キーワード解説「LED照明」キーワード解説

オフィスで消費する電力のうち、かなりの部分を照明器具が消費している。そこで、消費電力量を大きく下げることを狙って、照明器具を消費電力量が少ないものに入れ替える例が増えている。低消費電力の照明器具を代表する存在となったのが「LED照明」だ。

» 2012年06月15日 05時15分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 LED照明は、光源として電球や蛍光管などの代わりに、半導体であるLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子を利用する照明器具を指す。従来の照明と比べると消費電力量が少ないという点が最大の特長。例えば、40W形の白熱電球の代替として使えるLED電球の消費電力は7W程度。40形の直管蛍光灯の代替として使える直管形LEDランプの消費電力は25W程度。

 光源の寿命が長いという特長もある。白熱電球の寿命は長いものでも4000時間程度。蛍光灯の寿命は1万2000時間程度。一方、LED照明の寿命は一般的なもので4万時間。寿命6万時間をうたう製品も存在する。

 さらに、紫外線を発しないという特長もある。紫外線は虫を引き寄せる。従来型の照明はわずかながら紫外線を発しており、この紫外線に虫が反応して集まってくる。照明器具の中に虫が入ってしまうこともある。LED照明は紫外線を発しないので、虫が寄り付かない。

 紫外線には、印刷物や絵画などの色あせを招くという問題もある。このため、貴重な文化財の照明に紫外線を発しないLED照明を利用することも多い。

 短所としては、従来型の照明に比べて高価であることや、物を照らしたときの色の見え方(演色性)が従来型照明や自然光と比べるとやや不自然であるという点などが挙げられる。ただし、LEDの研究開発は着々と進んでおり、課題はいずれ克服できるものと見られる。

 LED照明の光源であるLED素子が熱に弱いという問題もある。LED素子は電圧をかけると光を発し、流れる電流の量に応じて強く光るようになるが、電流量が大きくなると発熱量も大きくなる。

 LED素子は熱を帯びると消費電力に対する明るさ(発光効率)が落ちるので、LEDを効率良く明るく光らせるには、LED素子が発する熱を効率良く逃がす必要がある。放熱ができないとLED素子の温度がどんどん上がり、壊れてしまう。先に述べたようにLED照明の寿命は長いが、放熱設計に失敗すると寿命が極端に短くなってしまうのだ。

 「光の色」という課題もある。ほとんどのLED照明は、光源に青色LED素子を使っている。LEDが発する青い光をいかにして自然な白い光に見せるかというところは各メーカーの腕の見せ所だ。最も単純な方法としては、青の補色である黄色の蛍光体でLED素子を覆うという方法がある。こうすると、青い光と黄色い光を放出するようになる。補色関係にある2色の光を混合することで、白い光を作るわけだ。ただし、青色LEDに黄色の蛍光体を組み合わせるだけでは、演色性が悪いという問題が発生しやすい。「白い光」と言っても、やや青みがかっているという問題が発生することもある。

 そこで、青色LEDに赤と緑の蛍光体を組み合わせ、光の三原色である赤、緑、青の光を発生させて白い光を作るという手法が登場した。この手法を使うと演色性は改善する。しかし、発光効率がやや落ちる。

 青色のLEDに加えて、赤色LED、緑色LEDを組み合わせ、3色のLED素子を発光させるという手法もある。この手法を使うと、赤、緑、青の光の強さを調節することで白色だけでなく様々な色の光を作れる。しかし、製造コストが高くなるので、一部の高価な製品にしか使えない。

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