小学生に大人気のタブレット授業、その効果は――白幡小学校の取り組みゲーム感覚で高まる学習意欲(2/2 ページ)

» 2012年11月21日 19時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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ゲーム感覚でやる気がアップ――「英語カルタ」

Photo 読み上げ前の緊張の一瞬

 この10月から6年生向けに導入された「英語カルタ」は、従来、孤独なものだった“単語を覚える”という作業にゲームの要素を取り入れたもの。クラスの仲間と競い合い、楽しみながら英単語を覚えられるのがポイントだ。

 このアプリは、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が持つ英単語関連のデータをKDDIが教材化したもの。タブレット端末から流れる英単語の音声を聞き、それと同じ単語カードをタブレットの画面上から選ぶという単純なゲームだが、カードをタップするまでの時間や、クラスの中の順位が表示されるため、生徒たちのテンションは高い。問題が読み上げられるたびに教室の端々から「勝った、勝った」「やばい、負けた負けた」「1位、だれ?」といった嬌声が上がり、教室は興奮のるつぼだ。

 全員で競うモードだけでなく、クラスの2〜3人をランダムに組み合わせて少人数で対戦するモードを用意するなど飽きさせない工夫も盛り込んでいる。英語が苦手で、単語を覚えられなかったという6年生の伊藤君は、タブレットの授業がきっかけで「競争心が養われ、もうちょっと頑張って単語を覚えてカードを取れるようにしようと思った。学習に役立ちました」と話す。6年生を担当する教師の野田麻衣子氏は、タブレット学習の効果について「ネイティブスピーカーの発音を聞けるのがタブレット端末のいいところ。(ゲーム形式の)競争が学習意欲を高めている」と話している。

Photo 英語カルタは、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の持つデータをKDDIがアプリ化したもの。クラスの順位や対戦成績、回答時間が表示される

 教師に負担をかけないよう、対戦モードの生徒の組み合わせは自動化されており、生徒側の画面に表示される単語カードの候補も、出題した単語のジャンルや難易度でそろえて自動で抽出できるため手間がかからない。こちらも生徒の成績や正解率の低い単語などのデータが見える化され、きめ細かい対応が可能だ。

Photo 教師側の画面。生徒の状況を一目で確認できる

効果を見極めながら、じっくり取り組んでいきたい

Photo

 2011年10月の導入以来、白幡小学校の教師陣とKDDIは、密に連絡を取りあって効果や課題をじっくり確認しながら、教育現場におけるタブレット活用のあり方を探ってきたという。

 KDDIの幡氏は「“タブレットが効果を発揮するのはどんなシーンなのか”“安全に使うためにはどんなネットワークが必要なのか”といったことを細かく検証し、アプリやシステム、ネットワークをブラッシュアップしてきた」と、この1年を振り返る。計算ドリルの筆算の軌跡を再現する機能や、つまずいている生徒をリアルタイムで把握する機能は、教師陣からのリクエストで付け加えた機能だ。

 さらに、教師たちにはタブレットを自由に使ってもらうようにして、教育現場のどんなシーンで使いたいかを常にヒアリングしていると幡氏。教師からは「体育の授業で、飛び箱やマットなどの器械運動を撮影して後からチェックしたい」(亀澤氏)、「英語のリスニングや会話も学べるようにしたい」(野田氏)といった声が挙がっており、生徒からも「ほかの英語のパズルなど、楽しめるもので学習したい」(伊藤君)、「漢字の書き方や書き順を色で示してくれるような機能があったら使ってみたい」(中島さん)というアイデアが寄せられている。

 ネットワーク面では、児童の個人情報を扱っていることから、情報漏えいに対する万全の注意を払っている。KDDIが実証研究用のネットワークを用意し、端末側ではそのネットワーク以外には接続できないよう専用アプリをインストールしているという。

 学校への情報機器の導入については、国や行政の具体的な指針があるわけではなく、試験的に導入している学校が手探りで進めているのが現状だ。白幡小学校とKDDIは今後も、タブレット端末が効果を発揮する学習シーンを子細に検証しながら、利用範囲を拡大していく考え。「なんでもかんでもタブレットに置き換えるのではなく、真に役立つシーンで入れていきたい。先生たちと話し合いながら、授業の中で効果があるものを見極めていきたい」(幡氏)

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