国内IT市場の拡大、スマートフォンがけん引――IDC Japan調査リポート

» 2011年10月26日 16時53分 公開
[佐々木千之,ITmedia]

 IDC Japanは10月25日、国内製品別IT市場予測(10月時点)を発表したが、スマートフォンが国内IT市場に大きな影響を与えていることを示すものになった。この予測は同社が四半期ごとに行っているもので、2011年4〜6月実績と最新の景気動向に基づいて2011〜2015年の市場を予測している。

 2011年の国内IT市場は、東日本大震災やその後の電力不足、円高などの影響で、前年比マイナス1.6%の成長率となる12兆4797億円規模になる見込み。IT市場を3つに分けると、ITサービス市場が4兆8368億円(前年比成長率マイナス2.1%)、パッケージソフトウェア市場が2兆1493億円(前年比成長率マイナス6.5%)となったのに対し、ハードウェア市場はスマートフォンの急速な普及とスーパーコンピュータ「京」の出荷により5兆4936億円(前年比成長率1.0%)と伸びた。

Photo 国内IT市場の規模と成長率の予測

 スマートフォン市場は2010年に市場規模8858億円(約2000万台)であったものが、2011年は1兆1915億円(約2700万台)と34.5%もの急成長を遂げた。ワールドワイド市場でもスマートフォンの伸びは顕著で、4割程の高い伸びを示しているという。なお、2011年のタブレット/電子書籍端末市場は前年比で110%以上も伸びたが、もともとの金額が小さいため市場への影響は小さいとしている。

※注:IDCのスマートフォンの定義では、iOS/Android携帯のほかにLinux/Symbian搭載のiモード端末を含んでいる。

Photo 2011年ハードウェア市場の製品別成長率。タブレット/電子書籍端末市場の伸びが大きいが、これは2010年の市場規模が小さかったため

国内通信サービス市場、データ通信の伸びでプラス成長に

Photo IDC JapanグループでITスペンディング/ソフトウェア&セキュリティ部門のディレクターを務める和田英穂氏

 2012年には、国内IT市場全体が12兆8307億円で前年比成長率2.8%で、プラスに転じると予測する。この要因として、IDC JapanグループでITスペンディング/ソフトウェア&セキュリティ部門のディレクターを務める和田英穂氏は、スマートフォンとITサービスの伸びを挙げた。

 特にスマートフォンは市場規模1兆4013億円に達する見込みで、2011年比の成長率は17.6%と2桁台になると予測する。日本のスマートフォン市場は通信キャリア各社が相次いで新端末を投入しているほか、iPhoneの提供キャリアにKDDIが加わったことなどで活況を呈しており、和田氏はITベンダーにとっても事業拡大のチャンスが到来していると指摘し、「いかにアプリやモバイルソリューション、クラウドサービスなどに取り組み、スマートフォンの市場拡大を自社の事業拡大に結びつけることができるかが問われている」(和田氏)とした。

 2011年に急成長を遂げたタブレット市場は、2012年には前年比10%台の成長率に落ち着く見込みだ。現時点でスマートフォンとタブレットの大部分は個人向けに売れており、企業向けは1割程度にとどまっているが、徐々に拡大する見通しという。

 また和田氏は国内通信サービスの市場予測についても示した。2008年以降、固定向け音声サービスとモバイル向け音声サービスの市場縮小に伴って市場全体がマイナス成長になっていたが、2011年はデータ通信サービス市場の伸びが音声サービス市場の減少分を上回ったことからプラス成長(市場規模11兆250億円、前年比0.5%のプラス成長)に転じると見ている。2012年もこの傾向は続き、市場規模11兆1816億円で前年比1.4%の成長になると予測している。

Photo 国内通信サービス市場の実績と予測。データ通信の伸びにより市場全体は2010年を底にプラス成長に

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