ITで築く「学習の高速道路」――“定額見放題”のネット授業、iPhone/iPadでより便利に教育改革、塾で着々(3/3 ページ)

» 2011年07月20日 10時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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ITによる教育改革は“コンテンツがあってこそ”

 ITの進化やスマートデバイスの登場で、人の暮らしや仕事の仕方は大きく変わろうとしている。しかし、教育分野のIT活用は手探りの状態が続いており、大きな進展が見られないのが現状だ。

 IT化が進まない理由の1つとして坂木氏が指摘するのが、“コンテンツ作りと共有の仕組みが確立していない”点だ。学校への電子黒板の導入が検討され始めているが、“そこに何を映し出すのか”“電子黒板を生かしたコンテンツを先生が作れるのか”といった点について、きちんとした方針を定めておかないと、導入はうまくいかないと予測する。

 「電子黒板向けのコンテンツは作るのに本当に手間がかかり、よほど熱心な先生じゃないと作れない。それだけ手がかかるものを、授業以外に学校の行事やクラブ活動にも関わっている忙しい先生方が作れないのは仕方がない」(坂木氏)

 こうした問題を解消するためにも、教師が作成した全国のコンテンツをアーカイブする仕組みや、コンテンツを共有するための仕組みが必要なのではないかというのが坂木氏の考えだ。

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 「全国規模でみたら、電子黒板向けの教材をつくるのが得意な先生もいるはず。そういう先生が作った教材を全国のどの学校でも使えるようにすれば、効率のよい授業ができるようになるのではないか。効率化した時間は、よりよい授業の開発や、生徒とのコミュニケーションに充てるべき」(坂木氏)

 坂木氏が理想とするのは、まず生徒に問題を解かせて、「なぜその解答を選んだのか」「どの単語が分からなかったのか」「なぜ、その単語をそう解釈したか」といったやりとりを繰り返す授業だという。こうやって生徒の苦手な部分を洗い出し、直していくことで、驚くほど成績が伸びるそうだ。「録画コンテンツでできないのは、この対面の部分。効率化によってできた時間で、生徒とのやりとりをもっと手厚くするべきだと思う」(坂木氏)

 学校と違って教室を持たないベリタスでも、ITを活用した対面授業の実現方法を模索しており、その一環として、普段は録画で提供している授業をリアルタイムでストリーミング配信する「公開授業」を定期的に実施している。

 Ustreamで配信する公開授業には全国300人超の生徒が参加し、生徒と講師は授業の合間にTwitterでやりとりする。その内容は、おすすめの学習法から部活の話までさまざまだ。全国各地の生徒たちは、授業とコミュニケーションの場を共有することで互いに刺激を受け、モチベーションが上がるという。

 こうした授業ができるようになったのも、ITを取り巻く環境が進化したからこそだと坂木氏。「こうしているうちにも、デバイスがどんどん進化する。教育改革でやることはたくさんある」(同)。

Photo Ustreamを利用した公開授業の様子。坂木氏は授業をしながら生徒からのTwitterに目を通し、コミュニケーションを図る。授業のあとには質問タイムを設け、TwitterやSkypeで受け付けた質問に答えていた

これからの先生にはITの知識が必要

 これからの教師には、ITのスキルやリテラシーが求められる――。これは坂木氏の実体験から出た言葉だ。

 教育のIT化が進むと、“教育のどこをどのようにIT化すべきか”を考える必要がでてくる。また、新技術やサービスが次々と登場する中、それらをどのように教育に生かすかを考えることも重要で、こうしたときに、教育、ITのどちらかに偏った知識だけでは、よりよい方法を考えるのが難しいという。

 「教えるのが上手な先生であってもIT知識がないとだめ。逆にIT知識があっても教えるのが下手な先生、今の教育に対して問題意識が少ない先生はだめ。アナログ教育の欠点を見つけ、その欠点をITで解決するという視点が大切なので、教育的視点とITスキルを兼ね備えた人材が必要になってくる」(坂木氏)

 坂木氏は、eラーニングの配信プラットフォームを手がけるキバンインターナショナルと組むことで、技術やサービスに学ぶ機会を得て、アイデアを形にしやすくなったと振り返り、「先生のITスキルやITリテラシーの向上は急務」と強調した。



photo センター英語・第2問満点(iPad版)
photo センター英語・第2問満点(iPhone版)

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