“Flash+AIR”でアプリの開発支援、HTML5対応も強化――Adobeのモバイル戦略(2/2 ページ)

» 2012年04月06日 19時40分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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―― モバイル市場でのHTML5の現状をどのように見ていますか?

フォルタ氏 HTML5には2つの利用法がある。1つは、ブラウザ内ですばらしい体験ができるサービス構築すること。ここではアプリストアは不要で、ユーザーはアドレスを入力したり検索したりしてたどり着く。2つ目はアプリを構築してPhoneGAPでパッケージすること。ここではアプリストアが必要になる。

 HTML5を使うと、Webページによるすばらしいユーザー体験が可能になり、アプリがそれほど必要ではなくなってくる。これはすでに起こりつつある傾向だ。ブラウザの性能が向上するのに伴い、本来、アプリよりWebのほうが適していたサービスがWebに戻りつつある。今後、ブラウザや端末、ツールが進化すれば、ますますこの傾向は強くなるだろう。

 中でもツールの進化は重要だ。高度なレイアウト、複雑な遷移(トランジション)やアニメーションなど、アプリでできるようなことをHTML5やCSSでやることは難しく、これを容易にするツールはあまりない。EdgeではHTML5やCSSを使って、リッチでダイナミックなコンテンツを効率よく開発できる。

―― FacebookがモバイルWebの断片化を指摘し、モバイルWeb標準化グループをW3C内に設置したことを発表しました。Adobeも参加しています。

フォルタ氏 モバイル上のブラウザの断片化問題は、デスクトップほど状況は悪くない。デスクトップ向けにはIE 6、IE 7、Opera、Chrome、Firefoxなど多数のブラウザがあるが、モバイルは主としてWebKit、Opera、Chromeの3種にとどまっている。

 最大の問題は“ユーザーが何をしたいのか”だ。1クリックでの支払い、シンプルなログオン、1クリックでの写真アップロードなどがモバイル端末でのニーズであり、デスクトップのニーズとは少し異なる。これを実現するには、システム間が連携してシームレスな体験を提供できることが大切になる。

 PhoneGAPでは、コネクティビティポイントを提供している。これにより、Facebookのシングルサインオンと連携できる。われわれが注力するのは“アプリ開発を容易にする機能を追加していく”ことだ。

“正しいツール、正しいサービス”を迅速に開発者に提供するのが使命

―― モバイル分野での最重要課題は何ですか?

フォルタ氏 モバイル分野は動きが速いので、常に“正しいツール、正しいサービス”を迅速に開発者に提供することを考えている。キーワードは、“選択肢を用意すること”“問題を解決する方法を提供すること”“業界標準の規格に関わること”だ。

 以前は、向こう5年にリリースするバージョンをゆっくり計画できたが、今はそんな時間はない。規模の小さいツールを次々と出してフィードバックを得て、迅速に改善して新しいものを出す――というのが今のスタイルだ。

 また、モバイル環境でクリエイティブな作業を行えるようにするためのツール群「Adobe Touch Apps」も強化する。このシリーズは、MWCの会期中に「Photoshop Touch」のiOS版をリリースしたので合計6種類になった。

Photo タブレット端末で画像編集を行えるPhotoshop Touch
Photo Samsungの「Galaxy Note 10.1」にプリインストールされている

 タブレットは情報を得るための端末として使われることが多いが、われわれはコンテンツの作成にも使われるようになるとみている。Adobe Touch Appsは、写真を加工したり、デザインしたりといったクリエイティブな作業にも使えるだろう。カメラを備え、タッチ操作に対応したタブレットで、“ユーザーが何をしたいのか”を考えたアプリだ。

 すべての中心にあるのは、開発者の創造性を支援することであり、開発者が最高のコンテンツを設計して開発できるようにすることと、コンシューマーが最高のコンテンツを利用できるようにすることに注力している。これは、アプリ、インブラウザ、電子出版、ビデオのすべてにいえることだ。

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