創エネ・蓄エネの実現方法と導入メリットスマートハウス基礎講座(2)(2/2 ページ)

» 2012年11月13日 13時00分 公開
[渡辺直哉/旭化成ホームズ,スマートジャパン]
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家庭用燃料電池とのダブル発電

 もうひとつの「電気をつくる」設備である家庭用燃料電池(エネファーム)は、定格の発電量が700〜750Wと低いが、太陽電池と異なり天気に左右されることなく安定的に発電する。太陽光とのダブル発電ならば、家庭用燃料電池で発電した電気が優先的に消費されるので、太陽光で発電した電気は単独設置と比較して約30%多く売電に回すことができる。

図2 太陽光発電と家庭用燃料電池による給湯と電力供給

 売電価格は単独設置の場合には42円だが、ダブル発電の場合は34円に減額されてしまうので注意が必要だ。ただし地域によってはガス事業者がキャンペーンとして減額分を補てんしてくれることもある。ダブル発電は年間の光熱費を大幅に削減するだけではなく、多くの収入まで生んでくれる非常に経済性に富んだシステムになる(図2)

 家庭用燃料電池は各家庭のお湯や電気の使用状況を学習しながら、毎日の発電量や発電のタイミングを自己制御している。お湯や電気を多く使用する住宅であれば、家庭用燃料電池の強みは一層発揮され、最大効率で運転し続けることになる。そういった意味では特に二世帯住宅に打ってつけのシステムである。

 二世帯を合わせれば使用量が増加し、そのうえ使用する時間帯が異なることが多く、消費量が平準化される。特に共働きの子世帯と昼間に滞在時間の多い親世帯で構成する二世帯住宅においては、各世帯で使用時間が異なり、昼間の電気使用量が平準化され、家庭用燃料電池で発電した電気を無駄なく使用することが可能になる(図3)。

図3 二世代住宅における家庭用燃料電池のメリット

 旭化成ホームズは大阪ガス・東京ガスと共同で、このメカニズムを反映した「エネルギーシェアシステム」を開発し、2012年5月から戸建て二世帯住宅商品に初めて採用した。このシステムを搭載した二世帯住宅は「省CO2二世帯住宅推進プロジェクト」として「平成24年度第1回建築・住宅省CO2先導事業」で採択され、環境性を高く評価されている。もちろん経済面でも大きなメリットを得ることができる。

「電気をためる」蓄電池

 太陽光発電は天気に左右されるため、発電量が不安定だ。そこで「電気をためる」蓄電池が重要となる。発電した電気を蓄電池でためて不安定な電力を安定化させ、ためた電気を時間帯をずらして使用できるようにすることが大きな役割である。

 家庭用の定置型の蓄電池で現在の主流はリチウムイオンタイプだ(図4)。携帯電話やノートパソコンに使用されているものと同じタイプである。耐久性に優れ、約10年間は電池交換なしで使用できる。

図4 家庭用のリチウムイオン蓄電池

 これまで一般的だった鉛蓄電池と比較して充放電効率が高く、サイズをコンパクトに抑えることができる。安全面が不安視されていたが、東日本大震災後、メーカーの必死な開発努力によって問題点が解消された。さらに需要の増加によって量産化が進み、導入コストも大幅に下がった。災害の備えのためのものとして、単独で設置するよりも太陽光発電と連携して使用することが想定されている。

 太陽光で発電した電力を蓄電池にためて自宅で優先的に使う「環境配慮モード」や、光熱費の削減を優先する「経済モード」など、住まい手のライフスタイルやニーズに合わせた使い方を設定できる。

 一般的には、「経済モード」が通常で、安い深夜電力をためて昼間に使用すれば家計に優しい。このモードを実現するためには、時間帯で料金が異なる契約プランを採用することが必要だ。深夜の電気料金が安い代わりに昼間は標準よりも高めな料金体系である。

 共働き世帯のように、昼間に在宅することが少ない家族に向いている。蓄電池を活用すれば契約アンペアを下げることができて、基本料金の面でもメリットを享受することが可能である。深夜の電気を昼間に使用するのでピークシフトの意味もあり、節電を求める社会に対して社会貢献を果たすことにもなる。

 災害時などの停電時には、日中に太陽光で発電した電力を自動的に蓄電池に充電してくれる。このように最低限のエネルギーを確保できる蓄電池があれば、もしもの時でも安全・安心だ。

 現在の蓄電池は停電時に特定のコンセントや照明だけを通電可能にするものが一般的である。新築でスマートハウスを検討する場合には、停電時にどの電気機器を優先させるか、あらかじめ考えておく必要がある。家族が集まる場の照明、衛生面を考慮した冷蔵庫、情報を入手するためのテレビやインターネット関連機器などが対象になるだろう。余裕があれば、冷暖房機器や給湯器も候補に挙げたい。

 ここまでは現在普及しつつある設備について見てきた。次回はそれらの設備をコントロールしながら、住まいの中の家電製品の制御を行うHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を中心に、電気自動車を電源として使えるV2H(Vehicle to Home)システムや系統電力ネットワークとの連携も視野に入れながら、スマートハウスを「賢く使う」方法を展望してみたい。

連載(3):「エネルギーを賢く利用する」

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