風力発電計画が暗転、法的制限や地権者の意向が壁に自然エネルギー

神奈川県は県内の京浜臨海部と三浦半島地域で実施していた「風力発電施設立地可能性調査」の結果を明らかにした。風況が良い9カ所を対象に調査したが、法的制限や地権者の意向などが影響し、9カ所すべてで風力発電設備の建設ができないという結果になった。

» 2012年12月13日 15時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 調査の対象になったのは川崎市と横浜市沿岸部である京浜臨海部と三浦半島。図1にあるように、ほとんどの地域で風速が毎秒5.5m以上の風が期待でき、風況は悪くないと言える。

図1 京浜臨海部と三浦半島の風況

 神奈川県は当初、京浜臨海部は風況では三浦半島などに劣るが、土地を利用する際のさまざまな規制や、風力発電機が発する騒音の影響を考慮する必要があまりないと判断した。さらに送電線が近くに通っているという好条件もあり、建設コストを抑えられると期待していた。

 三浦半島は風況が良く、発電量と売電収入が期待でき、事業として十分成り立つと判断していた。

 調査を始めるに当たって神奈川県は、最大出力が2MW(2000kW)級の風力発電機を想定した。2MW級の風力発電機は、地面から風車の中心であるハブまでの高さは80m、風車の直径が80〜90mになる。風速は秒速6m以上が望ましいとしながらも、立地の可能性を広げるため秒速5.5m以上とした。


図2 神奈川県が選んだ9つの調査対象地点

 調査対象地の選定にはGIS(Geographic Information System:地理情報システム)を利用し、周辺の土地の条件や、風力発電機建設に関係する基本的な法律による規制などを調べて9カ所に絞った(図2)。

 その後、対象とした9カ所を詳細に調べたところ、GISからのデータでは想定できなかった航空法や工場立地法など法的規制、あるいは地権者の意向などの理由で9カ所すべてが、風力発電機を建設するには適さないという結果になった(図3)。

 報告書によると、神奈川県内でほかに風力発電に適した土地としては、西部の横須賀市、湯河原町、箱根町、丹沢地域が挙げられる。しかし、この地域には自然公園区域が多く分布しており、風力発電機の建設は難しいという。

 今回の調査結果を受けて、調査に関わった委員からは洋上風力発電や、もう少し小規模な風力発電に目を向けるべきだという意見が出たという。

図3 9つの調査対象地点と、建設を阻んだ理由

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.