
[神尾寿,ITmedia]
photo 伊倉氏

 今怖いのは、「Winner Takes All」なんですよ。だってGoogleの検索サービスは絶大ですし、ポータルサイトの「Yahoo! Japan」も独り勝ちです。Twitterにせよ、Facebookにせよ、薄利の領域になるので、いったん規模を確保されると勝負するのが難しくなる。

神尾氏 ドコモの立場からすると、従来はコンテンツ市場が盛り上がっていて、有料コンテンツが何千億円規模であったということは、それだけの手数料収入があったわけですよね。無料化が進むと有料の市場規模が小さくなって、手数料収入も減ってしまうんじゃないでしょうか。

伊倉氏 今のやり方を続けていたらそうです。月額課金をたくさんのユーザーが使ってくれる、というモデルでずっと行くのは難しいと私は思っています。

 例えばドコモマーケットでは、Android Marketと差異化するために、プレミア感のあるものを集中して集めていく、あるいは独占期間を持たせるといったことで、「買いたい」という気持ちを起こさせるような努力をしていかなければいけない。

 例えば、今ものすごく努力をされているのは、“モバゲー”や“グリー”ですね。無料ゲームですが、アイテム課金だから実は全然タダじゃない(笑)。あれは当たらないとまったくダメで、ものすごく浮き沈みが激しくなるかもしれないけど、一方でゲームであんなに効率よくお金を稼ぐ会社はこれまでいなかったはずです。モバイルコンテンツ市場全体が大きく変わって、むしろコンテンツ市場は活性化すると私は思っています。

“1人複数台”時代の料金

神尾氏 大容量コンテンツやマルチスクリーンタイトルは、認証・課金の部分をドコモ経由にしてしまえば、グロスでみたときの市場規模は大きくなりますね。

伊倉氏 これからドコモもすべてを見直していかなくてはいけないんですが、固定電話の時には1家族1台で料金設計をして、従量制だったんですね。ケータイになると、1人1台です。ここにきて、電話は1人1台かもしれないけど、タブレットやスマートフォンでマルチデバイス化して、1人複数台になるわけです。そうすると、1人複数台に対してどういう料金を適用するのか、どういうコンテンツを展開するのか、どういうふうな認証方式にするのかを考える必要がある。

神尾氏 そうすると総量は増えますよね。ただし、単価ベースでの料金設計を誤ると、市場の芽を潰す結果になる可能性もある。個々の料金体系におけるバランス設計がとても難しい時代に入っていますね。

伊倉氏 そのとおりです。総量としては増えるような設計図です。料金や手数料なんかも含めて全部設計していかなくてはいけない。

神尾氏 タブレットは料金設計も含めて、まだまだドコモユーザーが普通にスマートフォンと併用するには若干お高いといいますか(笑)、料金設計的には一般ユーザーにとって使いにくい。このあたりは改善されるのでしょうか。

伊倉氏 内緒です(笑)。だけど、やっぱり数を限定するなど上手く工夫して、2台目や3台目を持てるような、例えばケータイとカーナビとフォトフレームとタブレットを持てるような料金をやっていかないといけない。

神尾氏 マルチデバイス料金は欲しいですね。UQコミュニケーションズでは、1台のデータ端末に、追加料金でWiMAX内蔵パソコンの利用ができるというプランをやっていました。あれもいいと思いますし、例えばモバイルWi-Fiルーターに6台までぶらさがれるのだから、せめて3台くらいまでは1アカウントのデータ通信料金の中に、ちょっとした追加料金で収めてもらえると、マルチデバイス時代に対応できると思います。

photo 2月24日の発表会で「Optimus Pad L-06C」を紹介する山田社長。同モデルはspモードに加入していればテザリングを利用できる

伊倉氏 まあ、できるところからですね。やっぱり実験しながらやらないと。料金プランは一度決めると、戻せませんから。「Optimus Pad」も、どうするんだという話になったんです。でも、モバイルWi-Fiルーターにディスプレイがついて大きくなっただけ。データプランだし、料金はこれでいいんじゃないか、もともと音声通話機能が入ってないし、ということで、やってみるかという感じなんですよ。

 中には「なんでドコモが自ら飛び込むんだ」という声もありますが、時代の流れだから、まずはやってみようということです。

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