2012年は“一般ユーザーのスマホ元年”――MTIに聞く、コンテンツ対応の“はずせないポイント”(3/3 ページ)

» 2012年02月21日 09時30分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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―― 自社でツールを開発したと。どんな点に配慮して開発したのでしょうか。

小畑氏 設計思想的には短い期間で対応できることと、フィーチャーフォンの事業を継続しながら、経営資源を枯渇させることなくスマホに順次対応できるようにすることを念頭に置き、システムの構成はどうすればいいのか、システムでどこまで吸収すればいいのか、どこまで自動化すべきなのか――というとことを検討しながら開発しました。

 その結果生まれたのが、iモードサイトをスマートフォン向けに自動で最適化する「モバイルコンバート for スマートフォン」(以下、MCSP)というシステムです。

 コンテンツを配信する中継地点にMCSPを入れ、通信はすべてMCSPを経由する形にします。そしてモバイルコンバート側で、どのスマートフォンからリクエストが来たかを判別し、iモードサイトのHTMLをとってきて各端末の画面サイズやOS、ブラウザ、バージョンに最適化したデザインチューニングをリアルタイムで施して出力します。

 サイト側がどんなにミッションクリティカルな仕組みで動いていても、結果的にはHTMLだけのやりとりになるので、iモードの仕組み自体には依存性がないのも特徴の1つです。開発言語も何でもいいし、動的サイトも変換できます。動的サイトは、例えば基幹システムからログインというパラメーターを投げれば、ログイン後の会員データベースとひも付いたページが返ってくるので、それを変換して出力します。

Photo モバイルコンバート for スマートフォンを利用したサイトの変換イメージ

―― そのシステムを販売することになったわけですね。販売に至るまでの経緯を教えてください。

小畑氏 エムティーアイが運営する60ブランドのサイトは、ツールやEコマース、コンテンツ配信までさまざまなものがあります。こうした多岐にわたる分野のサイトを自動で変換するのに、我々自身が直面したリアルな課題を解決しながら開発しているので、ユーザー視点のシステムになっているのです。

 自社のサイトに、本当に必要な機能やパフォーマンスを自分たちで測りながら設計したというのは、大きな意味があると思います。こうしたユーザー視点の製品であれば、他の企業の方でも使えるのではないかということで、ASPサービスとしての提供を開始しました。

 すでにあるフィーチャーフォンサイトをスマートフォン向けに自動変換するASPサービスなので、基幹システムに手を入れずに対応できます。既存のシステム資産を生かしながら、膨大な開発を行うことなくスマホサイトをスピーディに展開できるのが特徴といえるでしょう。

 スマートフォンらしさをサイトに盛り込む支援もしています。縦に長いフィーチャーフォン向けサイトをタブ分けして見やすくするパーツや、タップするとメニューが開くアコーディオンメニューを実装するパーツ、縦に並んでいるテキストリンクにボタンを割り当てて横に並べるパーツなど、さまざまなものを用意しています。

サイトのリッチ化や解析などの付加価値サービスも

―― ニーズが高いこともあり、ライバル製品も多数登場しています。モバイルコンバートの優位性を教えてください。

小畑氏 単なる変換サービスで終わらせたくないという思いは強いですね。スマートフォンビジネスを展開する会社にとってのマーケティングプラットフォームという位置付けになりたいと思っています。というのも、MCSPは通信の中間地点にいるので、すべての通信が通るハブ基地になります。そこにはさまざまな可能性があるのです。

 例えばサイトに所在地が掲載されている場合、MCSPを通るときに地図情報を付加してスマートフォン側に出力するといったことができます。またどの端末からアクセスしているかが分かるので、その端末に最適化した動画コンテンツを選んで自動ではめ込むようなことも可能です。同じようにしてレコメンド情報も付加できます。

 サイト解析にしても、本来ならiモードサイトのシステムに解析用のビーコンを飛ばすための仕組みを入れる必要がありますが、それをMCSPが飛ばすようにできます。

Photo 動画埋め込みサービスのシステムイメージ
Photo サイト解析支援サービスのシステムイメージ

 もう1つは、サイトに問題があったときの対応です。導入企業のコールセンターに入ったサイトに関わるトラブルの一次エスカレーション先がエムティーアイになっているのです。私たちはフィーチャーフォン時代からの1000台以上の実機端末を持っており、テスト部隊を抱えているので、そこも合わせてサービスとして提供しているのです。

 どの端末でいつ、どんな操作をしたときにどんな問題が起こったかを申告してもらえれば、その問題を我々が調査します。HTMLがMCSPを通ったときに記述ミスがあったかどうかをチェックし、実機でもテストを行って問題点を洗い出してフィードバックします。

 このような仕組みやサービスを実装する際、別々のサービスに加入すると、運用が煩雑になっていく一方です。これをワンストップで提供し、企業の方々が本業に専念できるようにしたいですね。「スマホや携帯の専門家を、パートナーとして安価で手に入れた」と思っていただけるようなサービスにしていきたいと思っています。

―― いよいよ、スマートフォンが本格的な普及期に入ってくるわけですが、企業にとっての商機はどこにあるのでしょうか。

小畑氏 スマートフォンは、フィーチャーフォンに比べてインターネットにアクセスしやすいので、ユーザーがネットに接する機会は格段に増えます。そのため、企業にとっては、ユーザーとの接点を拡大する好機といえるでしょう。

 加えてスマートフォンのほうが、端末としての自由度が増えています。画面サイズが大きくなり、通信速度も高速化していますし、端末性能も上がっている。サイト上での表現もHTML5の時代にはより豊かになっていきます。

 こうした特徴を生かしてユーザーの生活レベルを向上させるサービスを提供することが、商機につながると考えています。

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