照明器具の制御に使えるセンサーとしては、まず照度センサーが挙がる。センサー周辺の明るさを検知するセンサーだ。照明器具の近くに設置しておけば、自然光の強さに応じて自動的に光の強さを調節させることができる。また、タイマーを使うという方法もある、時間に応じて照度を変えていくのだ。
もう1つ、人間の存在を感知する「人感センサー」も利用できる。人体が放つ熱(赤外線)を感知して、人間の存在と動きを認識するセンサーだ。これを利用すれば、人間がいるところの照明を自動的に点灯させ、いなくなった後、一定の時間が過ぎたら自動的に消灯させることが可能になる。
一般に、このようなセンサーは照明器具とは別売りで、照度や人の存在を感知するのに最適な場所を調査してから取り付けるものだ。手間がかかるが、1つのセンサーで複数の照明器具を制御できる。照度センサーと人感センサーの機能を併せ持つ製品も存在する(図2)。
アイリスオーヤマは、直管形LED照明に照度センサーを組み込んだ製品(図3)や、人感センサーを組み込んだ製品を販売している。センサーの場所が直管形照明の端と決まってしまう、1つのセンサーを複数の照明器具で共用できないという欠点はあるが、取り付け位置を考える必要がないので、比較的導入しやすい。
照明の自動制御に役立つセンサーとして人感センサーを紹介したが、実は現在の人感センサーは、どんな場面でも使えるというものではない。人感センサーは赤外線を感知して、人の動きを察知するものだ。人が席に座っていても、ほとんど動かないと動きを感知できず、人がいないと判断してしまう。
現在、人感センサーは廊下、倉庫、トイレなど、「ちょっと入って用を足す」ような場所で使うのが普通だ。オフィスの執務室で使うのは難しい。
そこでパナソニックは、赤外線ではなく、カメラを利用して人間の存在を確実に検知するセンサーを開発している。これなら、オフィスの執務室でも利用できるだろう。
以上のような機能に加えて、シャープとパナソニックは人間の生体リズムに合わせて光の強さだけでなく色も変えるというシステムを開発している。調光だけでなく、調色(光の色を変える)機能を備えるLED照明を時間帯に応じて制御し、作業効率が上がる環境や、よりリラックスできる環境を作るという試みだ。
これは、「サーカディアンリズム」という考え方に基づいたものだ。パナソニックによると、1980年代から研究が続いており、光色が異なる蛍光灯を病院に導入し、サーカディアンリズムの考え方に従って点灯する蛍光灯を切り替え、調光した結果、睡眠障害の改善などに効果があったという。
蛍光灯を使っていた時代は、光の色が異なる蛍光灯を用意して、切り替える必要があったが、LED照明なら、異なる色で光るLED素子を組み合わせて内蔵することで、光の色を変えること(調色)ができる。サーカディアンリズムに従った照明の制御は、LED照明を使うことで実現しやすくなったと言える。
シャープとパナソニックは、主にオフィスにサーカディアンリズムの考え方を広めていきたいと考えている。パナソニックの調査によると、節電のためにオフィス全体を単純に暗くするだけでは、作業ミスが発生する確率が上がるという。
サーカディアンリズムに従った照明の制御では、朝の業務開始時間から昼過ぎまでは青に近い白い光を強く照らして、人をはっきり目覚めさせ、作業効率の向上を狙う。
昼過ぎから夕方にかけては、光の色を少しずつオレンジ色に近い色に変えていき、同時に光を弱くしていく。オレンジ色に近い光に変えていくことで、人をリラックスさせる効果が期待できる。光を弱くしていくことで節電効果も狙えるという(図4)。
パナソニックは東京急行電鉄の自由が丘駅のコンコースに、サーカディアンリズムに従って制御する照明システムを納入している。一方シャープは、2012年3月に家庭向け製品として発売した「さくら色」のLED照明をサーカディアンリズムに応用する可能性を探っているという。
2011年の夏は単純に空調を弱くし、照明を暗くする「我慢の節電」だった。今回紹介したセンサーやサーカディアンリズムを上手に利用すれば、我慢せずに済む節電も実現できるかもしれない。
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