福井県のエネルギー事情は原子力を抜きに語ることはできない。県の西側にある若狭湾に面して4つの大規模な発電所が集積し、国内の原子力発電の2割以上を占める。一方で再生可能エネルギーの取り組みは遅れているが、風力や太陽光による発電設備が徐々に増えてきた。
これほど特定の地域に原子力発電所が集まっている場所は日本全国どこにも存在しない。原子力発電所の分布図を見れば一目瞭然で、福井県の若狭湾周辺だけが別枠で描かれている(図1)。別名“原発銀座”と呼ばれるほどである。
現時点で国内で唯一稼働している大飯発電所をはじめ、高浜、美浜、敦賀の4か所に合計13基の原子力発電設備がある。このうち敦賀だけは9つの電力会社が共同で出資する日本原子力発電が所有し、残りの3か所は福井県に電力を供給する関西電力の発電所だ(図2)。
仮に4か所すべての原子力発電所が稼働すると、発電能力は1000万kWを超える。これは関西全域で消費する電力需要の4割をカバーでき、福井県の電力需要の10倍近い規模になる。全国の原子力発電の23%を占め、都道府県別でも第1位である(図3)。
福井県は2005年から「エネルギー研究開発拠点化計画」を推進しており、キャッチフレーズは「地域と原子力の自立的な連携を目指して」と付けられている。東日本大震災後の2011年11月に発表した2012年度の方針においても、この基本姿勢は変わっていない。
現状を考えれば原子力発電所の再稼働は極めて難しい状況にあるにもかかわらず、もはや原子力を抜きにしたエネルギー計画を推進することは不可能なのだろうか。2012年度以降も安全対策のための研究開発や人材育成の強化を引き続き進めていく方針だ。
一方で再生可能エネルギーの取り組みは他県と比べて大きく後れをとっている(図4)。小水力発電がそれなりの規模になっている以外は、特に他県よりも進んでいる点は見られない。それでも小水力のほかに風力や太陽光の導入プロジェクトが県内の市町村で始まり、少しずつ導入事例が広がってきている。
風力発電では2011年2月に、あわら市で発電能力20MWの大規模な発電所が運転を開始した(図5)。日本海に近い平地に10基の大型風車を設置して、一般家庭の約1万1000世帯分に相当する電力を供給できる。
この風力発電所は原発銀座とは対照的な県の最北端に位置している。稼働を始めたのは偶然にも東日本大震災の直前であり、将来に向けて再生可能エネルギーを拡大するシンボルと考えられなくもない。発電規模は原子力と比べればはるかに小さいが、それ以上に大きな存在感を示している。
2014年版(20)福井:「小水力発電で町おこし、原子力から離れた内陸部に新たな電源」
2013年版(20)福井:「日本海へ延びる長い半島に、風と水と森から電力を」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.