「App Storeはほとんど死んだ」――UEI清水氏らが考えるスマホ時代の稼ぎ方(2/2 ページ)

» 2011年06月14日 13時37分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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UEIの戦略は「ソリューション」と「ゲーミフィケーション」

 こうした中で、同社はアプリビジネスをどのような戦略で展開しているのか――。清水氏は「ソリューション」「ゲーミフィケーション」という2つのキーワードを掲げ、戦略を説明した。

 ブランディングや自社製品の販促などを目的に、独自アプリの開発を検討する企業は少なくない。同社は研究開発のノウハウを生かしながら、企業のニーズに応えるアプリの開発やミドルウェアの提供を行っている。

 例えば、経済産業省の実証実験と連携して提供したARアプリのノウハウを生かし、オリックス自動車のカーシェアリングアプリを開発。ARの目新しさもあって、カーシェアリングの会員登録が2倍に伸びるなどの効果が出たという。その後、ARアプリ開発ミドルウェア「ARider」をリリースし、みずほ銀行のアプリに採用された。


photophoto オリックス自動車のカーシェアリングアプリとみずほ銀行のアプリ

 「スマートフォン向けソリューションはこれからもっと活躍していく。フィーチャーフォンより自由度が高く、Androidではホームスクリーンなども変えられる。企業内で閉じたサービスなど、B2Bのソリューションもこれからどんどん出てくるのではないか」(清水氏)

 もう1つの戦略はゲーミフィケーション。端的に言えば「なんでもゲーム化する」ことだという。これは、サービスにゲーム性を持たせることで利用者のモチベーションを高め、参加度を高めていく発想だ。その1例として、清水氏は電通と企画した「BANG 100 MILLION MINES」というアプリのアイデアを紹介した。

 清水氏によれば、同アプリは“社会貢献をゲーミフィケーション”したものだという。一種の位置ゲーであり、日本中にバーチャルな地雷を1億個配置し、プレーヤーがそれを除去するのだが、この地雷除去と連動してカンボジアに存在する現実の地雷も除去されるという、マッチングギフトのような仕組みが想定されている。ソーシャルゲームが「お金を払ったことがむなしくなる。空中に消えていく」のに対し、清水氏は「自分が遊んだ分だけ地雷が除去されるのなら、こんなに達成感のあることはない」と、企画の実現に期待を込める。

photo 投稿サイトでは参加度に応じてバッジがもらえる

 さらに、若手プログラマ育成を目指したゲーム開発コンテンスト「9leap」では、“ゲーム開発自体のゲーミフィケーション”にも着手した。アプリを公開しているコンテストサイトに、アプリの投稿回数や評価回数、プレイ回数などによってユーザーの称号が変化するといったゲーム要素を組み込み、コミュニティーの活性化を狙っている。「ゲームを作るのは面倒でモチベーションがいる。そこでゲーミフィケーションを取り入れた」(清水氏)。

 HTML5/JavaScriptベースで扱いの簡単なゲーム開発エンジン「enchant.js」の無料公開と併せて同企画は開始され、1カ月強で170本以上のアプリが公開された。「人が集まるところ、特に作り手が集まるところでは何らかのビジネスができると思っている」と、今後のビジネス発展を模索している。

クウジットが考えるローカルグラフ活用

photo クウジットの三屋氏

 近年はソーシャルグラフを活用したサービスに注目が集まっているが、スマートフォン時代にはユーザーの位置や状態から導きだされる“ローカルグラフ”を使ったサービスやメディアが生まれる――。クウジットの三屋氏はそう話す。

 クウジットは、Wi-Fiを活用した位置推定ソリューション「PlaceEngine」や、「KART」「CyberCode」といったAR技術を使ったアプリなどを提供している企業。社名は「空」と「実」の組み合わせに由来し、リアルとバーチャルを融合する技術やサービスに強みを持つ。

 同社にとってスマートフォンは、目指すサービスを実現するのに最適なツールだ。スマートフォンはGPSなど各種センサーを備えていることはもちろん、アプリを常時起動できる特徴がある。端末のセンサー情報を必要なときに読み取り、解析することで、ユーザーがどこにいるか、同じ場所に誰がいるか、その場所で何をしているのかといったコンテキストに合ったコンテンツやサービスを提供できるようになる。

 同社では、行動記録・解析ソリューションとして「KRM(Koozyt Reality Mining)」を開発。独自の行動ロガーで取得した、GPSやPlaceEngineによる位置情報、加速度センサーなどのデータを解析することで、「どこで買い物をした」「どこで休憩をした」といったユーザーの行動履歴が推測できるようになるという。こうしたデータを生かせば、あるエリアで買い物を頻繁にするユーザーにターゲティング広告を展開するといったことが可能になる。


photophoto スマートフォンの特徴を生かしてユーザーのコンテキストを把握し、サービスを展開する

 Facebookが場所にひもづいたクーポンサービス「Facebookチェックインクーポン」を開始するなど、位置情報とひもづいたサービスの注目度は年々高まっている。一方で、モバイル端末のセンサーで収集できるコンテキスト情報は膨大にあり、これらをどんなアルゴリズムでコンテンツやサービスと結びつけるかは各社が手探りの状態と三屋氏はみる。だからこそ「ビジネスチャンスがある」と、三屋氏は今後のサービス展開に期待を込めた。

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