自家発電設備の柔軟な運用が可能に、政府が審査基準を変更法制度・規制

資源エネルギー庁は、企業や団体が自家発電設備を導入する際の審査基準を変更する。自家発電装置で発電した電力をほかの場所に送る場合の審査基準を変えて、設備の柔軟な運用を可能にする。この結果、特にコージェネレーションシステムの導入が進むと考えられる。

» 2012年10月24日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 審査基準を変えるのは、電気事業法が定める「特定供給制度」を利用する場合だ。特定供給制度を利用すると、同じ企業の別拠点や、親会社と子会社といった密接な関係がある2つの拠点を結ぶ送電線を設置し、自家発電した電力をもう一方の拠点に送電できる。

 特定供給制度を利用するには、送電元の自家発電設備は送電先の電力需要に100%応えられるものでなければならなかった。この基準があるため、自家発電装置の設置計画が小さくなったり、導入した自家発電設備の能力を完全に生かせないようなことがあった。

 新しい基準では、送電先の電力需要の50%以上を満たせばよい。不足する分は電力会社からの受電でまかなうことができる(図1)。自家発電設備の運用形態を柔軟に考えることができるようになり、導入計画も立てやすくなる。

図1 特定供給制度の利用形態。左側が基準変更前で、右側が変更後

 資源エネルギー庁は今回の基準変更により、コージェネレーションシステム(熱電併給システム)の普及が進むと考えている。担当者は「現時点で自家発電装置を導入するなら、コージェネレーションシステムが真っ先に候補に挙がるだろう。発電効率が高いだけでなく、熱も利用できるというメリットは、ほとんどの事業者にとって価値があるはずだ」と語った。

 9月に国家戦略室がまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」では、再生可能エネルギーの活用のほかに、コージェネレーションシステムの導入促進を目指している。2030年には自家発電用のコージェネレーションシステムによる発電量を、2010年と比べておよそ5倍となる1億5000万MWh(1500億kWh)まで高める計画だ。今回の基準変更はその目標を達成するためのものと考えられる。

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