重要性が高まる「電験三種」、5万ボルト未満の電気設備に欠かせない資格法制度・規制(2/2 ページ)

» 2012年11月21日 15時00分 公開
[辻本剛/翔泳社アカデミー,スマートジャパン]
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数学の応用力が試される

 電験三種の試験は年に1回だけ、例年9月上旬に実施される。内容は筆記試験だけで、電気設備の工事を担う「電気工事士」のように技能(実技)試験はない。試験科目は「理論」「電力」「機械」「法規」の4つで構成されている。

 電験三種の資格をとるうえで最も重要な知識は「数学」である。なぜ数学が重要かというと、数学を使って電気を表すと、目に見えない電気があたかも目に見えるように扱えるからだ。ただし数学のレベルは高校の数学の一部が理解できていればよく、例えば「微分・積分」は理解できなくても合格できる。計算方法や定理・法則を覚えて、それを応用できれば十分と言える。

 法規のような数学とは関係なく思える科目でも、計算問題が出題される。電験三種の問題の6〜7割は計算問題で、だからこそ数学が最も重要になるわけだ。多くの公式が登場するが、公式を暗記しているだけでは合格は難しい。単純に公式に数値を当てはめれば正解できるような問題は多くない。1つの公式を適用するだけで解ける問題もほとんどない。

 まず重要な点は、基礎的な内容の理解である。設問で与えられた条件を適確に読み取って整理し、それをもとに基礎的な考え方に照らし合わせて公式で数値を求める、というのが電験三種の計算問題を解く基本的なプロセスになる。

 さらに「電力系統」に関する知識も重要だ。電力が作られる過程と電力が届けられる経路を仕組みとして理解しておく必要がある。私たちが使っている電気は発電所で作られ、そこから送電線を通じて、変電所などを経て各家庭に届けられる。

 こうした電力の供給システムである電力系統の全体を理解したうえで、それを構成するさまざまな電気機器の役割について学ぶことが重要だ。機器の構造や仕組みなどが試験で取り上げられることは少ない。電力系統の中で各機器が果たす役割やメリット/デメリットについての出題が中心になる。

最近は合格率が5%台に低下

 2012年の電験三種の試験は9月9日に実施されて、受験者数は4万9452人にのぼった。4科目の合格率は5.9%である。ちなみに前年の受験者数は4万8864人で、4科目の合格率は5.5%だった(図2)。この結果を見ると、電験三種は非常に難しい資格のように思われるが、学習方法さえ間違わなければ、十分に手の届く資格である。

 図2 過去10年間の電験三種の受験者数と合格率

 近年は電験三種の合格率が低くなる傾向にあるが、これは試験が難しくなったというよりも、準備不足のまま受験する人が増えたことに原因があると考えられる。基礎的な内容の組み合わせ方が少し複雑になった印象はあるものの、基礎をしっかりと学習しておけば対応できる問題ばかりである。特別な知識が必要になったり、これまでにない分野の問題が出されたりしたわけではない。

 電験三種はスペシャリストのための資格である。合格するには、きちんとした準備が必要だ。基礎になる数学から積み上げ、電気の基本理論を理解し、その応用として電力、機械、法規の各科目を学んでいく。この学習の順序を間違えると難易度が上がってしまう。

 「ステイタスの高い、使える資格」であることは間違いない。それなりの準備が必要だということを念頭に入れて、ぜひ多くの皆さんに取得していただきたい。

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