LED照明の統一規格「JEL 801」キーワード解説

既存の蛍光灯で使用していた照明器具を流用できる直管形LED照明は、価格の安さで人気だが、照明器具を改造する必要がある。しかも改造方法はメーカーによって異なる。これを問題視した業界団体が作った直管形LEDランプと照明器具の統一規格が「JEL 801」だ。

» 2012年10月19日 13時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 「JEL 801」とは日本の大手照明器具メーカーが参加している業界団体「日本電球工業会」が2010年10月に制定した規格。「L形ピン口金GX16t-5付直管LEDランプシステム(一般照明用)」という名称が付いており、直管形LEDランプと照明器具の形状などを定めている。現在では国内の大手照明器具メーカー各社がJEL 801準拠の製品を販売している。

 日本電球工業会がJEL 801を制定した背景には、海外から流入し始めていた初期の直管形LEDランプが問題を起こしていたという事実がある。これらの製品では、従来の蛍光灯で使用していた照明器具を改造して流用するが、改造の方法がメーカーや製品によってバラバラだ。

 例えば電流をどこから流すのかという点を取ってみても、片側の口金から流すもの、両側の口金の1本ずつに流すものなど、さまざまな形がある。日本電球工業会はランプに合わせて正しく改造しないと、電流が流れてはいけないところに流れてしまい、事故につながるとしている。さらに、ランプによって改造の方法が異なることも問題視している。

 初期の直管形LEDには、光がちらつくとか、真下しか明るくならない、明るさが足りないという、光の質に関する問題もあった。

 JEL 801ではこのような問題を防ぐために、口金の形から、電流の流し方、最低限満たすべき明るさなどを定めている。口金には従来の蛍光灯で使用していた「G13」というものに代わって「GX16t-5」という新しいものを採用した。ランプの片側にL字型の口金が2本出ており、そこから電流を流すようになっている。ランプの反対側には釘の頭のような形をした口金が1本出ており、接地(アース)に使用する。

 口金の形を変えて、電流の流し方を統一したことで、JEL 801に準拠していないランプを誤って挿入し、事故を起こす可能性はなくなった。この口金はG13とくらべて固定力が強く、蛍光灯に比べて重くなりがちな直管形LEDランプもしっかり支え、落下を防止する。

 光の質については、「蛍光灯と見え方が変わらない光を発する」ことを目指してランプの全光束、演色性、光が広がる範囲(配光)について定めている。全光束は2300lm以上でなければならない。一般的な蛍光灯よりもわずかに少ない値だが、JEL 801で定めているのは最低限満たさなければならない基準であり、蛍光灯よりも全光束の値が高い製品も多い。

 演色性は平均演色評価数(Ra)が80以上でなければならない。これは光が物体を照らしたときに、その物体の色が自然光に照らしたときとなるべく変わらないようにするための基準だ。Raが80もあれば、蛍光灯とほぼ変わらない光を期待できる。

 光が広がる範囲については、ランプ下方120°の範囲に全光束の70%を超える光束を集中させてはならないと規定している。30%以上の光を横や天井に向けなければならないということだ。ほかにも、光のちらつきを防ぐために、ランプに流す電流の波形についても定めている。

 JEL 801対応製品には、蛍光灯と入れ替えたとしても光について違和感を感じる可能性がほとんどないという大きな特長がある。またランプや照明器具の性能を細かく調べる必要がないということも大きな利点だ。「JEL 801準拠」という製品を買えば、どのような光を放つのかをある程度予想できるからだ。

 一方で口金の形が従来の蛍光灯とまったく異なるため、ランプを変えるだけでなく照明器具も新しいものに交換する必要がある。既存の照明器具を改造して流用する製品と比べると、照明器具を購入しなければならない分どうしても高価になってしまうという欠点もある。

 LED照明を導入する大きな目的の1つとして電力コスト削減が挙げられる。導入にあまりに大きなコストがかかってしまうと、導入前後の電気代の差を考えても結局高く付いてしまうことがある。JEL 801準拠の製品を広く普及させるには、大幅に価格を下げる必要がある。

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光色と明るさを自由に選べる、直管形LED照明器具

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